バチくそ暑い上に梅雨、おまけに祝日も無い最悪の月・6月を生き抜いた皆さん、こんにちは。

なんやかんや緊急事態宣言も解除され、映画館も規制の対象から外れたということで映画を楽しんでいる方も多いと思います。

他に皆が楽しんでいるとすれば、ディズニー+で公開されているMCUドラマシリーズ『ロキ』でしょうか。

待ちに待った『ブラックウィドウ』『ゴジラVSコング』もようやく公開ということで見たい作品が多い。

これもコロナの爪痕か……。

 

さて、今回は『映画鑑賞こぼれ話』2021年6月号。

鑑賞作品は4本。早速語っていきましょう。

 

 

1.るろうに剣心最終章 The Beginning

 

 

実写版『るろうに剣心』シリーズの最後の作品にして、最初のエピソードが実写化

幕末を舞台に、「人斬り抜刀斎」・緋村剣心と、その妻・雪代巴のドラマが展開される。

雪代巴を有村架純、剣心を雇う実在の志士・桂小五郎を高橋一生が演じ、従来の作品とは異なるキャスト陣が名を連ねる。

 

前の月に『The Final』をなんだかんだ楽しんだ私ですが、どちらかと言えば本命はこちら。

OVA『追憶編』として海外でも好評を博した映像化を既に成し遂げている、いわゆる「幕末モノ」の時代劇をとうとう実写化してくれるということで、多くの注目を集めていました。

元々この『追憶編』と実写『るろ剣』には「キャラが技名を叫ばない」「CGを極力使わない」「ビジュアル面ではリアリティを重視する」と映像化のアプローチに多くの共通点があるということもあり、この『追憶編』に見劣りしない物を作り上げるという課題に関しては作り手も気合いが入ったことでしょう。

 

結果としては、それなりに成功といった印象です。

鑑賞後Netflixで『追憶編』もチェックしましたが、比べてみると意外と違う点が多い。

OVA版は師匠である比古清十郎に拾われる幼少期から始まって「緋村剣心」の人生を描いているのに対し、この実写版は剣心の奇兵隊入りが劇中で描かれる最も古い地点なのであくまで「抜刀斎」としての剣心に視点が偏っています

桂からの巴のスタンスも剣心を狂気に落とさないための「鞘」になることを望んでいるOVA版と違い、「あいつの剣を鈍らせるな」と釘を刺すめんどくさい彼氏みたいな立ち位置に(それでも一個のキャラとしてチューニングできてるのは流石の高橋一生と言ったところ)。

アクションは安心の『るろ剣』クオリティ。しかしながら今回は流血表現が多く、全体的に殺し合いとしての色が濃く出ていて生々しさも増していた印象。剣心VS沖田戦を中盤の池田屋事件に持ってきたのはなかなか面白い改変だったと思います。

あとなんで斎藤さんは牙突で池田屋の二階を吹っ飛ばしてるんだろう

 

何と言っても良かったのは、有村架純が演じる雪代巴

立ち姿から顔つきまで常に存在感を放つように演出が成されていて、人斬りである剣心の背後を取って現れる姿はまるで物の怪か何かといった雰囲気。

見せ方としては最初からどこか含みがあるというか、剣心の人斬りとしての在り方に終始懐疑的である様を隠さないため、『The Final』を見て(あるいは原作を読んで)ある程度真意が分かっている人向けではあります。

しかしその透明感と意思の強さが滲み出る表情からは目が離せないものがあり、剣心と巴が同時に映っている場面はそこに漂う空気だけでも面白いと思えるレベルに仕上がっていました。

 

ただ勿体ないのは、全体としていまいち盛り上がりに欠ける点。

実写『るろ剣』の演出トーンは常にどこか静かながら平坦な部分も少なからずあり、アクションに関しては殺し合いなせいもあって意外とすぐ決着してしまうために若干淡白で、微妙に記憶に残りにくい印象でした。

