ジョナサン・クック著 2023年11月2日

https://www.jonathan-cook.net/blog/2023-11-02/bbc-october-7/

あの日についてのイスラエル軍の説明を、
メディアがいまだに鵜呑みにして
繰り返しているのは、ジャーナリズムとして失格だ

BBCのルーシー・ウィリアムソンは今週もまた、
10月7日に攻撃されたガザ郊外の
キブツ・コミュニティーの
ひどい破壊を見に行った。
これまで何度も見てきたように、
イスラエルの家々は屋内外から自動砲火を浴びていた。

コンクリート壁の一部には穴が開いていたり、
完全に崩壊していたりした。
まだ建っていた建物の一部は深く焦げていた。
それは、現在のガザの惨状の
小さなスナップショットのようだった。

イスラエルメディアを含むさまざまな情報源から
証拠が得られているにもかかわらず、
BBCが報道しないのには理由がある。
その代わりにBBCは、
イスラエル軍と他の西側メディアによって
作られたシナリオに断固として固執している。

その物語を何の注意書きもなしに繰り返すことは、
もはやジャーナリズムの
悪行というレベルに達している。
それなのに、BBCは毎夜それを繰り返している。

その日攻撃された
さまざまなキブツ・コミュニティの残骸を
ざっと見ただけで、
どんな優秀な記者でも疑問を抱くはずだ。

パレスチナの武装勢力は、
彼らが携帯していたような軽火器で、
あの程度の物理的損害を
実際に与えることができる立場にあったのだろうか?


そうでないとすれば、
イスラエル以外に誰がそのような
大惨事を引き起こす立場にあったのか?

善良なジャーナリストが問うべき
別の質問はこうだ:
このような被害の目的は何だったのか?
パレスチナ人武装勢力は
それによって何を達成したかったのか?

メディアが暗黙のうちに与えている答えは、
イスラエル軍が西側諸国の国民に
聞かせたい答えでもある。

ハマスが無償の殺戮と残虐行為の
乱痴気騒ぎを行ったのは、
......そう、隠された部分を大きな声で言おう。

それを暗黙のシナリオとして、
西側の政治家たちは、
イスラエルがガザでパレスチナの子どもを
数分おきに殺害するのを
応援する許可を手渡された。
結局のところ、野蛮人は野蛮人の言葉しか
理解できないのだ。



  残忍なタンゴ


このような理由からだけでも、
ガザで繰り広げられている
大量虐殺に加担することを
避けたいと願うジャーナリストは、
10月7日に起こったことについて
イスラエル軍の主張をただ繰り返すことに、
ますます警戒心を強めるべきだ。

確かに、BBCが明らかにそうしているように、
イスラエル国防総省報道部の
最新の宣伝文句を鵜呑みにしてはならない。


(40人ほどは2歳から10歳)


(実際は、4歳から9歳が7人)


イスラエル・メディアや
イスラエルの目撃者たちから得られた
証拠の数々からわかっていることは、
たとえばマックス・ブルメンタールの
この報告書のように、
イスラエル軍はその日の出来事に
完全に目を奪われていたということだ。

戦車や攻撃ヘリを含む重砲が
ハマスに対処するために招集された。
それは、ハマスが制圧した
軍事基地に関する素直な判断だったようだ。

イスラエルには、
イスラエル兵が捕虜になるのを防ぐという
長年の方針がある。
主に、イスラエル社会が兵士を
確実に帰還させるために
高い代償を払うことにこだわるからだ。

何十年もの間、
軍のいわゆる "ハンニバル手順 "は、
イスラエル軍兵士が
捕虜になるのを許す代わりに、
仲間の兵士を殺すよう指示してきた。
同じ理由から、
ハマスも兵士を拉致する
革新的な方法を見つけることに
多大なエネルギーを費やしている。

両者は本質的に、
それぞれが相手のダンスの動きを理解する
残酷なタンゴを交わしている。

イスラエルが支配するガザの強制収容所を
事実上管理しているハマスの状況を考えると、
利用できる抵抗戦略は限られている。
イスラエル兵を捕らえれば、
その影響力は最大になる。

彼らは、国際法に違反して 
イスラエル国内の刑務所に収容されている
数千人のパレスチナ人政治犯の多くを
釈放することと交換できる。
さらに、ハマス側は通常、交渉の中で、
イスラエルによる16年間の
ガザ包囲の緩和を勝ち取ることを望んでいる。

