「なぜ日本を出てシンガポールに来ようと思ったのですか?」
日本人との新たな出会いがあるたびに、こう聞かれます。
その確率はほぼ100%です。
対する私の答えは、
「日本で働いていたものの閉塞感を強く感じ、これからの
10年を日本で経験を積むのか、アジアで経験を積むのか、
その2つを比較した時に必然的に”アジアに出よう”と
なりました」と説明しています。
全くの本心です。
この返答に多くの方は、
「そうですね、よくわかります」と同意してくれます。
「日本にはチャンスが少なくなり閉塞感がある。だから成長
しているアジアに出るべき」…理屈としては極めて自然です
しかし多くの日本人が同意はしてくれるものの、
実際に日本を出るに至る人はわずかなのです。
仕事があるから、家族があるから、日本が好きだから…
日本を出られない理由はいろいろあります。
ではもしそれらの問題が片付いたら皆、一斉に日本を
出て来るのでしょうか?
さにあらず。言うまでもなく、日本人は外国へ出ていく
ことに抵抗のある民族です。
社会の動き・マクロの視点だけでは、個人の行動は
決定されません。
それぞれの人生観や体験、動くきっかけといったものが
大きな影響を与えます。
私について申し上げれば、子供の頃に数年間フィリピン
に住んでいたことが非常に大きく影響しています。
常夏のフィリピンで、当時はまだインフラも貧弱で
非常に不便な思いをしながらも、楽しい時間を過ごした
経験は忘れられません。
特に「人」の違いです。
フィリピンという国は貧しいですが、子供も大人も
とても明るいのです。目がキラキラしていました。
お金という尺度でいえば日本人の方が圧倒的に
持っていますが、フィリピンの人たちは日本人より
幸せそうです。
子供ながらにもその雰囲気を体験したことが、日本の
環境に疑問を持つようになったきっかけでした。
(ただ疑問を持ってもすぐ出ようとは思わず、日本を
出るまでそれから25年かかりました。
「きっかけ」が足りなかったのです。また私には姉が
いますが、姉は全くフィリピンにもアジアにも興味を
持っていません。
同じ経験をしてもとらえ方は人それぞれです。)
また私は今ミャンマーに毎月足を運んでいますが、
何もない国で新しい歴史を作っていくということに
ワクワク感と社会的意義を感じます。
だからすぐにビジネスにならなくても行くのです。
人の行動を決定するのは必ずしも損得だけではありません
このようにその人の背景にある人生観や価値観こそが、
行動に影響を及ぼします。
日本で稼げないなら外国に行くべきとか、
逆に日本で十分潤っているなら外国に行く必要はないとか
そういった議論もまた、一面的な見方であると言えます。
外国で働くということは決して楽ではありませんから、
長く続けている人は目先のこととは違う大きな目標や
動機があるものです。
海外進出が日本でちょっとしたブームになっている今、
そのhow toについて巷で議論されており、先日はNHKで
「国際人がニッポンを救う」という特集を組んでいました。
しかし「どうやって国際人を生み出すか」という視点からは
明確な答えは導き出せない気がします。運動が体に良いと
わかっていても皆がスポーツ選手を目指す訳ではないのと
同じように、外国で働くというのも理屈だけわかっても
自然には進まない道と言えます
義務感ではなくやはり外国が好き、その国が好きでないと
続けられないものではないでしょうか。
これからの若い人々が外国で働くことを実現するには、
若いうちに「外国が好き」になるきっかけを持つことが、
何よりも大事だと考えています。
早く、もっと自然に「外国で働く」ことが受け入れられる
日本になって欲しいものです。