静かな雰囲気そのものは今回の話と非常にマッチしているので、そこのバランスが難しかったと言えなくもないですが。

 

ラストシーンは実写『るろ剣』ならではの〆方をきっちりやってくれていて好印象。

シリーズのファンの方は絶対見ておいた方が良い1作なのは言うまでもありません。

まだやっている劇場もあるかと思いますので、おすすめです。

 

 

2.地獄の花園

 

 

脚本をバカリズムが手掛けたことが話題のガールズアクションコメディ

OL達が己の拳をぶつけ合い、覇を競う様を描く。

主演の永野芽郁のほか、広瀬アリス、菜々緒、遠藤憲一、小池栄子など豪華キャスト陣が勢揃い。

 

大作だらけの映画館の中で公開された和製のアクションコメディ。

しかも女性がメインという独特な世界観に対し、「こういうのも面白いかもしれない」と半ばバクチ感覚で観に行きました。

 

……そういう作品でロクな目に遭ったことが無いにもかかわらず。

 

はい、というわけで月に1度は出くわすダメ映画です(というか映画と言っていいのか、これ?)。

とにかくこの作品、「登場人物(主に主役)がモノローグで心情や過去を説明する」テレビドラマ的な場面が多すぎる。

最初の数分はヤンキーOLという世界観への導入として出オチ的に楽しめるものの、その後90分近くも尺があるんだからそこは画と役者の演技でスルッと吞み込ませつつ楽しませようよ……と思うぐらいにはモノローグだらけ。

漫画のような世界観で「漫画みたい」を連呼されても、没入感が削がれるだけで何一つ面白くはない。

そもそもこのOL達がヤンキーをやるメリットも特に明かされなければ何の意味があるのかも分からないため、本当にただバカな大人達が騒いでるだけの不快な絵面にしか見えない。

「バカ映画」と「バカしかいない映画」は本質的には別のものであるということを分かっていない作り手が「こういうの面白いでしょ?」とおどけて作ったのが透けて見えるような、最低の映像作品です。

『新解釈三国志』といい、この邦画における「コメディ」への舐めくさった態度は何なんでしょうか。

 

アクションも面白くはなかったですね……。シーン自体もただ殴り合ってるだけで別に盛り上がりませんし、役者さんが皆細めのモデル体型なので打撃に説得力が無い。

唯一森三中・大島のパンチは滅茶苦茶重そうでちょっと印象に残る……それぐらいの感じ。

 

展開は悪い意味で先が読めませんでしたが、ラストのオチまで最悪だともう頭が下がります。

今時これを劇場用映画として公開するフジテレビの神経の太さが凄い。

この夏、クソ映画を見て涼みたい方にはおすすめです。

 

 

 

3.機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ

 

 

ガンダムシリーズの生みの親、富野由悠季が書き下ろした小説、『閃光のハサウェイ』が数十年越しに映像化。

反連邦組織「マフティー」を率いる青年、ハサウェイ・ノアが連邦政府に戦いを挑む中で起こったドラマと葛藤を描く。

監督は『虐殺器官』の村瀬修功氏。声優陣は過去のメディアミックスから変更され、ハサウェイを演じるのは小野賢章。

 

延期に延期を重ねるあまり「延長のハサウェイ」などと揶揄されつつも、いざ公開されると近作の『UNICORN』『ナラティブ』などのシリーズを凌いでガンダムシリーズ史上トップクラスの好成績を記録している話題作。

自分はガンダムは『SEED』の世代なので宇宙世紀にはあまり明るくありませんが、いい機会だからと鑑賞してきました。

 

結果としては大満足の出来

特に偉いのが、物語の大半を占める政治性を含む複雑なドラマを、下手なモノローグや説明台詞に頼らずちゃんと「映画」として見せている点。

食事シーンにおける食べ物のチョイスや扱い方など、登場人物の仕草などが非常に繊細に描かれていて、話の理解に必要なことはちゃんと自然な会話の流れで教えてくれるので全体の構成が非常に巧い。

