デフレ進行を受け、小売業界全体で販売価格が低下した。消費者の間でも低価格志向が強まったが、だからといって、消費者が安いものしか買わなくなったわけではない。とくに服飾品では、多少お金を出して「いいもの」を買う一方、「普段使いのもの」には安さを求めた。つまり「高価格」と「低価格」という商品の二極化が起こったのである。
 靴・サンダル業界も例外ではなかった。消費者のニーズは1万円前後の高価格帯、もしくは1000円以下の低価格帯に分かれた。しかしマルチウの商品の価格帯は、1足2000円から3000円の「中価格帯」が中心だった。
 同業の各社が値下げ競争を繰り広げる中、マルチウが値段を下げられなかったのは、自社の商品企画力を発揮したものづくりにこだわっていたからだ。そのために中価格帯の商品販売から脱することができず、消費者ニーズに的確に対応できなかった面は否めない。