皆さん、こんにちは。
湿気と気温に悩まされる昨今、熱海では土石流も発生するなど雨による災害まで起こっている状況です。
水害はどこでも起こりうる上、一度巻き込まれると逃げ場も封じられ本当に危険なので、警報などで近隣に兆候を感じ取られた方はすぐに逃げて下さい。
……さて、そんな注意喚起から始まっていいのかと思えるのが今回、いや、Kong回紹介するタイトル。
ゴジラVSコング(GODZILLA vs.KONG)
2014年の『ゴジラ』以来続いている海外製怪獣特撮シリーズ「モンスター・ヴァース」最新作。
前作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ(以下、KOM)』で怪獣を統べる王となった「破壊王」ゴジラと、2作目『キング・コング:髑髏島の巨神』で初登場した怪獣・コングが遂に激突!
その裏では、人間達の巨大な陰謀が渦巻いていた……。
監督はアダム・ウィンガード、脚本は過去のシリーズ作を手掛けたマックス・ボレンスタインと、7月9日公開の『ブラック・ウィドウ』を含むMARVEL作品にも携わっているエリック・ピアソンが務める。
前作からミリー・ボビー・ブラウン、カイル・チャンドラーがそれぞれ演じる「ラッセル親子」が続投。
新キャストとして、アレクサンダー・スカルスガルド、レベッカ・ホール、ブライアン・タイリー・ヘンリー、ジュリアン・デニソン、小栗旬など実力派の俳優達が名を連ねる。
・約60年越しの再決戦!世界を股にかけ再演される『キングコング対ゴジラ』!
さて本作、語っていくうえで当然言及せねばならずそれ故に注目度を高めているのが、1962年に日本で公開された『キングコング対ゴジラ』の存在。
当時としては1955年の『ゴジラの逆襲』から数えて実に7年ぶりとなるゴジラシリーズの3作目。
海外で作られた巨大怪獣キャラクター「キングコング」と東宝が生み出した日本産の巨大怪獣キャラクター「ゴジラ」が同じスクリーン上に登場して戦うという意欲作で、何故かコングはタコとも戦う。それ以降のゴジラを含めた巨大特撮が辿っていく「怪獣対決路線」の雛形とも言える作品。
今でこそ界隈でよく使われるようになった「怪獣プロレス」という概念の生みの親とも言える1作で、コングの扱いも「製薬会社の広告塔として連れてこられ、突如復活したゴジラへの対抗馬としてぶつけられる」という如何にもプロレス的な流れ。
エンパイアステートビルではなく国会議事堂に上るキングコング(やたら低い上に脆い)、熱戦が厄介なので口に木をねじ込まれるゴジラといった絵面を全て着ぐるみ特撮でやっている点で今見ても見どころの多い映画でもあり、最後は2人揃って城をぶっ壊し掴み合ったまま海に落ちて引き分けという結果に。
パンフレット曰く、製作陣の頭にはシリーズ初めの『ゴジラ』を作る時点から「キングコングと戦わせたい」という意見もあったようで、本作はその対戦カードがハリウッドの最新CG技術によって本当に実現した形に。
しかしながら怪獣特撮自体が今となっては割とニッチなジャンルなせいか、MARVELのようにそう上手くもいかないユニバース映画シリーズの性か興行的にはやや厳しいというのがシリーズの現実であり、特に前作となる『KOM』が苦戦したこともあって本作が1つの区切りとなるのでは……と言われているのがこの「モンスター・ヴァース」の実情。
興行としては新型コロナの影響で幾度の延期を経つつ、本国では前作を上回る大ヒットを見せており、メジャータイトルがなかなか公開されない現状の隙を上手く突いているという印象です。
・人間ドラマは投げ捨てた!テンポが良すぎる怪獣ファースト映画!
そんな歴史的1本である本作、本編の話に入ると、まずもうファーストシーンから色々と凄い。
なんと開幕描かれるのは、朝起きてのコング様のモーニングルーティン。
「あー起きんのだっる……」みたいな仕草でケツをポリポリ掻きながら滝の水をシャワーのように浴びるその姿は完全に日曜日のおやじ。
そしてこのコングさんが今回ゴジラと戦う理由は単純明快。
2人は戦うべき宿敵だから!
はい、論破!
