旅行者血栓症 誰もがなると自覚して
夏休みシーズンを迎え、海外に出かける人が増える時期だ。
注意しなくてはならないのは、エコノミークラス症候群である。旅行者血栓症、ロングフライト血栓症ともいう。長い時間、同じ姿勢で座り続けることなどで、足や腕がうっ血して静脈に血栓ができやすくなる。
その血栓が血管の中を移動していき、肺や脳に入ると梗塞(こうそく)を起こす可能性が高まる。最悪の場合、死亡することもある。
成田空港に到着する人のうち、エコノミークラス症候群が原因で死亡した人は、この15年間で30人に上ることが分かった。重症者は116人だった。
日本医科大成田国際空港クリニックが、1992年の開設からことし3月までに受診した計23万人を対象に調査した結果だ。軽症者だけでも年間200人に上る。決して少ない数字ではない。十分に注意したい。
エコノミークラス症候群は、発症の仕組みと、対応策を知っていれば、予防は可能である。
まず、うっ血状態にならないために機内では足踏みなどの軽い運動をすることが必要だ。飛行高度が1万メートルになると、気圧や湿度の関係から10時間で約1リットルの水分が体から失われ、脱水症状に近くなることもリスクを高める。小まめな水分補給を心掛けたい。
同クリニックの調査によると、発症者の飛行時間は平均約11時間、飛行距離は平均約9000キロだった。欧米やオーストラリアなど、飛行距離が1万キロ程度になると急増する傾向があるという。
旅行直後に症状がなくても、1カ月間は警戒が必要だ。
世界保健機関(WHO)も、4時間以上のフライトで血栓ができる可能性が通常の2倍になると、注意を呼び掛けている。
症例は1970年代から報告されていたものの、注目され始めたのは近年になってからだ。日本では2002年にサッカー元日本代表の高原直泰選手が発症し、広く知られるようになった。
航空各社も機内で飲料水を配ったり、体操の映像を流したり、対策を取り始めている。予防に効果があるとされるストッキングなども販売されている。
エコノミークラス症候群は、予防法が確立しつつあるとはいっても、医学的には未解明な面も多い。飛行機だけでなく、車や家の中でもあまり動かないでいると発症する人もいる。性別や年齢に関係なく、誰にでも起こるという自覚をもつことが大切だ。
出典:信濃毎日新聞