現在、観光バスで雲仙を訪れる団体観光客の一行は名物の温泉卵を手に雲仙地獄を歩き回る。
その一角、血の池地獄とお糸地獄のある丘の上に、一本の十字架がある。
1961年(昭和三十六年)にカトリック長崎大司教区によって立てられた十字架である。
この下には、主な殉教者七人の名前が刻まれ、現在もキリシタン殉教のシンボルとなっている。
陽ぷ西に傾く頃、十字架の前に停んでいると、高原を吹きかう風の中血のように赤い夕焼けが純白の十字架をかすかに染め、殉教したキリシタンたちの祈りの声が、どこからか聞こえてくるような気がする。