先日、万座温泉スキー場に行ってきた。


宿に着いた日は温泉三昧で過ごすつもりが、楽しみにしていた高原ホテルの温泉は学生貸し切りで使えないという。ずいぶん前から予約していたのに、なんとアンラッキーな。


ホームページを直前までチェックしていたけど、この日は高原ホテルの温泉は使えませんとは載ってなかったなあ。

宿泊一週間前くらいに電話確認をすればよかった。


最初はガッカリしていたけど、その宿の温泉だけでも素晴らしいので、なんだか、皮膚が硫黄泉で溶けたかな、というほどに何度も温泉に入った。


24時間入れるのがよい。


夜中、誰もいない露天風呂で、流れ行く雲の切れ目から現れては煌煌と輝く月を見た。


雪がとめどなく顔に落ちてくる。


分厚い雪雲が風で動き、ときおりオリオン座がキラキラと輝くのが見えた。


昼間見た景色が雪の布団に覆われてこんもりとしたシルエットになっていた。


白い山、白い湯けむり、白いお湯。


標高1800メートルの風景は白の陰影の水墨画のような世界だった。


この温泉はなかなかたどり着けない難所の先にある秘湯として、古くから大切にされていたらしい。


そうだろうなあ。このものすごく寒い白い世界の中、熱い温泉は自然の最高のプレゼントだ。


さて、朝起きると、え?とビックリするほどの猛吹雪。


風がビュービューいってる。


外の気温はマイナス13度である。


今回は、スキーウエアの下の装備が完璧である。


アンダーアーマーのコールドギア上下をスキーインナーとして着用し、その上にヒートテックとダウンベスト、そしてフリースを着込み、母の編んでくれたネックウォーマーで首を完全にガードした。


手袋は一昨年に買ったPhenixのスキー手袋。


靴下は、スポーツ用の靴下の上に分厚いスキー用の靴下を履いた。


顔当てをしてヘルメットを装着。


肌が出ている箇所が一つもない。

この装備のお陰で、ぜんぜん寒くなかった。


しかし、ゴープロが起動しない。


あまりの寒さに凍っている。

こんなことは初めてだった。

寒いとゴープロって使えないんだ、、、。


後で調べると、耐寒性のあるエンデューロバッテリーを使った最新のゴープロならある程度の寒さでも使用できるらしい。


トップシーズンの猛吹雪の万座温泉スキー場は、雪に閉ざされた神話のような世界だったから、撮影できなくて残念。


樹氷が凍って枝サンゴのようになっている。雪を被った木々はクリスマスツリーのよう。


雪に音が吸い込まれているようにシン、としている。


吹雪いているので、人の姿が見えない。というより、人の気配がない。

先を行く相棒の姿も、あっという間に雪の向こうに消えてゆく。


新雪は膝上くらいまでの厚さに積もっていて足を取られて転んだ。


ヘッドスライディングのように頭から雪に埋もれたので、我ながら面白い格好だと思いながらしばらくじっとして身体の無事を確認した。


起きようとするが、動かした場所からズブズブと雪に潜ってゆく。

綿あめのように掴みどころがなく、なかなか起きあがれない。


そして、誰も来ない。


もがくのを諦めて少しじっとしていると、ふかふかの雪がお布団みたいで気持ちがよかった。


そのあと、なんとか起き上がったが、少し足を捻ったようだった。

久しぶりに、ヘルメットをしていて良かったなあ、と思った。


なるほど、トップシーズンとはこういうものか、と洗礼を受けた気持ちになった。


今でも、目を瞑ると顔にとめどなく吹き付けてくる雪が見えるようだ。


圧倒的な白い世界だった。