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哀れなるものたち | Searchlight Pictures Japan

 

※R18+指定作品

 

ひとりの女性が大きな橋から飛び降り自殺を図った。

科学者が偶然その女性を川の土手で見つけ、救助したが彼女は死んでいた。

科学者はその女性の遺体を自分の研究所に連れ込み、なんと蘇生にかけた。彼女は生き返った。

 

彼女は記憶もなく、はたから見れば歩く姿もぎこちなく、何もかもいちから教育がやり直しとなった。

女性独特の身体的特徴も学び、やがてそれは性的興味へとつながる。さらに男との関係が駆け落ちへと発展していく。

ここで初めて彼女には刺激を受ける世界への旅が始まる。

 

画像のような絵を見て、ファンタジーかなと思っていたが筆者の予想は見事に裏切られた。いや科学的には動物たちの登場でファンタジーなのだけれども、舞台がロンドンやパリなどとあたかも18世紀頃の背景を見事に再現、それはかつての『フランケンシュタイン』を観た記憶を彷彿とさせるものであった。

 

これは一度は死んだ女性の成長物語である。何しろ記憶も知識もないままの蘇生なのであって、ゼロから始まる教育が微かに描かれ、それがやや間違いであったことに気づく彼女でもある。

スタンリー・キューブリック監督作品群からの影響が色濃く出ている印象であった。『シャイニング』や『バリー・リンドン』など、しかしながらそこから多くを学んでおきながら今作では全く新しい世界観へと昇華している。

クライマックスには、自殺する前の彼女の夫が現れる。そのキャラクターの残酷なこと。それまで映画の中で描かれてきた脳にまつわる話などを振り返ると、改めて脳に関する疑問を恐怖と共に禁じ得ない。これもキューブリックが映画撮影に際して気にしていたポイントだったはずであり、原作者にも影響を与えてはさらにヨルゴス・ランティモス監督にも影響を同時に波及していたのだろうかと筆者は思っている。

 

この映画は何が良いか。まあ、どうっていうほどのものではなかったが、とりあえずは実験的な世界観の描出に力を入れている。クローズアップ、レンズ穴からの覗き、背景描写、そして狂気に満ちた人物描写など実にこれらは強烈極まる。

 

次回の記事アップは未定です。