続き
香港故宮にて特別展の三星堆(さんせいたい)を観てきました。約3000年前に忽然と現れ消えた謎の遺跡。
2019年に新たに6つの穴が発見され三年にわたる発掘調査により一万点以上の遺物が発見されました。年代測定のもと紀元前11世紀に埋められたことがわかったそうです。
穴に投げ込まれチリチリになった青銅器の上に象牙を敷き詰めて、計画性を持って埋められたそうです。
中国文明発祥の地、黄河中流から下流域の
中原一帯には、当時殷(商)があって、
同時期の三星堆の青銅器は殷のものと全く異なります。
それまでの中国青銅器は容器が中心ですが、
三星堆は人物の偶像がたくさん発掘されました。
史記によると紀元前11世紀ごろに、
殷周革命で周が殷を滅ぼします。
この同時期の中原の戦争という背景が
三星堆の青銅器埋蔵に関係していると考えられています。
そして、三星堆が衰退したとみられる時期から
南に50km離れた場所に金沙遺跡があり
距離も近く文化も出土されたものも重なるので、金沙遺跡は三星堆の部族が移り住み受け継いだと考えられています。
冠につける金の帯が見つかっていて、太陽と鳥の姿の飾りがついていることから信仰も一致します。
魚鳧族(ぎょふ族)の王のシンボルも同じです。
金沙では、大型の青銅器はみられず手のひらサイズなのだそうです。
三星堆の地を離れる際に、大切にしてきた大型の青銅を埋めてきたからでしょうか…
太陽を模った太陽形器
↓太陽に関係する遺物の中でも最も大きい4メートルの高さにもなる青銅の神樹
こちらは映像の写真なので画像がぶれていますが
9本の垂れ下がる枝に9羽の鳥が止まっています。
古代の伝承・十日神話(じゅうじつしんわ)と関係しているとみられています。
太陽が昇る東に扶桑
西に若木という巨木があり
太陽が一つ帰ると 一つ出ていき 皆鳥に載っている
一日方至一日方出皆載于鳥(「山海経」大荒東経)
空に10の太陽があり、10羽の鳥が交代で太陽を背負って
東から西へ飛び、その間は9羽は樹に止まって休む
神話と一致する東の扶桑と西の若木と考えられる青銅が見つかっています。
↓ 神樹底座
太陽のいる天に鳥は飛んでいけるので
鳥と太陽を結びつけて太陽神を崇拝していました。
十日神話の話は、中秋節の
《羿(げい)と嫦娥(じょうが)の物語》
にも繋がります。
弓の名人 后羿(こうげい)が西王母からもらった不死の薬を妻の嫦娥(仙女)が盗んで月に逃げ蟇蛙(ヒキガエル)になった物語です。
后羿(こうげい)が太陽を射落とした話があります。
(射日神話、羿射九日)
↓ひし形の眼形器
このような眼を模った遺物も多く発見されていて
古代には光を感じる目を強調することは
太陽を意味しているのだそうです。
おそらく神廟の壁に飾られたのではと紹介していました。
多くの像の体にも目を模る模様が刻まれていたそうです。
足の部分に刻まれた眼形紋
バラバラに投げ込まれた青銅の元の姿への修復はとても困難な作業で、人間にはなかなかできないこともAI解析による復元で3体が成功しているそうです。
独自の言葉は発見されていないので、このような青銅器が三星堆文化や祭祀を物語っています。
見たことのない形の偶像で注目されました。
三体のうち1番右のものはこちら↓
大神獣
「臣」字形の目やお腹の部分には神樹の模様、
足には火の模様などがあります。
こちらは蛇型器
龍形器
頭が虎の身体は龍の青銅
虎頭龍身像
一度見たら目に焼きつく姿…
似たような姿の像は何個か見つかっているそうですが
跪く台座の人像として身分は低いとみられています。
この人像の模様のいくつかは新たに発見されたもので、羽冠紋など鳥のイメージを表したものもあります。鳥は天の神と人を繋ぐためのものと思われています。
右側のものは、貝を模る青銅
三星堆では近年雲南省あたりで多く発掘されている貝もたくさん見つかっていて、通貨の役割を担っていたと考えられています。
古代の三星堆に交易があったのですね
こちらの柄杓は柄の部分が鳥の頭です。
鵜飼をする魚鳧族(ぎょふ族)が
三星堆に移り住んだとされています。
金罩
三星堆から10点の金マスクも出土されているそうです。最大で重さは約350グラム
金が85%の合金で、銀と少量の銅、鉄、錫などがあるそうです。
香港では2024年1月8日まで特別展が開催されていましたが、四川省にある三星堆博物館には連日多くの方が訪問されているそうです。
貸し出しされていた一部の遺物を拝見してきましたが、ただただはじめてみる形状の青銅にびっくりしてきました。
NHK4Kの番組「三星堆」中国 謎の古代文明をあとから見る機会があり、理解が深まりました。
青銅器は、難しいと思っていましたが、もっとより楽しく愛らしく?鑑賞できるようになりそうです。
自分の備忘録を兼ねて長いブログになりましたが、最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。