皆さん、こんにちは。
この前TOHOシネマズで現在特別上映が行われているジブリ作品の1つ、『風の谷のナウシカ』を鑑賞してきたのですが、公開前に劇場に行って席の予約画面を開くとなんと座席がほぼ埋まっていました。
スクリーンは全部で約150席あり、コロナの関係で実際に座れるのは半分程度になっていたとはいえ、一時は閉館を余儀なくされていた映画館にこれほど人が戻ってきているという状況に驚かされました。
ちなみに僕は『ナウシカ』を全く観たことが無かったためこの機会に乗じたという面もあるのですが、スクリーンには若い人や子連れの家族なども入っており、僕と同じくこれが初体験になった人もいるのかな…などと思いました。
さて、今回は映画感想を行おうと思っていたのですが、作品を観て思うことが色々とあったため、ちょっと趣向を変えたレビューにしていきます。
今回取り扱うのは、人気少女漫画を映像化したこの作品、
『私がモテてどうすんだ』!
男性同士の恋愛(通称BL)を好む「腐女子」のヒロインと、彼女を取り巻くイケメン男子たちの恋愛模様(?)を描いた異色のラブコメディ。
原作は2018年に完結済みながら、実写映画化が決定し、7月10日から全国で公開されています。
本作の感想を述べるにあたって、映画を観た上で色々引っ掛かる部分がありました。
そこで今回は、youtubeで公式配信されているTVアニメ版を一気見し、まずこのアニメ版についてこの記事で感想を述べた上で、次の記事で実写版について触れていくことにしました。
原作の再現を忠実に行うことが多いアニメと、良くも悪くも話題になりがちな実写化ではどのような違いが生まれるのかをこの機会に検証するため、このような形で行っていきたいと思い今回はこの2本立て構成を取ることにします。
アニメ版は2016年に、全12話が1クールにわたって放送されました。
当時から存在やあらすじは一応耳に入っていたのですが、「女性向け」で、おまけにライトノベル原作で腐るほどあった「ハーレムもの」ということで全く食指が伸びず、4年近くスルー。この映画を機に初めて鑑賞することとなりました。
まずこのアニメ版の感想について話しますが、こちらは結構楽しめました。
僕が最初受けつけなかった理由の一つに、「太ってた腐女子が偶然痩せたら美人でモテモテに」というあまりにもご都合主義すぎるあらすじの設定がありました。
今だったら「ルッキズム」と一部の層に叩かれそうですし、映画感想の中にもルッキズムと絡めて語るものを見かけました。
ですがこの作品、主人公でありヒロインの芹沼花依がモテモテになった後にそれなりに丁寧なストーリーが用意されており、それが一定の面白さを醸し出してくれます。
今回はアニメの魅力的だった部分を、主にキャラクターの観点から4つに分けて提示します。
①珍獣系ヒロイン、芹沼のアクの強さ
推しキャラの死に寝込んでしまい、痩せた結果絶世の美女へと変貌した本作の主人公、芹沼花依。
彼女は俗に言う「腐女子」で、2次元、3次元問わず男性同士が愛し合ったり触れ合ったりする様に興奮する重度のオタク。
ですが痩せたことによって、クラスの同級生や、後輩のイケメン男子たちから好意を寄せられ逆ハーレム状態に陥ります。
自分にとって見守る対象であった男子から好かれるというのは想定外の現象であり、作品のタイトルは、この状況に困惑する花依の心の叫びを表しています。
しかし彼女は根っからの腐女子!
隠そうとしていたオタク趣味は隠し通せず、「死んだ推しの仏壇を作る」といった強火すぎる行為の数々で男性陣を逆に困惑させ、時には自ら振り回していくほどの胆力の持ち主です。
しかもどんな場面であろうと男性同士の絡みを察知すると興奮して目を血走らせ、時には鼻血も流す剛の者。
その良くも悪くもブレない芯の強さは他の場面でも発揮され、例えば第2話ではサッカー部の助っ人を頼まれて見事に務め上げており、ボールを蹴る時の癖を逆手にとって勝利に貢献したりといった機転が利く様子もしっかり描写されています。
美人になったことを鼻にかけることもなく、自らの「腐女子道」を往くと初期の段階で宣言させ、ちゃんと最終話までその姿勢を貫き通しているという面は、ハーレムものの主人公としてはかなり珍しく、好感が持てる部類に入りました。
コメディリリーフ的でありつつ、全体の話を彼女が起点として回しているところも存在感を減じない工夫として正しく、本当に最初の設定を呑み込めれば十分楽しめます。
②男性陣の行き届いた掘り下げ
そして次に挙げたいのが、ヒロインである芹沼を取り巻く逆ハーレムに属する男キャラたち。
後輩キャラで面食いだが、背が低くどんくさい一面の目立つ小動物系男子、四ノ宮隼人
サッカー部員で爽やか系、しかし割と肉食系な面を持つ五十嵐祐輔
芹沼の所属する史学部の部長で、癒し系の先輩キャラ、六見遊馬
五十嵐の親友で、芹沢の推しに似ているヤンキー系男子、七島希
の4名。
最初は芹沼の容姿の変化を原因として集まることになるこの4人ですが、単に終始メロメロなだけで終わるのではなく、共に過ごす中で彼女の性格を徐々に好きになっていったりと段階を踏んだ心情描写がちゃんと行われているのが興味を持続させてくれます。
特にBL・オタク趣味に対しては最初は困惑しながらも、コミケ参加などを経て順応していく様が描かれており、リバウンドしてしまった芹沼を痩せさせるエピソード(第5話後半)では、痩せさせることを言い出した四ノ宮と七島が「ノルマに応じてBL風の絡みを見せる」という解決法を提示するなど、逆に彼女の嗜好を利用するまでに成長(?)してみせたりもします。
