もっさん、この日は日本橋室町へ。
銀座線を三越前駅で降り、地下通路をまっすぐ南下します。



目的地は日本橋三井タワー内、「マンダリン オリエンタル 東京」さん。




館内ではエレベーターで、ばびゅーーんと38階へ。
日本でも指折りの「高層階ピッツェリア」への再訪でございます。





「ピッツァバー on 38th (ぴっつぁばー おん さーてぃえいす)」さん。
2024年2月29日訪問。
11時32分入店。

5つ星の格付けを受けるラグジュアリーホテル「マンダリン オリエンタル 東京」さん。
ピッツァバー  オン 38thさんは、同ホテル38階のイタリアンレストラン「K`shiki (ケシキ)」さんの店内にて営業する「レストラン内レストラン」です。




フロアの端っこに設置されたピッツァ窯と、8席のカウンター。
こちらには今や

「世界中からお客さんが集まって来る」

と言っても過言では有りません。


もっさんが38thさんへお邪魔するのは3年ちょい振り。
元々人気のお店でしたが、「ピッツァ界のミシュラン」と称される、本場イタリアの権威あるピッツェリアランキング「50 TOP Pizza」での上位入賞を果たした2022年以降は、更に予約が取り辛くなっています。
そうこうしている内にインバウンドも戻って来ましたし。
月初に解放されるオンライン予約枠と睨めっこすること、1年以上。
漸く予約が取れての再訪でした。



尚、38thさんは先日発表された50 TOP Pizzaのアジア・太平洋部門に於いて1位にランキング。
2023年に引き続き、同部門を2連覇となりました。

因みに同2位にランクインしたフィリピンの「Crosta Pizzeria」さんは、2023年まで38thさんに在籍していた伊藤勇一氏のお店です。
師弟がアジア・太平洋ランキングにワンツーフィニッシュという、見る人が見れば非常にエモい結果でした。

◯ 本日のプランツォ:PIZZA OMAKASE
現在の38thさんのお料理は、昼夜問わず全てコース料理のみ。
コースは前菜にピッツァ6種、ドルチェとなり、カウンター8名全てのお客さんに同じお料理が提供されます。
お寿司の「おまかせ」に着想を得たコースだそうで、その名も「ピッツァ オマカセ」です。

サンペレグリノ



もっさんは禁酒中ですので、ドリンクのオーダーはサンペレグリノのフリッザンテ(炭酸水)。
ビンではなくグラスでの提供で、飲み干すと追加を注いでくれます。



ドリンクの配膳が一段落したところで、この日の調理を担当されるピッツァイォーロ(ピッツァ職人)のパウロ グァンゾン氏よりコースの説明と、お料理に用いるお野菜のプレゼンテーション。
否が応でも、コースへの期待が高まります!

◯ 蕪のロースト




スターターは蕪のロースト。
お皿の底部には蕪の葉のペーストが敷いてあり、その上にローストした蕪とフレッシュな赤蕪のスライス、蕪のポタージュ。
更に、シュレッドチーズが添えられています。



蕪は丹念にローストされており、とても柔らか。
かつ、根菜ならではの歯触りを残した素晴らしい火通しです。
フレッシュの赤蕪が齎すサクサク感が両者のコントラストを生じています。

ポタージュからも蕪の旨みがしっかりと主張してきます。
葉のペーストと合わせ、蕪という食材の持つ魅力を様々な角度から表現していますね。



横に添えられたシュレッドチーズはピアーヴェチーズ。
以前にD.O.P.(原産地名称保護制度)を調べた際に朧げながら名前を見た記憶がありますが、実際に頂くのは初めてです。

アミノ酸のザラザラをそこまで感じませんでしたので、これは熟成が半年未満のメッツァーノかしら?
シュレッドの状態でもしっかりと感じられる、旨みと脂気の主張。
あっさりと仕上げた蕪のローストにコクとパンチを加えられる、良い相棒です。



蕪という素材の良さを活かした、素晴らしいひと皿。
いや美味しいなあと感心しているところに、ピッツァ ビアンカの配膳。

「蕪のポタージュを掬って、ソースとして食べてみて下さい」

あ! そういう趣向!?
感心している間に、もう二の矢が来ちゃった!!



