この映画はあまり大したものではないなと思って、ほっぽっておいて久しい。しかしこのほどブルーレイを購入し、過去にDVDで2回観たがこの3日間、一日1回観て「ああ、そういうことか」と思って自分なりにこの映画の名画たる所以は何かと自分に問うた。全部で5回観たことになるが、この3日間は音声解説をも含め、スタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』についても新たに勉強する日程になった。原作はスティーブン・キング。

 

 

 画像は劇場で配布されていた当時の映画チラシである。主演はジャック・ニコルソン。怪優と呼ぶにふさわしい形相の持ち主であり、出演作にのちのティム・バートン監督の『バットマン』などがある。キューブリック監督も彼に着目していたゆえのキャスティングとなった。この作品より以前の作品として『ファイブ・イージー・ピーセズ』というドラマ映画があり、この頃はあまりパッとしなかったらしいが、この作品で一気に世界に彼の名を知らしめた。

 

 コロラド州の大雪に囲まれた山荘ホテルの管理人の仕事を頼まれた作家ジャック・トランス(ニコルソン)とその妻ウェンディ(シェリー・デュバル)と7歳になる息子ダニー(ダニー・ロイド)の一家。冬のホテルは従業員の誰もが引き払い、彼ら3人だけがこの山荘ホテル「展望ホテル」(Overlook Hotel)の留守番をすることになり、その間、ここには他には誰もいない。

 

 このホテルでは10年前には惨殺事件が起きていた。犯人は父親で、妻と双子の娘たちを殺し、自分は最後に猟銃を口に咥えて発砲して自殺したという。またこのホテルも敷地は以前はインディアンの墓場だったという。ジャックはそんなことはまるで気にならないと仕事を引き受けたのだった。

 

 大広間でタイプライターを打つジャックだが、日々そうしていくうちにストレスがたまり、妻のウェンディにもあたるようになる。そうしてー。

 

 息子ダニーは超能力の持ち主であり、時には未来が見える。超能力を見抜いた展望ホテルの黒人料理主任ハロラン(スキャットマン・クローザース)はこの展望ホテルの怪奇現象に早くも気づいた少年ダニーに「あの部屋には決して入るな」を釘を刺す。しかしそれでも現象は向こうからやってくるのだった。

 

 あらすじは以上で、この映画で筆者が気づいたのは「この映画の主役はホテルだ」ということだった。

 

 1972年に初めてステディカムという撮影手法が開発され、開発したのはギャレット・ブラウン氏だ。彼は他の映画でも一本の映画につきほんの少しのシーンで、このステディカムを使用してきており、代表作になるジョン・G・アビルドセン監督、シルベスター・スタローン主演『ロッキー』でもフィラデルフィアの階段を上る名シーンを披露した。しかしながら、この『シャイニング』では初めて全編通しての撮影だったということだ。

 

 このステディカムの多用によって、さらに言えば広角レンズを頻繁に用いることでホテル内や庭にある迷路内をより効果的に見せている。部屋や通路をとにかく広く見せて、ホテル建物の怖さを強調している。

 

 ダニーが三輪車に乗ってホテルの通路を走り回る有名なシーンがある。床の足元から5~6cm離れてのカメラ撮影だが、カメラ本体を逆さまに取り付けてブレなく流麗な流れで少年を後ろから追う。これらのカメラワークは全て霊怪現象が人間たちを見守っているという感想を抱かせるためにやっていることなのだと思った。だからホテルが主役なのだと思ったわけである。ブルーレイ音声解説でも同じことを言っていたが、偶然の一致だった。

 

 名画たる所以。スティーブン・スピルバーグ監督もこの映画はあまり気には入っていなかったらしいが、監督作『レディ・プレイヤー1』でもペーパーバックの表紙を取り上げては、名シーンを再現するなどしている。ダニーが隠れる什器は『ジュラシックパーク』みたいだなと思わせる。

 

 筆者はこれを名画ではないと言って否定しているわけではない。時代が変わった今において、世代も変わっていき、名画百選を新たに考えていかなくてはならないと思っている。この映画は世代が変わっても、世代を越えて支持されるべき傾向にあることは言うまでもないことだと言っても過言ではないが、どうも何かが足りない。当時としては新しかったステディカム撮影技法も今ではクリント・イーストウッド監督も多用しているし、そんなに珍しくもなくなった。その技法によって霊界現象という雰囲気をもたらした効果はこの映画が最も最たるもので、筆者がこれまで観てきた中ではその効果を堪能するにはこの一本しかないと思う。この映画はカメラワークが全てだったのだ。内容はあまりたいしたことはない。それでもこの映画は、映画通になるならこの一本は間違いない。この映画はそう思わせるだけの力がある。

 

 YouTubeは相変わらず映画音楽をアップロードしています。

 映画は

 『ネバーエンディング・ストーリー』主題歌・挿入曲

 『スターシップ・トゥルーパーズ』メインテーマ

 『稲村ジェーン』主題歌・挿入歌

 『アマデウス』主題曲

 

 これからも予告なくアップロードさせて頂きます。↓