ビザンティン美術のハイライトはモザイク画
イスタンブルの魅力はやはり、ローマ、ビザンツ、オスマンのそれぞれの時代の首都であった歴史をたやすく逍遥できるところ。
ただ美術に関しては、ローマの時代のものは途中でキリスト教運動の偶像破壊の時代に壊滅したので、今楽しめるのはビザンツのモザイク画とオスマンの稠密画などとなります。
モザイク画で有名なのは、アヤ・ソフィアとカーリエ美術館。ともにオスマン時代にモスクとして転用されたので、その間は漆喰をかぶせてただの白い壁となっていて、20世紀に再び黄金の姿を取り戻しました。
カーリエ美術館
オスマン帝国がこの二つに関しては建物をこわさずに転用したこと、そしてキリスト教絵画に敵意を持っていなかったのか画面を破壊することをしなかったので、今日私たちはビザンツ美術を楽しめるわけです。
モザイク画は大理石や破砕タイルとガラスを材料にしていて、変色しないことより永遠の絵画といわれています。モザイク画は、一粒ごとの色の濃淡や配列、埋め込む角度により、絵の立体感や光を受けて輝く神秘性を表現できる画法です。粒が細かいほど繊細な表現が可能になります。
モザイク画を鑑賞するには、カーリエの方がアヤ・ソフィアより魅力的です。カーリエは地震でたびたび被害を受けているので、モザイク画がアヤ・ソフィアのものより新しく技術的により完成されているといわれていて、建物も小ぶりなので真近に見ることができて一粒ごとの配列がわかるくらいです。
カーリエ美術館は旧名コーラ教会。ともに郊外という意味のトルコ語とギリシャ語だそうです。コーラ教会が最初に作られたのは4~6世紀ころ。しかし14世紀の大震災で大きく傷つき、大修復したのが当時の財務長官テオドレ・メトキテス。彼が教会の模型をキリストにささげている絵がありました。今鑑賞できる絵はみんなこの時に描かれたのでしょう。
内部の様子 聖堂を捧げるテオドレ・メトキテス
狭い館内では、たくさんの聖書の物語が壁と天井に描かれていて、それらから放たれるイメージ量の多さに疲れをおぼえるくらいでした。そして自分が立っていた横の壁の使徒パウロの強そうな顔と目が合ってびっくり。フラッシュなしでぱちぱちと写真撮った中で、この人のが一番迫力のあるものとなりました。
館内には綺麗なフレスコ画もありフレスコ画としては美術史上の傑作の一つとされていますが、私には立つ位置で光の反射が変わりイメージも変わるモザイク画の方に人物像として力があるなと感じました。
フレスコ画のアナスタシィス
今は美術館なので、質の高いビザンツ美術がこんなにたくさん鑑賞できてよいところなのですが、これが教会なら落ち着かないなと率直に思いました。ここで買った本を読んでいたら、「テオドレ・メトキテスはアンドロニコス二世の寵臣として財をなしたが、次の皇帝アンドロニコス三世の時に投獄、財産没収された」とありました。なんか騒がしい人生を送った人が、財にものをいわせて当時の一流の画家たちに描かせたのでしょうか。そのころ美術館という概念がなかったから、教会の衣が必要だったのかなとも想像しました。
カーリエ美術館はツアーでは寄らないかもしれませんね。エディルネ門のそばにあるので、スルタンアフメト地区からだと車で10キロ、20分くらいかかります。その前を走るトラム1号線に乗れば、トプカプ駅でトラム4号線に乗り換えてエディルネカプ駅下車、徒歩10分くらいです。私はトラムを利用したのですが、時間ある人なら車窓からテオドシウスの城壁を眺めることもできてよいでしょう。