38thさんのピッツァは、もっさんの知る限りではここでしか食べられない、かなり独特なものです。
が、その点に触れると長くなりますので、今回は割愛します。
簡単に言うと、ローマ風ピッツァのひとつである「ピッツァ アラ パーラ」とナポリピッツァのミックスですね。

生地は硬めに焼き切っており、サクサクとクリスピーな軽い食感。
塩味は抑えめで、後味にふうっとオリーブオイルが香ります。



ピッツァそのものにはソースが塗られていませんので、長野県産の生ハムの塩気や、蕪のポタージュが活躍。
蕪のローストとピッツァ ビアンカ。
それぞれ単品でも、また両者を合わせても完成度が凄く高い!
この先のコースへの期待を否が応でも高めてくれる、素晴らしいスターターです。
マリナーラ
◯ ブファラ

2品目からはいよいよピッツァが登場。
ド定番のマリナーラとマルゲリータです。




さあピッツァが焼き上がりました。
パウロシェフとセコンドに付かれたロレンツォ氏が、各席を回っての撮影タイム。



その後、ワンカットずつをお皿に盛り付けての配膳です。
高級リストランテならではの間の取り方が、即ち高級感の演出にも繋がっています。



マリナーラはアンチョビをトッピングしたマリナーラ コン アッチューゲ。
トマトソースと共に、カットトマトもたっぷりとトッピング。
トマトの甘みとアンチョビの塩気に、青森県産ニンニクのパンチが程よく効いており、シンプルかつ奥深い味わいです。



後乗せしたフレッシュマジョラムの爽やかさが、食べ手を飽きさせません。
ひと切れと言わず、1枚丸ごと食わせてくれ!!!



マルゲリータは水牛のモッツァレラチーズを使ったマルゲリータ コン ブファラ。



水牛モッツァレラは半量をトマトソースと共に焼き上げ、半量を後乗せトッピング。
グリルドチーズとフレッシュチーズの両方の良さを味わえる、もっさんが大好きな手法です。

この水牛モッツァレラは千葉県木更津市のクルックフィールズ製。
毎朝フレッシュなものが届くそうです。
水牛モッツァレラならではの、甘みと香りの主張が実に顕著!
同じく後乗せしたフレッシュバジルの香りとの相性も抜群。
ひと切れ(
ピッツィーノ



38thさんの、ひいては同店のプリモピッツァイォーロでありマンダリン オリエンタル 東京さんのエグゼクティブシェフであるダニエレ カーソン氏のスペシャリテ。
2枚の生地でマスカルポーネチーズ、刻んだブラックオリーブをサンドした珍しい形状のピッツァです。

原典のピッツァ アラ パーラをテイクアウトする際には、このようにトッピングを内側、生地を外側にして重ねる事があると聞いております。
その点では、ローマ出身のカーソンシェフによる、ローマスタイルピッツァへのリスペクトが現れているように思います。



ピッツァ生地は窯にて2度焼きし、パキパキに水分を飛ばしています。
エアリーかつザクザクな食感は、「栃尾の油揚げ」を想起させるものでした。



ピッツァの上部には黒トリュフをこんもりと削り掛け、その脇には二十日わけぎを配しています。

くう〜〜〜ッ!
トリュフがキマるッ!!
香りが口腔から鼻腔へ立ち上がってくるかのようです。



そのトリュフやブラックオリーブ、チーズの濃厚さ・我の強さを、わけぎの爽やかさが良い塩梅にニュートラライズ。
思わず唸る程に練られた、「和伊折衷」のデザイン。
いや、これはお見事にございまする。

◯ カリフラワーとカステルマーニョ
◯ 人参と鴨肉のサルシッチャ





ピッツァの3ラウンド目は「季節のピッツァ」。
これまた、他所では中々にお目に掛かれない構成のピッツァが出て参ります。



1枚目はピッツァ生地にソースを塗らないタイプのピッツァ ビアンカ。
合わせる具材はローストしたカリフラワーにカステルマーニョチーズ。
焼きあげ後に、なんと生雲丹をトッピング。
ピッツェリアのキッチンで箱雲丹!



