「口伝」くでんとは許されたものだけが直接師匠から口伝えで教えて頂けるものです。 


奥伝などともいわれています。


現在はマニュアル流行りです。

マニュアルには何でも書いてあって便利なようですが、起こりうるすべてのことがマニュアルに書いてあるわけではありません。

またルーティンワークの手順や器具や設備の操作方法についての記載は有効です。

しかし、やってみて初めて分かることもたくさんあるので、マニュアルは実践するうえで利用する、手引書です。

そしていつでも手元に置いて、必要なときにみる事が出来る事ということは、とても便利です。

多くの人に同時に均等なレベルの知識や技術を伝えるために、マニュアルは大変有効です。


口伝で伝えられることは師匠の心技体すべてが同時に伝えられます。

ですから、その教えを受ける人はその人の受け取れる分しか吸収することができません。

本当に厳しい世界です。

ですから免許皆伝、認可されたものだけが教えを乞う事が許されるのでしょう。


そこには暗黙知、言葉や絵や図では表現できない、技や、コツ、壺、名人芸のエッセンスが凝縮されています。
弟子もですから必死です。

少しでも多くを得ようと心身を研ぎ澄まして教えを請います。その切磋琢磨が奥儀を伝えるもとになったのだと思います。


そしてそれらの教えを受けたら、すぐに自分仕様の覚書きとして記録する。

ここがまたとても良いところです。

自分なりのものが出来上がります。

師匠の口伝・奥伝を少しも漏らさず書き残そうとしたものが、現存しています。それらをもとに現代の私たちもその息吹を感じる事が出来るのです。


そして口伝では、文章では書けないところ、言葉では表現できないニュアンス、間合いや、呼吸、その時起きている非言語の様々な反応がライブで伝えられます。


その時師匠は何を見て、何を聞いて、何を感じているのか。

こういったところを先人たちは少しでも伝えようとしたのでしょう。

それが口伝となって伝わっているとしたら、先人たちの熱い息吹や、思い、考え、ひらめきを受け取ることができる私たちは幸せです。


その時その場でその人と。


どんな場面でも、これは茶の湯に限らず、二度と同じ場はやってきません。

その一瞬の変化や偶然に当意即妙に対応してゆくには、口伝で伝えられるスピリットが何より大切です。


想像力と創造力。

そしてそれを現実化する表現力。

それらを常に磨き続ける事は、言うまでもありません。
だからこそ、なんだかもったいぶっているようですが、認可された者しか受ける事が出来なかったのだと思います。そこに価値を置き、またそれを受ける事が名誉であったのです。勿論今でもそうですが。

大切にするものやことは、目に見えないことやものです。


 そういったことを愛情深く時には厳しく師匠は弟子に伝える。

それらが、連綿と受け継がれることで文化は、途切れてしまうことなく継承されていきます。

先人たちの伝承を次に伝えるのは私たちの使命でもあるのです。

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