「―――ふう~」
三時間目が終わり、休み時間になった。
やはり二年ににもなると授業のペースが少し早い感じがするな。
こっそりと後ろを見てみる。
ナナミさんはいつものように窓の外を眺めているだけだった。
昨日のことを謝りたいのだが中々話しかけづらい。なんというか今日のナナミさんは機嫌が悪そうに見える。
朝、ナナミさんは一限目の授業が始まると同時になぜか怒っている様子で教室に入ってきた。まわりの人間から見ても苛立っているのが分かった。
今日のナナミさんからは負のオーラが放出されている感じでどうも話しかけづらいのだ。
とりあえずぼくはこの負のオーラから逃げるように亮太の所へ行った。
「―――で、なあ」
亮太と森くんが何か話していた。
「なんの話をしているの?」
「―――うん? お、達也か。いや、ちょっとした世間話だよ。……でも珍しいな、おまえ朝と昼休憩以外はいつもノートとか整理しておれらの所に来ねえのに。今日はどうしたんだ?」
確かに亮太たちから来ない限り、いつもは五分休憩を使ってノートや授業の整理を行っていて机を立つことはない。
「……亮太、分かって言ってるだろ」
「まあな」
亮太はスッとナナミさんの方に目をやった。
「今日のあいつはなんか機嫌が悪そうだな」
「うん、まあね……」
「おまえがなんか話しかければいいんじゃね?」
ニコニコと笑いながら亮太はそう言った。
「……いや、あの雰囲気で話しかける勇気はぼくには無いよ……。でも、今日のナナミさん、なんであんなに機嫌悪そうなんだろう?」
「さあな。なんか苛立つことでもあったんじゃないか? ……しかしそういうおまえこそ、最近なんかボーっとすることが多くなったぜ」
「えっ?」
「今日もおれらと話す時や授業を受けてる時もなんか違うこと考えてるなーというのが分かるぜ」
「………」
亮太の言うとおり、ぼくはふっとした時に最近見られるようになった夢のことについて考えていた。
「何があったんだ? この亮太様に話してみろって」
「……別に大したことじゃないよ。ただ最近、不可解な夢を見るだけさ」
「夢?」
―――とりあえず、ぼくは昨日の夢のことを亮太たちに話してみた。
「……子供の頃の自分が夢に出てくるねー。うーん、そんなの普通じゃないのか?」
「まあ、そうなんだけど・……どうも何か引っかかってね」
「あー、恋の悩みとかだったらおれ専門なんだが……」
「いつからそんな専門になったんだよ……」
「こういう悩みはよく分からん。森、どう思う」
亮太は森くんに話を振った。
「……ふむ、自分の過去を見る夢というのは珍しくはない。問題はその夢が事実か虚実かだ」
「事実か虚実?」
「自分でも知らない事が夢で出てきたんだろ。もし、それが自分自身が作り出した虚実ならただの夢で終わるんだが、問題は本当にその夢が自分の過去……つまり事実だった場合だ」
「事実だったらなにか問題でもあるの?」
「……先に聞くがその夢を見た後に『あ、こんなことがあったな』っていう既視感みたなものを感じたか?」
「……いや、そういうのは感じなかったかな。逆にいえばそういうのを感じなかったからこんな不可思議な感覚に襲われるんだと思う」
「しかし、既視感とかそういのがないのにも関わらず何か引っかかるものを感じているんだろ?」
「……うん、まあ」
「………」
森くんは少し考えた様子で目線をどこかへ向けていた。
「……それで、何が問題だというの?」
「……既視感があるならそれは過去の夢を見たということで片づけられるが、もし無いというのならそれは……」
―――キーンコンカーンコン♪
その時、学校のチャイムが鳴り響いた。
「……おれは少し難しく考え過ぎているな……」
森くんはそうつぶやくと「席に座ろう」と言って自分の席に戻っていった。
「……なあ、達也?」
「なに、亮太?」
「……おれ、あいつの言ったことの半分以上が理解できなかったんだが」
「……奇遇だね、ぼくもだよ」
ただ、森くんがぼくの夢の話の中で何か引っかかっていることがあったのだろう。
……それが何かは分からないけど。
「とりあえず、ぼくも席に戻るね」
「ああ」
ぼくは自分の席に戻って次の授業の準備をした。
……事実か虚実か、かあ。
これにこの感覚の正体が隠されているのだろうか……。