カステルマーニョチーズもD.O.P.を取得している銘柄です。
青カビを纏わせて熟成を行う為か、味わいにはやはり個性が出ています。
食材そのものに塩気があるもの同士、雲丹との相性はとても良好。
カリフラワーの甘みとマヨネーズの酸味が、曲者同士を一体化しています。



2枚目はサルシッチャを使ったチーズソースのピッツァ。
サルシッチャは平たく言うと、自家製のソーセージですね。
ラーメン屋さんに於けるチャーシュー的なポジションですから、各ピッツェリアが其々に工夫を凝らして自作しています。

が!
流石に京鴨を用いたサルシッチャは、初めて頂きましたね!
鴨肉の旨みと油気を活かし、スパイスが上手い事クセを消し去っています。

もう片方の主役、人参は3種を使用。
そのうち1種、カラフル人参はフレッシュなスライスを後乗せでトッピング。
シャキッとした歯触りが、サルシッチャの柔らかさとコントラストを生じています。



このピッツァ最大の勘所はチーズの使い方。
誤解を恐れずに言うなれば、京鴨サルシッチャがピッツァのトッピングとしては旨過ぎるのです。
故にモッツァレラと人参だけではサルシッチャの味わいが突出し、バランスが崩れてしまうでしょう。

そこで、チェダーチーズを後乗せトッピング!
モッツァレラへ旨みの強いチェダーを合わせて挟み撃ちにする事で「サルシッチャ旨過ぎ問題」を、味わいのバランスを崩す事なく解決に導いています。

どちらのピッツァも、高級ホテルの高級リストランテならばという具材を用いていますが、果たして美味しいピッツァが作れるかと言えば、それはピッツァイォーロたるものの業前次第。
優れたデザイン、優れた技量から産み出された、ハイクオリティなピッツァです。
◯ 6 フォルマッジ




ピッツァのラストは6種のチーズを使ったセイ フォルマッジ。
フィオル ディ ラッテ(牛乳のモッツァレラ)・ゴルゴンゾーラ・タレッジオ・パルミジャーノ レッジャーノの定番4種に、プロヴォローネとスカモルツァを加えています。



スカモルツァはアフミカータだと思うのですが、そこまで燻香は感じませんでした。
正直、4種チーズが5種や6種に増えても、言われなければ分かりません(笑)。



添えられた蜂蜜はイタリア産と国産をブレンドし、細かく刻んだトリュフを漬け込んだトリュフハニー。
単体ではやや塩気が先行しがちなピッツァの味わいをまろやかにし、また広がりも齎しています。



クアトロ フォルマッジらのチーズピッツァ、特にゴルゴンゾーラを使ったピッツァに蜂蜜を付ける食べ方は、本場ではやらない日本独自のものです。
ローマ人であるカーソンシェフによる「日本向けアレンジ」であり、海外からのゲストに対する「ジャパニーズスタイル ピッツァ」の提案でもありますね。
ちな、今日のランチタイム1巡目8席のうち、日本人はもっさんだけでした。


ドルチェの用意をしている間に、ちょっとしたお遊びタイム。
各人の前に、小さく切り出したピッツァ生地が置かれます。

もっさんは過去に1度体験させて頂きましたが、焼成前のピッツァ生地に触れる機会など然う然うにはありません。
かつ、38thさんの生地は水分量が多い為、手触りがふわふわととても柔らかです。
その生地を各自にて成形。
チーズ or トマトソースを掛けて焼いて貰えます。




改めて、プレーンな状態の生地を味見出来ますし、ピッツァの成形が如何に難しいことであるかも身をもって味わえます(笑)。

このタイミングでダニエレ カーソン氏が様子見に登場。
もっさんもふた言み言ですが、お話をさせて頂きました。

◯ アフォガート



コースはドルチェのアフォガートで〆。
ヴァニラアイスクリームに38thさんのロゴが入ったチョコレートを乗せ、熱々のエスプレッソで溶かすパフォーマンス。

希望者にはディサローノ ヴェルヴェットを足した大人向けにも変更出来ました。
うむ、おいちい。



食後にはお土産に焼き菓子を頂いて、おまかせコースが終了。









日本で食べられるイタリアンピッツァはナポリピッツァの勢力が大多数であり、ローマピッツァやミラノピッツァは少数派。
その中でローマ+ナポリのミクスチャを提供するピッツェリアは、極々珍しいと言えましょう。
為に、ピッツァファンには是非ともおススメしたいお店です。
どえりゃあ高い予約のハードルに挑むだけの価値は、確実にあります。
ご馳走様でした。