■不調の原因は微妙なバランスのズレ
どうやら、北島康介(日本コカ・コーラ)が不調らしい・・・。前日の100メートル平泳ぎ予選・準決勝を見て、そう感じた人は多かったはずだ。何より北島本人、恩師である平井伯昌・日本代表ヘッドコーチのトーンが上がってこない。だが、それでも・・・。過去の2大会を振り返って分かる通り、五輪になると恐ろしいまでの底力を発揮する北島ならば、決勝戦では劇的な逆転劇を演じるのではないか。日本中がそう思っていただろう。
しかし、結果は5着。58秒46の世界新記録をたたき出して優勝したキャメロン・ファンデルバーグ(南アフリカ)に、遠く1秒33及ばない“完敗”に終わってしまった。
「キャメロンの泳ぎは素晴らしい。今の自分に58秒4が出るかと言ったら無理でしょうね。それは、無理って決めつけちゃいけないかもしれないけど、自分が出せる力はないと思う」。
北島もレース後、力負けを認めた。この不調の原因は、本人が語るところによると体全体がしっくりとハマらない微妙なバランスのズレ。それを修正しようと考えて泳ぐうちに気持ちのバランスまでもが崩れ、「迷いが出て、それがすごい苦しかった」という。
■五輪で勝つことの難しさ、浮き彫りに
また、ピークの持っていき方にもズレが生じてしまっているようだ。「そこが水泳の難しいところ」と北島。4月の日本選手権では北京五輪の金メダル以来、4年ぶりに自己記録を更新するなど、この上ない素晴らしい泳ぎを披露した。それだけに今の苦しむ姿は、ちょっと想像がつかなかった。
その4月のレース後、達人の域に達したと愛弟子を絶賛した平井コーチも、まさかの事態に「4月の選手権は本当に素晴らしかったのですが・・・。キープの難しさでしょう」と苦渋の表情を何度も浮かべた。
「簡単に勝ってきたように見えるかもしれないけど、なかなか難しいのがオリンピック」(北島)。
4年に1度の、その決められた1日に人生最高のピークを持っていった者だけが勝つ。2大会連続2種目制覇の北島の敗北が、あらためて五輪で勝つことの厳しさ・難しさを浮き彫りにした。
■200mで復権へ「あんまり考えてもしょうがない」
しかし、すべてが終わったわけではない。得意とする200メートルがまだ残っている。ならば、北島はこの距離で復活するのか、それとも続けて結果を残せないのか。
平井コーチは今の北島を「何かこう“出てくるもの”がない」と評した。また、無意識で野性的に泳ぐのが北島の持ち味だとも言う。当の北島本人もそれを意識してか、それとも感覚的に分かっているのか、200メートルは本能のままにぶつかっていくしかないと語った。
「200の方がいいんじゃねぇか!」って思っていくしかないでしょう。もうあんまり考えてもしょうがない」。
振り返れば、昨年の世界選手権でも100メートルは4位に終わったものの、つづく200メートルでは2位まで挽回(ばんかい)し、そのリカバリー能力の高さを示した。このロンドンでも、今回の敗北はきっと北島の闘志に大きな炎をともしてくれるに違いない。そして、その炎は北島の迷いをかき消してくれるだろう。
「康介が負けるところなんか見たくない」。
平井コーチのこの言葉と、日本国民の思いは同じだ。強い北島は五輪のプールに戻ってくるのか。200メートル平泳ぎ予選・準決勝は、2日後の現地時間31日。まずはここでの泳ぎに注目したい。
200は信じてるぞ~。
wave attack