ポールはジョージと中華料理屋でマーラー麺なる料理を食べて、一杯お酒を飲んだ後、山手線で家に帰る途中だった。新宿で京王線に乗り換え、最寄り駅に一番
早く着く急行高幡不動行きに乗り込んだ。ポールはリンゴに、「今ガールと飲んでいるから来いよ」と誘われていて、急いでいたのだ。
もうすく10時という時間だったため、社内は意外と混んでいなかった。そうか、今日は土曜日だということをポールは思い出した。座ることはできなかったものの、ポールは座席の一番端の前の位置を確保し、網棚に手提げを置いて、吊革につかまって音楽を聴いていた。
ポールの右隣、ドアの前にある吊革のあたりに、社会人のカップルがいた。顔やぼんやりとしか見ていないが、男のほうが、「サンボマスター」の ボーカルのような顔で、女のほうは、まぁ普通の黒髪の女の子といった感じだった(ポールが考える普通の黒髪の女の子とは、「いきものがかり」のボーカル (キヨエというらしい)のような容姿の子のことを指す)。
10分くらい電車に乗り、京王線が次の停車駅である笹塚に着こうとしているときから、ポールは、サンボマスターのボーカルのような男(長いので 「サンボ」とする)の、自分の方角にチラチラ目を向けてくる行為が気になっていた。電車に乗ってすぐ自分の方角に目をチラチラ向けてくるのはわかる。自分 の方角には週刊朝日だか、プレイボーイだかの週刊誌の広告があるからだ。でもさすがに10分を過ぎてもチラ見してくるのはなんか変だ。というか明らかに ポールのほうを向いている。しかもあまり歓迎的でない目つきで(はっきりと目を合わせていないのでわからないが)。
ポールはサンボのカップルのポジショニングを、相手にそっちを向いているように気づかれぬようにボヤーっと確認した。二人は座席の端にある棒 (ポール?いや、でもここでポールと表現すると話がややこしくなる)をそれぞれの左手でつかんでいた。下の手が「いきものがかり」のボ・・・つまり「キヨ エ」であり、上がサンボである。ちなみに両者の身長差はほとんどない。位置関係を確認する。左から、ポール、キヨエ、そしてキヨエのすぐ後ろにサンボであ る(むしろキヨエの背中にサンボの腹がくっついてる感じ)。つまり、サンボの左腕はポール、じゃなくて棒をつかんでもいるし、なおかつキヨエに巻きついて もいるわけだ。
説明が長くなった。つまり、この二人のポジショニングから次のようなことをポールは確信したのだ。それはつまり、先ほどから発せられるサンボのポールへのチラミは、「俺のキヨエには指一本も触れさせねえからな!」的な、警戒心から出力された行為であったのだ。
サンボから警戒される理由がポールにはいまいちよくわからなかった。ポールは別に酔っぱらってふらついていたわけでもない。中華料理屋で一杯しかビール飲んでないもんな。いやもしかしたら・・・・臭いか?
