学校のオリエンテーションが終わってすぐに地元に飛んで帰った。
なんたって今日はT先生と晩御飯に行く日だから!
明日は健康診断が朝からあるからまたすぐに大学に戻らないといけないでもそれだけ大事なことなんだ。
18時に学校の最寄の駅に着いたが先生はまだ仕事中だったので学校に行った。
「また来てしまったか・・・」としみじみ思った。
なんだかんだ言ってこれからもこの学校に来ることになると思う。
教官室に先生はいなかったので職員室に行った。駐車場に先生の車がなかったのでいなかったらどうしようと心配になってきた。
職員室に入るとすぐに先生を見つけた!
あいたかったーー!!
感動の再会という感じ!
見知らぬ土地で知らない人たちの中での生活に緊張してばかりいたが、懐かしい顔を見てすぐに心の氷が溶け出し、温かい気分になれた。
やっぱりT先生に会うと落ち着く。
先生は国体の仕事や学校の行事の仕事ですごく忙しいみたいだ。
睡眠時間がほとんどないらしい。
今年は担任はしないみたいだが忙しいのは相変わらずのようだ。
国体の終わる10月までは土日に休みはないらしい。
ってことは10月まで会えないやん!
会うとしても平日の午後になる。ああ、さみしいなぁ。
国体が終わっても新人戦がすぐにあるからなかなか会ってくれそうにない。
先生はまだ仕事があったのでしばらく物理のY先生に相手をしてもらった。
Y先生は今年で退職だ。
私らで最後の生徒だった。
まぁ、最後の挨拶をしてきた。
仮面浪人をする、と言うと参考書をもって行っていいと言われたので4冊ももらった。
ラッキー!
物理はあんまり持っていないから助かった。
「医学部は難しいぞ。でも、お前ならやれるわ」と言ってくださった。
よし!やるぞ!!
私は白血病の新しい治療法を開発して先輩みたいに若くして亡くなる人を減らすのだ!
それが私ができる先輩を喜ばせてあげられることになる大きな大きな夢なんだ!
あと、離任する先生を教えてもらった。
情報のN先生、登山のときに撮ってもらった写真は一生の宝物。
英語のI先生、3年の授業担当だった。
進路のY先生、1年のときの現社や公務員試験のときにお世話になった。
中学、高校の先輩でもある。いい人だったな。
古典のY先生、1・2年でお世話になった。さむーいダジャレが最強だった。
図書のY先生、図書室よく行ったなぁ。アルバムもう見に行きづらくなるなぁ。
どの先生もお世話になった人ばっかりだ。
さみしいなぁ。
もう一回会いたかったな。
T先生の言ってた「びっくりすること」とは車のことだった!
先生は新車を購入していた!
なるほどね!
だからいつもの車がなかったんだ!
『あんまり驚いてないなぁ』って言われちゃったけどね。
ぬいぐるみはもう乗っていなかった。
それからこの車でファミレスに移動。
ここはばあちゃんとよく来る店だ。
人がたくさんいるからさすがにここでは写真を撮らせてもらえなかった。
まぁしかたない。
また先生におごってもらった。
申し訳ない。
ドリンクはあんまり飲まないのでやめておいた。
おもしろい話はないか、と尋ねると『いっつも先生が話してばっかりやからたまには話してよ』とおっしゃるのでしばらく迷って、「あのこと」を話すことにした。
そう、I先輩のこと。
ずっと前から話そうと思っていたけれど話せなかった。
今更話したって遅いけれど、わすれるどころか思いは大きくなっていくばかり。
もうどうしようもない!
「お好きなだけ笑ってください!恋煩いです!」
・・・先生は大笑いこそしなかったが、にっこりして『へぇ~、よかったなぁ』と言った。
「よくないんですよ!!」思わず大声を出してしまった。
『初恋はいつなん?』
「・・・17」
『ふ~ん、おさななじみとか?』
「誰だと思います??」
『ん~』
「・・・・・I先輩・・・」
しばらく沈黙した。
『あ~、もうおらんもんなぁ』
・・・悲しい。
そう、先輩はもういないんだ・・・。
「信じたくないんです。全然実感が湧かなくて。お葬式にも行ってないし。私は先輩が病気だったことも何も知らなくて、先輩が苦しいときに何もできなかったんです。ほかの部員が先輩を励ましていたのなら、私も何かしたかったんです。」
『Iは本当によくがんばった。病気やったって知られたくなかったんやろうな。』
そうだよね。
先輩は十分すぎるくらいがんばったんだね。
先輩は病気だという目で見られたくなかったんだね。
知らなくてよかったのかもね。
『今、生きてる我々があいつの分までしっかりいきなあかんねん』
そんなこと十分わかってる。
でも、先輩の生きていない世界で生きているのがつらくてたまらない。
『そんな顔しとったらあいつに「何やってんねん」って笑い飛ばされるで。あいつはあんな状態でも笑い飛ばしてたんやから』
そうだ、先輩は最期まで決して弱音を吐かなかったんだ!
いつも笑っていたんだ!
自分が死んだことももう笑い飛ばしてるんだ!
『今すぐそこにいるように見えるのになぁ』
先生はそういって私の後ろを指差した。
先輩!ここにいるの!?
肩に先輩が手を触れているような気がした。
私には見えないけれどそばにいてくれているんだね。
『Iはいっつも空手道部のみんなのこと見てるからなぁ』
私は先生に先輩はどんな人だったのかを聞いた。
キャプテンをしていて、明るくて部活を盛り上げていたらしい。
見ていて気持ちのいいような組手をしていたんだって。
先輩の動きはすごくのびのびしててかっこよかったなぁ。
よく豪快に笑い、常に前向きな人だったそうだ。
いつも部員全員のことを気にかけていて、落ち込んでいる部員を見つけたらすぐに飛んで行ってはげましていたそうだ。
先輩はひとりで端で見ていた私にもやさしく話しかけてくれたね。
つらいことでもなんでも笑い飛ばしていたらしい。
「やりたいことがない」と大学には行かず、アルバイトをしていたそうだ。
空手道部のことが大好きで、よく部活を見に来ていたんだって。
それからすぐに病気にかかったらしい。
大学で空手をすればよかったと後悔しておられたそうだ。
そして2月に様態が急変したそうだ。
そうだったのか。
知らないことばっかりだった。
こんなに先輩のこと何にも知らなかった。
それでも大好きだった。
先輩の想像の姿が好きなのかも、と思ったりもした。
そして、先輩は私が思っていたよりも何倍もすばらしい人だった。
先生は『いい出逢いしたなぁ~』と感慨深げに言った。
ものすごく短い間だったけれど、先輩に出逢えて本当によかった。
この人を好きになれて本当によかった。
出逢ってくれてありがとう。
心からそう思った。
先生は死んだ人のことなんて忘れてほかの人を探せ、とか一言も言わなかった。
『一生忘れられへんなぁ。忘れたらあかんで!』
とおっしゃった。
忘れるもんか。忘れられるはずないよ。
「来世でもまた先輩に会えるでしょうか?」
と先生に尋ねてみた。
『会えるよ!そう思っているのなら!』先生は目に涙をためてにっこり笑った。
先輩がいなくなってみんなが寂しい思いをしてる。
先輩はそれを申し訳なく思っているのか、先輩の話をしているといつの間にか笑顔になっている。
これは先輩が笑わせてくれているのかな?
そうだよね。
きっとそうだよね。
先輩はいつもみんなを見守っていてくれているのだものね。
いつもそばにいてくれているのだものね。
これからはずっといっしょだよ。