シンガポールのファーストフード店でブラック企業について考える | シンガポール~熱帯先進国から見る世界

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常夏のシンガポールから、つれづれなるままにコラムをお届けしています

昨日、シンガポールの某ファーストフード店に入りました。
注文カウンターに並んでいたのは3人、これなら数分
程度で目当ての商品を買えるだろうと思いましたが、

店員の対応が遅い遅い・・

客1人をさばくのに5-6分はかかっていましたので、注文
まで15分以上は待つことになってしまいました。

カウンターの中を見ると、働いていたのはシンガポール人
らしき高齢スタッフ数人と、マレー系男性スタッフ等約8名。
人数はたくさんいるのですが手際が悪く、モタモタと時間を
かけて1つ1つ商品を詰めたりチキンを揚げたりしています。
それぞれが自分の仕事しかしていないので指示を出す人
がおらず効率の悪い対応。客も辛抱強く待っていましたが
既にファーストフードとは言えないスピードになっていました。

それを見ながら
「ああ、この光景はどこかで見たことがあるぞ」
と思い出しました。
フィリピンでもたいていのファーストフード店は、スタッフが
カウンター内にぎゅうぎゅうに詰まって働いていても商品が
出て来るのは遅かったのです。
(シンガポールでファーストフード店に行くのは久しぶり
でしたので)
まあ東南アジアではよくあることです。

日本ではファーストフードと言えども素晴らしい対応をして
くれます。私自身も働いたことがありますが、オペレーション
はシステム化されていてスタッフもそれをしっかり
こなすことができます。
東南アジアではマニュアルがあっても人をシステマチックに
動かすには限界があります。
日本はサービスが素晴らしい国だな、と感激するところ
なのですが、同時に昨今日本で問題になっている
ブラック企業のことを思いました。

アジアでは安い店では安いなりのサービスしか受ける
ことができず、客もそのことを暗黙のうちに理解して
います。働いているスタッフも給与に応じた働きしか
しませんし、できません。
ファーストフード店に高いレベルを求めることは
できないのです。これは教育が悪いとかスタッフが無能
とかそういう精神論の話とは違う、厳然とした事実です。

しかし日本では顧客も、職場のリーダーも、高いレベルの
サービスを当然のように求めてしまいます。
それがたとえ単価数百円の店であってもです。
ブラック企業がブラックと呼ばれる理由の1つです。

では日本でブラック企業について声高に批判している人は
低いサービスレベルでも文句を言わずに待つことが
出来るのでしょうか?
あるいは従業員のモチベーションを上げるための値上げを
許容することが出来るのでしょうか?
それとも欧米のように良いサービスにチップをはずむの
でしょうか。

日本人は知らず知らずのうちに安い商品を高いサービス
レベルで受けることに慣れ過ぎてしまっており、
それは誇るべきことでもありますが、不幸なことでも
あります。

ここは立ち止まって考えてみても良い点です。

また円高だった今までは「日本円換算で安い商品だから
まあこのレベルでも仕方ないか」と妥協できたことでも
円安の今、割安感は薄れています。

シンガポールのファーストフードでも、日本円換算
1000円くらいになってしまい、
「1000円払ってこの程度のサービスなのか・・」と
ガックリ来ます。
いろいろな場面で同じようなことが起きているでしょう。

店に安さを求めることとサービスレベルを求めること、
そしてブラック企業を批判することはそれぞれに矛盾を
抱えています。しかしほとんどの人はそこまで他人に
関心を持っている訳ではありません。
いくつかの企業、または遠い異国の地で、
安い給料で酷使されている人がいて、
初めて成り立っている生活があります
シンガポールという国はそのヒエラルキーを隠そうと
しません。日々、我々に問いかけてきます

そのような理由から、私はシンガポールに来てから
あまりにも安いものは好まないようになりましたにひひ
日本の購買力=マネーパワーが試される時が
来ているのかもしれません。

目の前の1つの小さなことでも、巡り巡れば世の中の動きと
つながっていて、なかなか解決は容易ではありませんね

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※写真と本文は関係ありません