ポールがジョージと中華料理屋で食べたマーラー麺は、激辛が売りだった。タンタン麺がちょっとスパイシーになった感じの料理だ。ファミレスのお 子様ランチに世界の国旗がつくのと同様に、激辛という料理には、ニンニクがつきものだ。もちろんマーラー麺にもたんまりニンニクのスライスが入っていた。 ポールはその後もう家に帰るしか予定がなかったので、構わずたんまりニンニクのスライスをかじった。ジョージはというと、ニンニクを器用に端でつまんで、 どんぶりの下に敷いてあるさらにきれいに積み上げていた。ポールはジョージのそのニンニクスライスの塊を、料理を食べ終わる直前に気付いた。ポールが理由 を聞くと、ジョージは「だってくさいじゃん」と言った。それは、カラオケに誘った友達に、「だって今日雨じゃん」と断られたときのような、もしくは、習字 の授業があるときに、習字道具を忘れてしまって、「一緒に怒られようね」と二時間目の休み時間に話していた同じく習字道具を忘れた友達に、習字の授業の時 間になったときに、「これ、母さんが昼休みにもってきてくれたんだ」と「エヘ」っとした表情で習字道具を見せつけられたときのような、そんな、そんなとき のような裏切られた感じをポールは感じていた。
まぁでも、ジョージはポールに帰り際にガムを二つ渡してくれたので、それが唯一の救いではあった。ポールはリンゴにガールと飲むぞと言われてい たので、ガムをクーシャクーシャしていた。まぁでも、ニンニクが放つ香りは口臭だけにとどまらない。それはありとあらゆる汗腺から放たれるものだと誰かに 聞いたことがあった。ポールは先日友人キースに、「飲むヨーグルト飲むと、そういうにおい消えるよ♪」と、「実はアイフォンよりアンドロイドの方がこの先 お得♪」的なドヤ顔で言われたことがあった。だからその日ジョージとコンビニで買って試しに飲んでみたのだが、無数にある汗腺からニンニクのにおいを放出 するのを飲むヨーグルトで防ぐのは、一つのハンマーで「100匹ワニワニパニック」をやるくらい高度な技術を必要とする行為だと思っていたので、あまり期 待はしていなかった。
だからサンボにはニンニクの臭いが危険なものと感知されていたのかもしれない。「このニンニクブタ野郎!(どっちがブタじゃ!)こっち寄ってくんじゃねぇ」と思っていたのかもしれない。
そう思うとポールは腹が立った。それぐらいいいじゃないか。お前みたいな奴に嫌われたくらいで、俺はニンニクの摂取をやめない(ちなみにポールはそんなに頻繁にニンニクを食べるわけではない)。決してやめないんだ!
「大体なんだサンボ!お前はそうやって、二人でいるときは、自分がキヨエを「所有」していることを確かめるかのように、キヨエを自分以外からの接 触と隔離させているのか!そんな行為がキヨエのためになるのか?そんなことをやっていると、どんどん世間からの距離が離れていき、ついには、二人の周りに は誰もいなくなってしまうんだ!俺を見てみろ、今俺はipodで the Beatles の「all my loving」を歌詞表示付きで聞き、頭のなかで歌詞を口ずさみ、英語の勉強をしているんだ。俺はそうやって、世界との接触を図るためのツールを身につけ る努力をしているんだ。へ!お前ら寂しい奴らだな」
と、「寂しいのはどっちじゃい!」と突っ込まれるそうな自分を正当化する文句を考えて満足したポールは、国領で電車を降りていった二人をにこにこしながら見送った。
もうすく10時という時間だったため、社内は意外と混んでいなかった。そうか、今日は土曜日だということをポールは思い出した。座ることはできなかったものの、ポールは座席の一番端の前の位置を確保し、網棚に手提げを置いて、吊革につかまって音楽を聴いていた。
ポールの右隣、ドアの前にある吊革のあたりに、社会人のカップルがいた。顔やぼんやりとしか見ていないが、男のほうが、「サンボマスター」の ボーカルのような顔で、女のほうは、まぁ普通の黒髪の女の子といった感じだった(ポールが考える普通の黒髪の女の子とは、「いきものがかり」のボーカル (キヨエというらしい)のような容姿の子のことを指す)。
10分くらい電車に乗り、京王線が次の停車駅である笹塚に着こうとしているときから、ポールは、サンボマスターのボーカルのような男(長いので 「サンボ」とする)の、自分の方角にチラチラ目を向けてくる行為が気になっていた。電車に乗ってすぐ自分の方角に目をチラチラ向けてくるのはわかる。自分 の方角には週刊朝日だか、プレイボーイだかの週刊誌の広告があるからだ。でもさすがに10分を過ぎてもチラ見してくるのはなんか変だ。というか明らかに ポールのほうを向いている。しかもあまり歓迎的でない目つきで(はっきりと目を合わせていないのでわからないが)。
ポールはサンボのカップルのポジショニングを、相手にそっちを向いているように気づかれぬようにボヤーっと確認した。二人は座席の端にある棒 (ポール?いや、でもここでポールと表現すると話がややこしくなる)をそれぞれの左手でつかんでいた。下の手が「いきものがかり」のボ・・・つまり「キヨ エ」であり、上がサンボである。ちなみに両者の身長差はほとんどない。位置関係を確認する。左から、ポール、キヨエ、そしてキヨエのすぐ後ろにサンボであ る(むしろキヨエの背中にサンボの腹がくっついてる感じ)。つまり、サンボの左腕はポール、じゃなくて棒をつかんでもいるし、なおかつキヨエに巻きついて もいるわけだ。
説明が長くなった。つまり、この二人のポジショニングから次のようなことをポールは確信したのだ。それはつまり、先ほどから発せられるサンボのポールへのチラミは、「俺のキヨエには指一本も触れさせねえからな!」的な、警戒心から出力された行為であったのだ。
サンボから警戒される理由がポールにはいまいちよくわからなかった。ポールは別に酔っぱらってふらついていたわけでもない。中華料理屋で一杯しかビール飲んでないもんな。いやもしかしたら・・・・臭いか?