このシナリオを回避するため、
イスラエル軍司令官は10月7日、
ハマスが制圧した軍事基地に
攻撃ヘリコプターを呼び寄せたと報じられている。
ヘリは、まだ生存していた基地内の
イスラエル兵に危険が及ぶにもかかわらず、
無差別に発砲したようだ。


イスラエルは、ハマスの目的達成を
阻止するための焦土政策だった。
それが、その日殺された1,300人のうち
イスラエル兵の割合が非常に
多いことの一因かもしれない。

  黒焦げの遺体


しかし、キブツ集落の状況はどうだったのか。 
軍が到着し、配置についたときには、
ハマスが十分に潜伏していた。
ハマスが住民を人質として
家の中に連れ込んでいたのだ。
イスラエルの目撃証言や
メディアの報道によれば、
ハマスがイスラエルの民間人を人間の盾にして、
ガザに戻る安全な通路を
交渉しようとしていたのはほぼ間違いない。

民間人はハマスの戦闘員にとって
唯一の脱出チケットであり、
パレスチナ人囚人を解放するための
交渉の切り札になる可能性があった。



イスラエル・メディアの報道と目撃者、
そして事件現場そのものから得られた
多くの視覚的手がかりから得られた証拠は、
毎晩BBCで紹介されるものよりも
はるかに複雑なストーリーを物語っている。

イスラエル軍は、
自国の軍事基地に発砲したのと同じやり方で、
中にいるイスラエル人の安全を無視して、
ハマスが支配する民家に発砲したのだろうか?

いずれの場合も、
イスラエルから非常に高い代償を払ってでも
解放しなければならない
ハマスの人質奪取を何としても
阻止することが目的だったのだろうか?

キブツ・ベエリは、
ハマスの蛮行を説明することに熱心なBBCの
レポーターたちが好んで訪れる場所である。

今週もルーシー・ウィリアムソンが
向かった場所である。
しかし、キブツの
セキュリティ・コーディネーターである
トゥヴァル・エスカパイスラエルの
『Haaretz』(ハアレツ)紙に寄せたコメントには、
彼女の報道はまったく触れていない。

彼によれば、イスラエル軍の司令官は
「人質とともにテロリストを排除するために、
居住している家屋に砲撃を加える」
ことを命じたという。

これは、近くのノヴァ音楽祭から
ベエリに避難したヤスミン・ポラトの
証言と同じである。



彼女はイスラエル・ラジオに、
イスラエルの特殊部隊が到着すると、こう語った
「彼らは人質を含めて全員を排除した。」

ウィリアムソンが提示した
黒焦げの遺体の画像は、
その生々しく動揺させる性質の
警告を伴ったものであり、
ハマスが最も歪んだ復讐に燃える
怪物のように振る舞ったことの
動かぬ証拠なのだろうか?

それとも、あの黒焦げの遺体は、
イスラエルの民間人とハマスの戦闘員が、
イスラエル軍の家屋への砲撃によって
引き起こされた炎に包まれた後、
互いに並んで焼かれた証拠なのだろうか?

イスラエルは
独立した調査に同意しないだろうから、
決定的な答えが出ることはないだろう。
しかし、だからといって、
メディアは慎重であるべきという
専門的かつ道徳的な義務を免れることはできない。

  野蛮人としてのハマス


10月7日の出来事に対する
西側メディアの扱いと、
10月17日にガザ北部の
アル・アハリ・バプテスト病院の
駐車場が空爆され、
数百人のパレスチナ人が死亡したと
報じられた事件に対するメディアの扱いが、
まったく対照的であることを少し考えてみよう。



アル・アハリの場合、
病院がイスラエル軍の空爆を受けたという
証拠について、
イスラエルが反論した途端、
メディアはそれをなかったことにしようとした。

代わりにジャーナリストたちは、
パレスチナのロケット弾が病院に落下したという
イスラエルの反論を大急ぎで報道した。


(イスラエル側は関係の無い動画を証拠とした)

(時間が合わない事を指摘される)


ほとんどのメディアは、
「真実は明らかにならないかもしれない」、
あるいは信憑性に欠けるが、
パレスチナの過激派が犯人である
可能性が高いと結論づけた後、
次の段階に進んだ。

