母を駅まで見送った


歩くうしろ姿に目をやると


また腰が曲がってひとまわり小さくなったような


やせて筋ばった腕や首もとはなんだか痛々しくてずっと見てられない




父とあえば決まって喧嘩


もう半世紀近くもたつのに懲りない


エネルギーのすべてをそこに使い果たし


風呂もはいらずごはんもたべず家にひきこもる


こんな歳になってまでなんで苦労しなきゃならないのかと思うといたたまれない


今さらもう変われないんだろうな


夫婦とはそういうものなんだろな


それでも父にこそっと隠れて電話する




しっかりしてよ 大丈夫だよね?


あんなにやせちゃって具合わるくなるかもね


たのんだからねと念押しする


わたしができることを精一杯やる


そんなちっちゃいことを積み重ねたいと思うようになった


変わらないのをわかってても一瞬でも心のかたすみに残ることを願って





駅の改札でsuicaを使う母のドヤ顔


見えなくなるまで何度もふりかえっては手をふっている


それほど遠く離れてないのにまた会えるのに 


駅はなんでこんなさみしくなるんだろう



ホームで泣いている母の涙がつたってくる