愛想無しガール+ひねくれボーイ xxxI thought nothing and he neglect xxx -11ページ目

愛想無しガール+ひねくれボーイ xxxI thought nothing and he neglect xxx

みっじかーい小説やらポエムやらネコ噺を並べてます。
コンセプト、思いつき。
虚構と事実のあいだを行ったり来たりしてる話が殆んど。
苦笑いの練習にでもご活用ください。楽しんでもらえたら、棚ぼたです。

「始まったら呼んで」と頼まれたから、待っている。
 これで何度目だろう?以前は…。
 気に入った番組をしかとこの目に焼きつけるため開始時間までにすべての用事を済ませておきたかったあの人はこう頼んできた。
 いざ始まったから声をかけると、「最初見逃したじゃん」と悔しがられた。始まったから呼んだのだが、厳密には始まる直前に呼べということなのだ。
 もちろん怒りの矛先はこちらへ来る。口答えはしない。
 胸の中で静かに舌打ちをするにとどめる。録画もしてあるのだから機器が最初を捕らえているだろうに、なんてことも言わない。

 それからこんなこともあった。近所の花火を見に行った時、打ち上げの前に出店に買い出しについていったあの人がこう言った。
 始まったからメッセージを送ると、すぐさま反応はなく、当人が戻ってきて、「音で分かるわ」と小突かれた。開始アナウンスが流れたら呼べということだったようだ。
 チラシにも打ち上げの予定時間が書いてあったのだから、微妙な時間にやきそばを買いに行かなきゃいいだけの話なんてことは言わない。

 今回は、始まりそうになったら呼ぼうと臨戦態勢で待っている。こういう完璧に準備をして待っている時に限って始まらない。始まる気配すらない。
 そして、あの人は戻ってくる。
「始まったら呼んでって言ったよね。なんで呼ばないの?」
「始まってないからだよ」
 これは言わないと。

 あの二人の恋のはじまりはまだまだ先のようだ。

「じゃあ、我々そろそろ動きますか」
「始まらないなら、始めようってことですか?」
「その通り。それがお仕事だからね」

 ぼくら、天使だもんね。