「…私が、岬…」
「いや?」
「ううん、嬉しい…です」
あまりに親しく話してくれたので危うくタメ語を使いそうになった。 だけどそれに対して怜は、
「いーよ無理して使わなくて、同い年くらいだろうし」
「何歳…なの?」
「今年で18」
「やっぱり年上…」
子供っぽい笑顔を時折みせるが、その反面大人のような落ち着いた顔も見せる。
2こ年上だけど、こんなに違うんだ…
「高2?」
「高1です。」
「じゃあ2歳違うんだ…」
へぇ、と意外そうに頷く。
「なんか大人っぽいね」
「…子供ですよ、私なんか。」
そう、私は子供のまま。
小さいときまでは甘やかされて育った。今では考えられないほどに。小学校にあがった頃にはもう親のスパルタ教育は始まっていた。
毎日早寝早起きは当たり前。ずっと同じ生活スタイルでたまに自分がロボットになるのでは、と思った事も何度かある。
ずっと変わらない生活を送ってきたから、私の中身もなにも変わっていない。だから今も子供。
外見は変わっても教養は身についても、きっと人間の根本的な場所は変わっていないんだろう。
「子供だよ…、翔…、怜みたいに楽しいこととか面白いこととか、怖いこととか不思議なこととか…何も知らないよ」
ほんとは知りたいのに、それができない。知ることがイケないことのような気がして。
「じゃあ、教えてあげる」
「え?」
ふざけて言ってる訳でもなく、ただただ穏やかな顔で怜はいった。
「俺が連れてってあげる。いろんな場所に、そんで色々教えてあげる。知るってのは、すっげぇ怖いことでもある。でも、知るってことはすっげぇ楽しい事でもあんだよ」
まるで私の心を読んだかのように怜は言った。
知るってことが、楽しいこと…
「…行きたい…。…行きたい!怜と一緒に、色んなとこ行って、色んなこと知りたい!」
気付いたら泣いていた。怜にかけられた言葉が嬉しすぎて。
「よしよし」
微笑んで岬の頭を撫でる怜
男の人に頭を撫でてもらうなんてはじめてで、岬の体は強張ってしまった。
「でもさ、恋は知ってるんだよね?」
「え?」
岬の頭に手を置いたまま怜が言った。
「…恋は、知ってる。でも、からかわれてただけ見たいだけど」
もう泣いたりはしない。でも、少しだけ痛い。
「…そっか」
また優しく頭を撫でる。
もういつ頃だったかなんてわすれちゃったけど、何だかお母さんに撫でられているような懐かしい感じがした。
「…うん」
嬉しくて、悲しくて、懐かしい。
言葉にできない色んな感情は、再び綺麗な涙となって現れた。
「……うん…っ」
岬は泣きながらまた返事をした。
すると怜は頭を撫でるのをやめ、その腕で岬を包み込んだ。
頭を撫でるときと同じように優しく、岬を抱きしめた。
温かい…。
お母さんに抱きしめられたのも、今ではもう思い出せない。
男の人に抱きしめられているのに、不思議と今度は緊張しなかった。
「俺が教えてあげるよ、世の中の楽しいこと全部。ホントの恋も」
岬を抱いたまま優しく言った。
ホントの恋…も?
それって一体…
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