そして皆が口を揃えて驚いたと言う、モビルスーツ戦の新たな地平を見せてくれたと言ってもいい中盤の市街戦

流れ弾に巻き込まれるどころかちょっとした火花が舞うだけでも、建物の上に立つだけでも、ちょっとバーニアを吹かすだけでも下にいる人間にとっては挙動の1つ1つが怖い。徹頭徹尾人間目線の、さながら怪獣映画のようなモビルスーツ同士の戦いはシリーズ的にも一種の新境地であり、ロボットアニメをこれまで手掛けてきたサンライズの本気を改めて感じさせられました(『鉄血のオルフェンズ』に期待してたのが実はこういう描写だったかも)。

 

あとはまあ、思想にかぶれた若い子達の集まりみたいな「マフティー」の見せ方と扱いも最悪で最高でしたね。

あちこちに被害を出しまくり偽団体まで現れタクシーの運ちゃんからもdisられとにかく散々で、ハサウェイ本人もしこたま葛藤しているというのに、彼らの集まりはなんだか爽やか青春ものみたいな空気に満ち溢れているという。

中でも象徴的なのがラストシーンからEDの入りにかけての下り。

晴れた船の甲板にハサウェイが出てくる新海誠みたいなカットからアップテンポのバンドミュージックがかかるという、実に「それっぽい」なんかいい感じの場面で〆るというのが皮肉というか欺瞞に満ちていて大好きです。

こいつらここからロクな目に遭わないんだろうな……という点に作り手が自覚的でいてくれるからできる作りと言えるでしょう。

『ガンダム』シリーズ、ビルドシリーズも含めてあまりハマらず最近は離れていましたが、こう10年に1回は必ず大きな力作を生んでくれるのでなんやかんや戻ってくる地力がありますね。

最近気になってるのはコミックスで連載してる「HGに恋するふたり」(主人公がSEED世代)だったり。

 

 

 

4.モータルコンバット

 

 

 

大人気格闘ゲームが実写映画化。

真田広之がゲームの人気キャラ、スコーピオンを演じる。

 

個別に記事を書きましたが、これは素晴らしいエンタメ映画でした。

「バカ映画というのはこういうものだ!」と映画全体が語りかけてくるような怒涛のアクションの連続に、妙な愛嬌のあるキャラクター達。

「モータルコンバットとはこういうことだ!」と100分かけて丁寧に教えてくれるグロと暴力と超分かりやすいストーリー。

そして、「カッコいいとはこういうことだ!」と言わんばかりに最初と最後に出てきて縦横無尽に暴れ回る還暦の真田広之。

全てが強烈で心地よく、大人が本気で作ったカッコいい絵面を延々ぶつけられる大傑作でした。

 

ちなみに記事を書いた後パンフレットを買いました。

読んでみると役者陣も皆『モータルコンバット』ファンばかりでなかなか好印象。原作の用語からシリーズの歴史までしっかりまとめられた『モータルコンバット』全体の資料として非常に価値の高い決定版。

監督のサイモン・マッコイド氏のインタビュー記事を読むと並々ならぬアクションシーンへのこだわりが伝わってきます。

「戦いを通して物語を展開させたかった」

監督、まさしく格闘ゲームの実写化としてそのアプローチは正解だと読んでいて膝を打ちました

「続編の製作を決めすのは観客の皆さんだと思います」とも。いやもう本国で大ヒットしてるから是非とも続編を作ってほしいし、今度こそ日本でもこの熱が伝わって欲しい。そんな気持ちで素直にいっぱいな映画です。

1から10まで原作への愛と敬意に満ちたアクション映画の新しい傑作。

公開されているうちに、皆さん是非この作品の上映に足を運んでください。

 

 

 

……さて、6月の鑑賞分についてはこんな感じです。

ちなみに次回は、『モータルコンバット』よりもっとバカだと専らの評判、『ゴジラVSコング』を取り扱いたいと思います。

それでは今回はここまで。

お相手は、たいらーでした。