単語の綴りもあやふや、まして文法なんて、なんですが
オフィスで従業員入り口でいつものようにサインをしてオフィスに入ろうとした。でも様子が変だった。サイン帳の前にふたりの女性が立っていて、なにやら警備員ともめているようである。
いつものように「お早う」と挨拶をしたつもりだった。ところが女性のひとりが「Habla Espanol(スペイン語できますか)」と訊ねてきて、「Un poco(ちょっとだけね)」と軽く返事をしたところから、いきなりダダ~っと話しかけられて、僕は往生したのである。
びっくりして警備のお爺さんと確認をしながらコミュニケーションをとってみる。うろ覚えのスペイン語でもの凄く適当なんだけど、最初に声をかけてきた彼女と会話を試みる。もうひとりの女性は小さな子供を抱えて微笑むばかりだった。
筆記を加えながらなんとか分かったのは、以下のことであった。
彼女たちは会社の臨時派遣従業員募集のアプリケーションを届けにきた。それは警備室に提出したのだが、もらえると思っていた書類がでてこない。警備員の説明では、採用をされたら会社から彼女たちに電話をして、書類を渡すのはそれからだ、ということ。僕はそれを拙いスペイン語で伝えようとする。
「Apres, llaman… ustedes… y… recibo…el documento」
会話というレベルではない。思いついた単語を連発するだけである。僕は「アトでね、デンワがあるから、アナタたちにね、それから、ショルイがもらえます」とかなんとか言ったつもり。昨年12月以降テキストに触れていないスペイン語の知識は、CPA勉強で覚えた内容(こちらもすごく頼りないんだけど)に埋もれて溶けかかっている。それでも気持ちは通じたらしく、今度は彼女がペンで文字をいれはじめた。
あのそれ、出入時間管理表なんですけど…
彼女の記したW2という文字。IRS(米国の税務民間代理局)に提出する所得申告のことなのか。W2フォームは働いて収入を得た後でないと発行されない。就職申し込みを提出した段階でもらえるわけがないのだ。
もう僕のチカラでは限界だった。「D(通訳係りの派遣オフィス員)はオフィスにいないのか」と警備のお爺さんに尋ねても彼は首をふるばかり。仕方がないので僕はオフィスにはいることにした。
「Experame, por favor,,, Aqui」
ここで待っててくださいね、と伝えた積もりの僕。なんとか通じたみたいだ。
正目のオフィスの受付にいくとAが座っていた。事情を話して助けを求める。Aは、Dは子供を病院に連れて行くので遅刻をすると言った。でもAもスペイン語はできるんだ。受付を離れるわけにはいかないという彼女に内線で警備室に電話をかけてもらい、説明をしてもらうことにした。
やり放しは信条ではない(その割にはいろいろ放しっぱなしだけどな)。従業員入り口に戻った。W2が欲しかった彼女は、電話で説明を受けているところだった。
「任せて去るのは悪いから戻ってきたよ」と警備員に僕は言った。「俺のスペイン語じゃ通じないよ」
「わしのスペイン語もあんまりよくないからな」とお爺さん。
あなた、英語しか喋っていなかったじゃないですか。
Aの説明で納得をした彼女たち。オフィスを去っていった。
スペイン語を身につけたいと書いた途端のこのできごと。
書くことによるジンクスがあるのかな。
だったら、僕は宝くじに当たりたい。
アトランタで発売のメガミリオン
の現在賞金額は8,600万ドルですからね。当選したら仕事を離れてCPAの勉強に専念できます(他にもいろいろできる気はするが)。
でも、こういう願いというのは現実になりませんね。