ポールがジョージと中華料理屋で食べたマーラー麺は、激辛が売りだった。タンタン麺がちょっとスパイシーになった感じの料理だ。ファミレスのお 子様ランチに世界の国旗がつくのと同様に、激辛という料理には、ニンニクがつきものだ。もちろんマーラー麺にもたんまりニンニクのスライスが入っていた。 ポールはその後もう家に帰るしか予定がなかったので、構わずたんまりニンニクのスライスをかじった。ジョージはというと、ニンニクを器用に端でつまんで、 どんぶりの下に敷いてあるさらにきれいに積み上げていた。ポールはジョージのそのニンニクスライスの塊を、料理を食べ終わる直前に気付いた。ポールが理由 を聞くと、ジョージは「だってくさいじゃん」と言った。それは、カラオケに誘った友達に、「だって今日雨じゃん」と断られたときのような、もしくは、習字 の授業があるときに、習字道具を忘れてしまって、「一緒に怒られようね」と二時間目の休み時間に話していた同じく習字道具を忘れた友達に、習字の授業の時 間になったときに、「これ、母さんが昼休みにもってきてくれたんだ」と「エヘ」っとした表情で習字道具を見せつけられたときのような、そんな、そんなとき のような裏切られた感じをポールは感じていた。
まぁでも、ジョージはポールに帰り際にガムを二つ渡してくれたので、それが唯一の救いではあった。ポールはリンゴにガールと飲むぞと言われてい たので、ガムをクーシャクーシャしていた。まぁでも、ニンニクが放つ香りは口臭だけにとどまらない。それはありとあらゆる汗腺から放たれるものだと誰かに 聞いたことがあった。ポールは先日友人キースに、「飲むヨーグルト飲むと、そういうにおい消えるよ♪」と、「実はアイフォンよりアンドロイドの方がこの先 お得♪」的なドヤ顔で言われたことがあった。だからその日ジョージとコンビニで買って試しに飲んでみたのだが、無数にある汗腺からニンニクのにおいを放出 するのを飲むヨーグルトで防ぐのは、一つのハンマーで「100匹ワニワニパニック」をやるくらい高度な技術を必要とする行為だと思っていたので、あまり期 待はしていなかった。
だからサンボにはニンニクの臭いが危険なものと感知されていたのかもしれない。「このニンニクブタ野郎!(どっちがブタじゃ!)こっち寄ってくんじゃねぇ」と思っていたのかもしれない。
そう思うとポールは腹が立った。それぐらいいいじゃないか。お前みたいな奴に嫌われたくらいで、俺はニンニクの摂取をやめない(ちなみにポールはそんなに頻繁にニンニクを食べるわけではない)。決してやめないんだ!
「大体なんだサンボ!お前はそうやって、二人でいるときは、自分がキヨエを「所有」していることを確かめるかのように、キヨエを自分以外からの接 触と隔離させているのか!そんな行為がキヨエのためになるのか?そんなことをやっていると、どんどん世間からの距離が離れていき、ついには、二人の周りに は誰もいなくなってしまうんだ!俺を見てみろ、今俺はipodで the Beatles の「all my loving」を歌詞表示付きで聞き、頭のなかで歌詞を口ずさみ、英語の勉強をしているんだ。俺はそうやって、世界との接触を図るためのツールを身につけ る努力をしているんだ。へ!お前ら寂しい奴らだな」
と、「寂しいのはどっちじゃい!」と突っ込まれるそうな自分を正当化する文句を考えて満足したポールは、国領で電車を降りていった二人をにこにこしながら見送った。