BLANCPAIN Leman Flyback Chronograph Limited Edition

Ref. N212FO01130AA / Cal. F185

世界限定200本

 

世界最古の時計メーカー・ブランパン

 

ブランパンは、1735年に創業された世界最古の時計メーカーとされる。

 

その件に関し、時計好きで知られるあの山田五郎氏の著作の中で、栗崎というブランド論の本質が見えない評論家もどき(?)が、「そもそも会社登記が古いだけで廉価時計メーカーであった取るに足らない時計」というような頓珍漢な発言をしているが、時計ブランドを考える時に、旧来のブランドマッピングは一度捨て去るべきだ。

 

現在スウォッチ・グループの中において、高級ブランドの一角を占める重要な位置づけにあり、「機械式ムーブメントの時計しか製造しない」宣言を行っている。

 

そんなことはどうでもいい。実際に製品を手に取ると、どのモデルも質感が非常に高いことに気づく。

 

搭載されるフレデリックピゲ製のムーブメントは、雲上ブランドでの採用例で明らかなように高精度であり、なおかつ見た目にも美しい。ローターの動きやハンドワインディングの質感に気品さえ漂う逸品なのである。

 

例によって僕が欲しいのはクロノグラフなのであったが、なかなか購入のタイミングが無いまま時計ライフを送っていた。

 

 

2カウンター・クロノグラフという選択

 

慶弔用の時計。ある程度の年齢・立場の人間が身に付ける場合、なんでもいいという訳にはいかなくなってくる。

 

よく腕時計製品のレビューなどで、「冠婚葬祭にも使えます」という表現を見かける。それがGショックや派手なスポーツウォッチであったりもするが、冠婚葬祭に不適合な時計を着用することは、己の無知をさらけ出すような愚行である。

 

「慶」の方は、フォーマルな服装(タキシードやモーニング)に合わせると考えれば、腕時計はあり得ず懐中時計ということになろう。

 

方や「弔」の方は、比較的地味目でモノトーンの腕時計が望ましいと考える。

 

象徴的なのは、2ないし3針のクロコダイル・ベルトの時計、例えるならパテックのカラトラバやギョーシェ彫りのブレゲといったところか。

 

しかし僕は、2〜3針革ベルトのドレスウォッチは好まない。もちろん過去に所有したことはある。

 

人は歳を取ると<歳相応に>、ドレスウォッチが好きになるとも言われる。クルマに関して、歳を取ると<歳相応に>地味なセダンに惹かれるという話と似ている。

 

でもそれは、人それぞれだ。年老いてなおスポーツカーしか好まない男も多いし、スポーツウォッチしか好まない男もまた存在する。少なくとも僕はそうだ。

 

2~3針のスポーツウォッチといえば、APのロイヤルオークやヴァシュロン・コンスタンタンのオーバーシーズ、パテックのノーチラス、アクアノートなどが著名であるが、いずれも派手過ぎる嫌いがある。昨今は価格も馬鹿高い。

 

そこで現実味を帯びてきたのが、上品な2カウンター(2つ目玉)のクロノグラフ購入だった。

 

2カウンターのクロノグラフに、秒針はない。そのどこか落ち着いて見えるルックスのみならず、秒を気にする必要のないシチュエーションで使用する時計というイメージから、優雅な気分にさせてくれる気がする。

 

地味目なスポーツウォッチなのである。

 

 

僕の選択・・・

 

ブランパンのクロノグラフといって想起するのは、レマン・フライバック・クロノグラフ。またレマンのダイヤルを少々複雑にし、ヨットマスターロレジウムのようなド派手なベゼルを装着したエアーコマンドが名を馳せる。フライバック以前には、NONフライバックのレマン・クロノグラフや、ドレスウォッチ寄りのヴェルレ・クロノグラフが存在した。

 

そんなブランパンのレマン・フライバック・クロノグラフに、2カウンターが存在することを知った時、どうしようもない物欲に駆られた。常々いつかはブランパンが一本欲しいと思っていた。この一本は、まさに控えめな印象で、僕の中でのブランパンの理想像でもあった。

 

これは、古えの2カウンターを現代のフライバック・クロノを使いオマージュした少量生産のシリアル入り限定生産モデル。手に入れるには、中古のレギュラーモデルのほぼ倍値135万円を請求される。ま、熟慮の上で欲しいのとなれば仕方あるまい。

 

 

外装は、スモールセコンドの廃止、スケルトン(中抜き)のハンド、3列仕上げでポリッシュ部分のないオールヘアライン仕上げのブレスレット、アラビア数字を捨て配置されたポリッシュのインデックス、大きめのJBエンブレム、そしてシースルーバックという内容が、レギュラーモデルとの大きな違いとなっている。

 

望み通りの2カウンターに、派手さを消したルックス。しかし漆黒のエナメル・ダイヤルにあしらわれたインデックスのポリッシュは、光の角度によりダイヤモンドのような輝きを放つ。

 

シースルーバックから覗くフレピゲのムーブメントを眺める至福。コラムホイールの存在。ハンドワインディングやプッシャーの感触も上品そのもの。

 

 

 

ケースは、伝説のレマン・アクアラングと同じ意匠の小径のもの。ブレスの質感が高いことも特筆すべき。いかにもいい素材のステンレスであることを感じることができる。

 

ブランパンには派手過ぎでいささかバランスの悪いモデルも存在するが、精緻な塊り感のある質感の良い時計が真骨頂なのである。