更にこの四ノ宮・七島コンビに関しては、「芹沼の容姿が好き」以上に接点が薄いという部分を考慮してか、後半にそれぞれ個別回(第8、9話)が作られ若干のバランス調整が図られています。
四ノ宮は他が高スペックすぎる中に置かれているコンプレックスを、七島は妹が居て実は面倒見が良いというそれぞれの魅力を押し出す作りで、「マナーの悪いオタクor暴漢が現れてそれを撃退する」という作劇が繰り返される以外はまあまあ楽しめる内容で、ちゃんとキャラの印象に気を遣ってるのが好感触です。
(ちなみにマナーの悪いオタクor暴漢の下り、前半でも2回ほどあり1クールで計4回あります)
あと男性陣の中で特殊な立ち位置にいるのが、唯一の年長者である六見先輩。
芹沼含め暴走しがちなメインキャラの中でも屈指の常識人で、元々芹沼とは部活で接点があり、本人が歴史オタクなのでBL趣味などにも一切の偏見無く接するというどう考えても逆ハー内で一番有利な人。
そのため彼に関しては「恋愛感情に自覚が無い」という一種のリミッターがかけられており、中盤(第7話)の触れ合いで芹沼個人を意識させるエピソードを配したりと、かなりバランスに気を遣った描き方をされています。
掘り下げという面で言えば若干五十嵐が割を食っているところがあるものの、「主人公に好意を抱く人たち」の心情もしっかりと描き出し、話としても破綻なく繋がっているというのは、原作の良いところもあると同時にシリーズ構成がかなりいい仕事をしていると思います。
③逆ハーレムの「紅一点」⁉ 二科志麻という思わぬ伏兵
そして本作をある意味真に魅力的足らしめているのが、ちょっと変わった立ち位置のキャラクター。
第4話から逆ハーレムに堂々名乗りを上げ、芹沼をオトしにかかる「紅一点」、二科志麻です!
この二科、四ノ宮と同学年で後輩キャラではあるのですが、芹沼と趣味を共有するタイプのオタクで、実家が金持ちで、手先が器用、おまけに顔が良い超高スペック女子。
逆にその高スペックぶりから周りに人が寄ってこないというコンプレックスを抱えており、芹沼(痩せる前)の優しさに触れたことで彼女に心底惚れ込んでいて、リバウンドしても全く動じないという恐るべき強度の持ち主でもあります。
最初に出てきた時は単なる百合萌え要員かと思っていたのですが、実際はこのキャラのレギュラー入りが作品の見やすさにかなり貢献してくれていました。
特に大きいのが「人数比」の問題。
個人的な感触になりますが、ハーレムもの作品には男女比が異様に偏ってしまい、見ている側がちょっと気まずくなってくるという問題があります。
本作の当初の男女比は男4に対して、女1というバランス。芹沼以外の女性キャラは、彼女の母か友人のあまねと、殆どストーリーに絡まないキャラしか用意されておらず、基本的に芹沼が男4人に囲まれて行動することになるためどことなく居心地の悪い構成になっています。
ここに二科が挟まると、男女比は4:2になり、同時に芹沼が趣味の話などで絡みやすい人物が加わることになるため、一気にこの逆ハーレムのバランスが良く見えてくるのです。
リバウンドの件では六見先輩と共に暴走しやすい男性陣を窘める側に回っており、第6話ではカップリング論争で芹沼と喧嘩しながらも逆に男性陣にサポートされながら、彼女とより仲を深めていくなど、女子の立場だからこそ描ける部分もしっかりと描かれており、
「芹沼はもうこいつとくっつけば良いんじゃないかな」
と素直に思ってしまう、手放しに完成度の高いキャラでした。
④熟練のスタッフ・制作陣
ここまでキャラクターについて色々述べましたが、全体をまとめると特殊の設定の割にかなり「見やすい」作りになっているのが魅力の本作。
それを実現させているのは、やはり制作陣の手腕と言わざるを得ないでしょう。
本作のシリーズ構成・メインの脚本を担当しているのは、ベテランの脚本家・横手美智子さん。
30年にわたって多くのアニメ作品の脚本を手掛けており、近年では『SHIROBAKO!』『からかい上手の高木さん』『若おかみは小学生!』など、多くのヒット作にも関わっています。
そして監督を務めたのは、一部でカルト的人気を誇る伝説のアニメ『人造昆虫カブトボーグV×V』を手掛けた石踊宏さん。
こちらも1980年の『鉄腕アトム』の頃からアニメ制作に関わっている大ベテラン。
見ていると様々な感情の湧き上がる『カブトボーグ』を作っただけあって、芹沼をはじめとする「変人」を違和感なく見せる術に長けています。
「逆ハーレムもの」ということで僕と同じように食指が伸びない方も、この制作陣の名前にピンときたら是非ご覧ください。
以上が、「TVアニメ版」の魅力の解説になります。
キャラクターの心理描写が満遍なく行われているので各々に魅力を感じる部分がちゃんとあり、男性キャラが好きになれないという人でも二科は結構ハマりやすいと思いました。
全体の構成などにあまり斬新さはありませんが、話の上で踏むべき段階をちゃんと踏んでいるため、視聴にあたってストレスはあまりなく軽く見て楽しむ「小品」として考えるとかなり良い作品です。
気になったという方は、明日7/20までとなりますが、youtubeのアニメ配信チャンネル「フルアニメTV」等で全12話が無料で配信されているため、ご覧になってください。
という訳で、次回、以上のことなどを踏まえながら、改めて実写版の感想を述べていきたいと思います。
今回はこれで終わりとなります。
ここまでお送りしたのは、たいらーでした。