これとは対照的に、
西側メディアは10月7日に
何が起こったのかについて、
ひとつの疑問さえ
投げかけようとはしなかった。
彼らは、あの日のあらゆる恐怖を
ハマスのせいだと熱狂的に決めつけている。



彼らは、何時間も続いた完全な混乱と、
イスラエル軍による稚拙で、絶望的で、
道徳的に疑わしい意思決定の可能性という
現実を無視してきた。

実際、メディアはもっと先を行っている。
「ハマスが野蛮人である」という物語を
推進するために、
「ハマスが40人の赤ん坊の首をはねた」
というような明らかな虚構を宣伝した。
このフェイクニュースは、
ジョー・バイデン米大統領によって
一時的に取り上げられたが、
その後、彼の関係者たちによって
静かに撤回された。




同様に、「ハマスがレイプを行った」
というのは、西側の論壇では
いまだによく使われる捨て台詞である。

はっきりさせておきたい。
もしイスラエルがこれらの主張の
どちらかに重大な証拠を持っているなら、
積極的にそれを宣伝しているはずだ。

そうではなく、次善の策を講じているのだ。
風説を聴衆の潜在意識にそっと沈め、
尋問されることのない偏見として
そこに定着させるのである。

ハマスが10月7日に
戦争犯罪を犯したのは間違いない。
しかし、この種の犯罪は
私たちがよく知っているものであり、
イスラエル軍も定期的に
行っていることが記録されているほど
「普通の」犯罪である。

イスラエル軍兵士がパレスチナ人を
人間の盾にする行為は、
「近隣住民手続き」や「早期警告手続き」
など、さまざまな名称で呼ばれている。

特にハマスがガザからの脱走に
予想外の規模で成功したことを考えれば、
もっとひどい残虐行為も起きていたかもしれない。

大勢のパレスチナ人が飛び地から脱出し、
その中には作戦とは無関係の
武装した市民もいたに違いない。

そのような状況下で、見出しを飾るような残虐行為が
行われる例がなかったとしたら、
それは驚くべきことだろう。

問題は、イスラエルが主張し、
西側メディアが繰り返すように、
そうした残虐行為が計画的かつ
組織的なものなのか、
それとも個人や集団による
不正行為の一例なのかということだ。

後者であれば、
イスラエルは判断する立場にない。
イスラエル軍の部隊が、
1949年にベドウィンの少女を捕虜にし、
集団レイプを繰り返したという記録もある。

残忍さはハマスだけの特徴ではないだろう。
10月7日の攻撃後、生死にかかわらず、
捕らえられたハマスの戦闘員に対する
組織的虐待の映像が次々と出てきている。



その映像は、野次馬を喜ばせるために、
公衆の面前で殴打され、
拷問されていることを示している。

また、ハマス戦闘員の遺体が汚され、
切り刻まれている様子も映っている。

ここで道徳的優位を
主張することはできない。

イスラエルの「ハマス=野蛮人」という
物語をメディアが無批判に宣伝した結果、
西欧の長い植民地支配の歴史に
あまりにも馴染み深い、
不吉なことが起こった。

それは、ある民族全体を悪者扱いし、
彼らを野蛮人として、
あるいは野蛮な行為を進んで擁護し、
助長する存在として
提示するために使われてきたのだ。



イスラエルは、
ガザでの残虐行為を正当化するために、
「野蛮人」という物語を武器にしている。
だからこそ、ジャーナリストは
鵜呑みにしないことが重要なのだ。
あまりに多くのことが危険にさらされているのだ。



ハマスが10月7日に犯した戦争犯罪は、
パレスチナのどのグループにとっても
前例のない規模のものだった。

しかし、ハマスの行為に
比類なき堕落があったことを示唆するのは、
これまでのところイスラエルの叙述的な
スピンにすぎない。

確かに、われわれが知っている限りでは、
ハマスがその日に行ったことが、
イスラエルが数週間にわたって
ガザで毎日行ってきたことよりもひどい、
あるいは残忍なものだったとは考えにくい。

パレスチナの家族を爆撃し、
食糧と水を飢餓に陥れるイスラエルの行動は、
西側の主要な政治家たちから祝福されている。



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(11月1日)