三時間目が終わり、休み時間になった。
やはり二年ににもなると授業のペースが少し早い感じがするな。
こっそりと後ろを見てみる。
ナナミさんはいつものように窓の外を眺めているだけだった。
昨日のことを謝りたいのだが中々話しかけづらい。なんというか今日のナナミさんは機嫌が悪そうに見える。
朝、ナナミさんは一限目の授業が始まると同時になぜか怒っている様子で教室に入ってきた。まわりの人間から見ても苛立っているのが分かった。
今日のナナミさんからは負のオーラが放出されている感じでどうも話しかけづらいのだ。
とりあえずぼくはこの負のオーラから逃げるように亮太の所へ行った。
「―――で、なあ」
亮太と森くんが何か話していた。
「なんの話をしているの?」
「―――うん? お、達也か。いや、ちょっとした世間話だよ。……でも珍しいな、おまえ朝と昼休憩以外はいつもノートとか整理しておれらの所に来ねえのに。今日はどうしたんだ?」
確かに亮太たちから来ない限り、いつもは五分休憩を使ってノートや授業の整理を行っていて机を立つことはない。
「……亮太、分かって言ってるだろ」
「まあな」
亮太はスッとナナミさんの方に目をやった。
「今日のあいつはなんか機嫌が悪そうだな」
「うん、まあね……」
「おまえがなんか話しかければいいんじゃね?」
ニコニコと笑いながら亮太はそう言った。
「……いや、あの雰囲気で話しかける勇気はぼくには無いよ……。でも、今日のナナミさん、なんであんなに機嫌悪そうなんだろう?」
「さあな。なんか苛立つことでもあったんじゃないか? ……しかしそういうおまえこそ、最近なんかボーっとすることが多くなったぜ」
「えっ?」
「今日もおれらと話す時や授業を受けてる時もなんか違うこと考えてるなーというのが分かるぜ」
「………」
亮太の言うとおり、ぼくはふっとした時に最近見られるようになった夢のことについて考えていた。
「何があったんだ? この亮太様に話してみろって」
「……別に大したことじゃないよ。ただ最近、不可解な夢を見るだけさ」
「夢?」
―――とりあえず、ぼくは昨日の夢のことを亮太たちに話してみた。
「……子供の頃の自分が夢に出てくるねー。うーん、そんなの普通じゃないのか?」
「まあ、そうなんだけど・……どうも何か引っかかってね」
「あー、恋の悩みとかだったらおれ専門なんだが……」
「いつからそんな専門になったんだよ……」
「こういう悩みはよく分からん。森、どう思う」
亮太は森くんに話を振った。
「……ふむ、自分の過去を見る夢というのは珍しくはない。問題はその夢が事実か虚実かだ」
「事実か虚実?」
「自分でも知らない事が夢で出てきたんだろ。もし、それが自分自身が作り出した虚実ならただの夢で終わるんだが、問題は本当にその夢が自分の過去……つまり事実だった場合だ」
「事実だったらなにか問題でもあるの?」
「……先に聞くがその夢を見た後に『あ、こんなことがあったな』っていう既視感みたなものを感じたか?」
「……いや、そういうのは感じなかったかな。逆にいえばそういうのを感じなかったからこんな不可思議な感覚に襲われるんだと思う」
「しかし、既視感とかそういのがないのにも関わらず何か引っかかるものを感じているんだろ?」
「……うん、まあ」
「………」
森くんは少し考えた様子で目線をどこかへ向けていた。
「……それで、何が問題だというの?」
「……既視感があるならそれは過去の夢を見たということで片づけられるが、もし無いというのならそれは……」
―――キーンコンカーンコン♪
その時、学校のチャイムが鳴り響いた。
「……おれは少し難しく考え過ぎているな……」
森くんはそうつぶやくと「席に座ろう」と言って自分の席に戻っていった。
「……なあ、達也?」
「なに、亮太?」
「……おれ、あいつの言ったことの半分以上が理解できなかったんだが」
「……奇遇だね、ぼくもだよ」
ただ、森くんがぼくの夢の話の中で何か引っかかっていることがあったのだろう。
……それが何かは分からないけど。
「とりあえず、ぼくも席に戻るね」
「ああ」
ぼくは自分の席に戻って次の授業の準備をした。
……事実か虚実か、かあ。
これにこの感覚の正体が隠されているのだろうか……。