(格闘技の対戦表っぽいオープニング映像)
……今作、マジで終始こんなテンション。
最小限の設定以外は説明を全てぶん投げ、代わりに怪獣の仕草を見せる時間になるべく尺を割きCGで描かれる彼らにできる限りの「本物らしい生命感」を与えることでキャラクターとして成立させる演出の方向性。
そしてぶん投げられた人間側は最小限のやり取りとドラマでストーリーという名の試合準備を進めるため、どんどん発想がシンプルかつ極端になっていく低IQ王決定戦が繰り広げられます。
唖然としたのはPVでも描かれているコングさんを船で輸送する下り。
コングさんを人間達が運ぶ前にちょっとした論争になるのですが、それが終わるともう次のカットで船に縛られて運ばれているコングさん。
ここ、あまりにテンポが良すぎて思わず声が出そうなくらい笑ってしまいました。
ちなみにコングさんの輸送はしっかり『キングコング対ゴジラ』にもある下りが踏襲されており、オマージュの丁寧さに感心しました。
・陸・海・空を越え、センター・オブ・ジ・アースするコングサイド
本作はゴジラ側とコング側でしっかり人間キャラも分かれており、コング側はコングさんと手話ができる少女ジア、レベッカ・ホールが演じる研究者アイリーン、アレクサンダー・スカルスガルドが演じる地中地図製作者ネイサンの3人を軸に進行。
コングさんを故郷である「地底世界」(「モンスター・ヴァース」では地下世界に怪獣のルーツがあるという「地球空洞説」が採用されています)に連れていく冒険ファンタジーがコングサイドの主なストーリーの流れで、地底世界でも安全な航空機を中心に描かれる映像表現は最早ユニバーサルスタジオのライドアトラクションのそれ。
絶対これ4DX楽しかったんだろうなぁ……と思いながらグワングワン動くカメラワークに見惚れていました。
彼らはコングさんと対話できる存在でもあり、その対話を通してコングさんをより親密な存在として描き出しているのがゴジラと異なる最大の魅力。
金髪美女との恋は無い代わりに少女の願いを聞き届け、熱戦も撃てない文字通りの裸一貫でゴジラに挑むその姿は正に「コングのオジキ」。
だんだん何を言っているのか分からなくなってきましたが、だいたい本当にそんな感じだから困る。
・陰謀論者!陰謀企ててた奴の娘!ただの同級生デブ!……異常すぎるゴジラサイド
そして『KOM』から引き続きの登場となるマディソンを中心とするのが、突如ゴジラに襲われた世界最強ハイテク企業(パンフレット曰く)「エイペックス社」を調査するゴジラサイドの登場人物達。
中でも一際目立つのが、ブライアン・タイリー・ヘンリーが演じるポッドキャストで陰謀論を垂れ流し続けている男、バーニー。
この手の怪獣モノに陰謀はつきものですが、このご時世にそれは大丈夫なのかと思うぐらい「イルミナティ」やら「遺伝子組み換え食品で首が2つになる」やら現実にも言われてるような陰謀論を並べ立てるどこからどう見てもやべーやつな彼。
しかもマディソンはマディソンで前作でやらかした「サノスおばさん」こと母・エマの存在が物議を醸している中でこの陰謀論者に話を合わせて味方に引き入れるというアグレッシブさを見せつけており、どんどんどんどん人間サイドのSAN値を爆下げしていく最恐コンビが誕生しました。
そこに巻き添えを食らいつつもただの男子高校生、ジョシュを演じるのは『デッドプール2』での好演で一躍脚光を浴びたジュリアン・デニソン君。
有能なのか無能なのか分からないザ・一般人ぶりでなんとかバランスを取りに来ますが、いかんせん他2人が濃すぎてだんだんと取り込まれていき、終盤で劇中屈指の珍プレーに走ります。
そしてこのゴジラサイドの見どころが、3人が潜入するエイペックス社のどう考えてもおかしいレベルのガバガバすぎるセキュリティ。
詳細は伏せますが、どんどん会社の奥まで入っていくのに「えっそこ普通に開くの……?」「ここは流石に監視カメラぐらいあるだろ⁉」と言いたくなるまるでツッコミ不在のギャグ漫画を見せられているかのようなサクサク具合。
正直「陰謀論者のサクセスストーリー」と言われても言い訳できないぐらいには勢いのありすぎるご都合主義がマシンガンの如く連発されていくため、そこを指して批判したくなる人の気持ちも分かるというものです。
一方当のゴジラ側はというと、今回はいきなりエイペックス社を襲撃して人類の敵認定されるわ、いきなり海からやってきてコングに襲い掛かるわとどちらかというとヒールのような描かれた方で、前作でグッと縮まった(というより近づきすぎて宗教的になった)人間との距離感は若干引き離された印象。
ただ、何がしたくて上陸してくるのかの理屈は一応説明されているのと妙に「怒っている」テンションで咆哮を上げたりすることが多いので、一種のキレキャラみたいな雰囲気を強く感じる一面はありました。
・遂にぶつかり合うゴジラVSコング!香港高層ビルぶっ壊し祭り!
そして宿敵なので自然界、怪獣界の摂理として戦うことになるゴジラVSコング。
実際に戦うのが終盤まで焦らされる『キングコング対ゴジラ』と違い、バトルは序盤からお互いにやる気満々で開始。
PVで描かれている通り海での戦闘と、クライマックスの香港戦でそれぞれ異なる場所を対戦場にするわけですが、ここでの見どころは地形や能力をお互いフルに活かした戦法の応酬。
海を泳ぎ回り熱戦の威力と圧倒的パワーで蹂躙するゴジラ、それに対し四肢を器用に操って高層ビルを飛び移りながら熱戦を打たれる前にスピードで翻弄するコングとアクションに各々の個性が遺憾なく発揮されており、コング側には有名なエンパイアステートビルのワンシーンのオマージュのようなカットも。
ビルが乱立するコンクリートジャングルをやたらめったら壊しまくる、巻き込まれる人間など知ったこっちゃないとばかりの2大怪獣の暴れっぷりはそれはもう凄まじく、現実の倫理観を一段飛び越えた破壊のカタルシスがありました。
そしてラストに登場する、既に公式に公開されているメカゴジラの描写も非常に良かったです。
「ロボゴジラ」「いや、メカゴジラだ!」という少しクスっとするやり取りもありつつ、生物ならではの戦い方で争うゴジラ、コングのどちらとも異なる機械ならではのギミックモリモリのスタイリッシュアクションは迫力満点。
オリンピック連休を使ってでも映画館で観に行くべき秀逸な出来でした。
全体としてエンタメ極振り、『モータルコンバット』が中学2年生の考えた映画ならこっちは小学3年生がおもちゃ箱をひっくり返して考えた至高の大バトルアクション映画です。
果たしてゴジラVSコング、この戦いに決着はつくのか――――――⁉
そして小栗旬は活躍するのか――――――⁉
結末はぜひ、ご自身の目でお確かめください。
さて、『ゴジラVSコング』、感想は以上です。
次はどうするか考えていません。
『ブラック・ウィドウ』か、『唐人街探偵』の感想でも書けたらいいかなとは思っています。
それではまたお会いしましょう。
お相手は、たいらーでした。