「私はお前」
「私はお前なんだよ」
後にも先にも、あの人(人だったんだろうか?)が言ったのはそれだけだった。
青黒い光を鈍く放ちながら、ものすごいパワーで苦しいくらい私を締め付けた。
呼吸が苦しくなるくらい。
ブラックホールに一番イメージが近いかな。
何の感情も感じられない、考えも読み取れない、ただ純粋な「力」だった。
別に、「私」という部屋から外に出ることを、誘えば拒むこともなく、外の存在を知らないので興味も示さず、ただ、闇の中にたたずんでいた「力」。
手を引いてドアの外に出た時に見えた「力」は、私とそっくりだった。
その顔に表情はなく、目もうつろだ。
階段を上がったところに広がる草原に出ても、何も言わない。
木偶の坊のように佇んでいる。
光を見せたいと思った。
空が明るくなると、もう一人の私は眩しそうに目を細めた。
鳥がさえずりながら空を横切ると、そちらに顔を向けた。表情が生まれた。
彼女はだんだん私になっていった。
手をつないだまま、草原を、空を、風を二人で感じた。
彼女は私と全く同じように感じていた。
階段を下りて部屋に戻るように指示されたので、さっきとは打って変わって簡単に降りられるようになった階段を軽快に二人で下りていく。
二人とも部屋には戻りたいとは思わなかった。
戻ってもいいと思える部屋に作り替えるように指示が出た。
なかなかうまくいかなくて、「まあこれでいいや」と思ったところでやめて、彼女を部屋に促した。
言葉にこそしないが、彼女は明らかに「好きじゃない」と即答。
ドアの向こうも階段の上と同じ草原にしたら、ふたりとも居心地が良くなった。
彼女に話しかけるように指示が出たのに、話せなかった。
だって、彼女は私の中に取り込まれてしまったのだ。
まるで、同じ絵を重ね合わせるように。
私の色が濃くなる。
力がみなぎる。
みぞおちの辺りから、力があふれ出る。
彼女が言ったとおり、彼女は私だったのだ。
私がまだとりこんでいなかった、私の「力」。
不完全だった私が必要としていた「私」なのだ。
私はこの瞬間を待ち望んでいたのだろうか?
今の段階では、まだよくわからない。
これが私の問題の解決につながるのだろうか?
「力」には感情がない。「勇気」とは違う。
私が感じた通りに、感じるらしい。
私次第なのだ。
いったい、何の力なんだろう?
力がみなぎった感覚はあるのだけど・・・
階段の入り口が見つかったら
今まで、自信をつけるために、必死で頑張ってきた。
自信がないから、自信をつけるために、色んなことに頑張ってこれたんだと思う。
これができたら、これになったら、私は自信を持てるようになるかもしれない。
その結果、本当に達成感を感じたことはあっただろうか。
外から見ていると、色んなことをこなし、色んなことを身につけてきた。
自信がない、と言ったところで、たいてい信じてもらえず、一時的な弱気モードだと思われていた。
常に、自信はなかったのだ。
それがわかる人がいた。
私は、その人を結婚相手に選ばなかったことを、これまでに何度後悔したことか。
何度、今の彼と別れようと思ったことか。
なぜ、今の彼を選んだのか、いつになっても私にはわからなかった。
だって、彼は私がどうこう言ったところで、私が理解できないので変わりようがない人だったのだ。
私はいったい何を、この人に望んだんだろう。
なぜ私は、あの人の手を離してしまったのか。
何度も悔やんだ。
そして昨日、やっとわかったのだ。
私は理由もわからないこの自信のなさを、何とかしたかったから、この人を選んだのだ。
わかってしまうと、なーんだっって感じなのだが、これがわかるまで私はずーっと同じところをぐるぐる回り続け、あさっての方向に向かって周りを見ることなく走り続けていたのだ。
だから見つからなかった。
いや、回り続けたからこそ、ふっと力が抜けてすぐそばにある階段の入り口に気がつけたのか。
やっと見つけた。
私の、階段。
泣いたおかげで顔は腫れ上がっているけど、久々に清々しい朝を迎えられた。
物足りなさを感じる理由
周りに、彼にさえ物足りなさを感じるのは、
誰も私の自信のなさを分かってくれないからだ。
誰も上手くやっている、時には完ぺきにさえやっている私が、どうして自信がないのか、わからないのだ。
そして困ったことに、私自身も分からない。
コントロールができなくてくて困っている。
それでも感じてしまうものを、やり過ごすのはなかなか難しい。
こういうのって、いったいどうすればいいのだろう?
自己開発とかそういうのとは全然違うんだよなー。
ただ一言「ありがとう、助かったよ」だけで私の自信は救われるのに、それが得られない時の私の動揺は、自分でもびっくりするほどだ。
自分のやったことは何だったのか、無意味だったのか、それとも価値がなかったのか、
果てしなく相手を問いただしたくなるが、結局自分はまだまだ足りないのだという自信をさらに失う形で終わる。
しょーもないことに、懲りずに同じことを繰り返すのだ。
そして、何故か相手が全くの別人であったとしても、皆私がやったことは私が自信を持ってやったことだと思い、結構軽い気持ちで受け取るのだ。
私、、、、自信たっぷりに見えるのだろうか?
こんなにびびって、
こんなに必死に、
こんなに頑張っているのに。
私もいい加減懲りりて、やめちまえばいいのに。
私は・・・今の私は本当に不毛だ。