BREITLING CHRONOMAT 44 BLACK BLACK LIMITED

Ref. 3175790 / Cal. 01

AB0111 世界限定400本

 

清水の舞台から飛び降りる

 

アラフォーと呼ばれ久しい頃、ベントレー コンチネンタルGTを購入した。クルマ好きが高じ、分不相応も承知の上での決断。矮小な不動産が買える価格……。これが清水の舞台からの一回目の飛び降りであった。

 

ベントレーの醍醐味はオーダーメイド感覚にある。すなわち、外装色が20色、革の内装色が17色から1~2色を選び、その塗り分け方が6パターン。ウッドが8種類(1種類はアルミ)。さらにステッチもオプションで色替え可能なのである。これにステアリングホイールやペダル類、シフトノブ、フロアマット、アルミホイールなど好みのものを選択して自分好みの一台を作り上げる。

 

ここはこのトピックスで重要なので記すが、僕のクルマはBELUGAというソリッドのブラック外装で、内装はHOTSPAR(赤)とBELUGA(濃灰)、表革には反転させた黒と赤のステッチが入れてある。

 

そのベントレーのダッシュボードに、腕時計のような大きさ(直径約40mm)しかもベゼルの付いた時計が埋め込まれていた。

 

それがブライトリングだということは、クルマの知識で知ってはいた。しかし、一見腕時計そっくりで、腕時計同様のエンブレムまで装着されていることは知らなかった。

 

これには打ちのめされた。これではブライトリングを一本は買わざるを得ないではないか。せめてAMGが装備するIWCやキャデラックのブルガリ程度の、いかにも自動車用といった風情の時計を装着していてくれたら、こんな散財は必要なかったのに……。しかも、ブライトリングのエンブレムは、よく見なくてもベントレーのエンブレムすなわちフライング”B”にそっくりなのである。

 

<あのブライトリング>に手を出す……。小さなことだが、ニ回目の清水の舞台からの飛び降りをせざるを得なくなったのである。

 

 

 

 

メインストリームはクロノマット

 

<あのブライトリング>と書いたのは、僕が若かりし頃、時計雑誌やファッション雑誌での腕時計特集には、三大ブランドとしてロレックス/オメガ/ブライトリングが取り上げられることが多かったように記憶するからだ。あるいは現代でもそうなのか。ボーナス商戦前などにもよく目にしたものであった。

 

ロレックスはともかく、オメガとブライトリングは何となくロレックスに対し二流のイメージを持ち、またスノビズム的な要素も感じていた。ベントレーを購入しそのダッシュボードを見るまで、触手が動いたことは一度もなかったのである。

 

さていざ購入を考える時、そのメインストリームはクロノマットであって、二大ラインの一つとしてナビタイマーなるベゼルに計算尺が付いた特徴的な時計があり、航空機の計器メーカーに端を発し、クロノグラフが代表作・・・その程度の知識しか持ち合わせていなかった。

 

その後。フォー・ベントレー(For BENTLAY)というシリーズが存在することを知った。ダイヤルにもそう表記され、ケースバックには、BENTLEYのロゴや歴代名車のシェイプが刻印されたものなどがあり、ベントレーオーナーとしては大変魅力的である。しかし、いかんせん48mm以上という大型時計であり、デザインが野暮ったい。

 

大きさに目をつむりフォー・ベントレーを買うか?

やはりメインストリームのクロノマットか?

それともナビタイマー、いや安価な中古の型落ちクロノマットでもいいか?

 

半年くらいの間、ベントレーを買った時以上に逡巡させられた。

 

 

僕の選択・・・

 

結局、現行のクロノマットを買うことと決心した。これからの買い物は、「一生モノ」を視野に可能な限り新品を買うという自分の哲学を貫いたこともある。

 

また大きな選択理由の一つには、件の2000年ETA問題のあおりを受けてブライトリングが自社開発したキャリバー01を使ってみたくなったこともある。

 

2種類あるサイズ。ウブロでは41mmを選んだが、クロノマットの41mmでは押しが弱く感じたので44mmを選ぶこととする。

 

極力MYベントレーの時計に近いダイヤルのモデルが欲しいということで、ブラックダイヤルにブラックの3つ目のスモールカウンターを装備したモデルを買おうと思った。クロノマットはカタログモデルでもブレスやバンドはセミオーダーで選べるシステムを採用しており、ダイヤルのバリエーションも売りの一つのように謳っているので、当然そういうモデルもあると思っていた。

 

ところが黒ー黒ダイヤルのものというと、ベースがメーカーの推すMOP(マザー・オブ・パール)というシェル調のものや、インデックスがローマン文字の物しかラインアップに見当たらない。結局、単純な黒ー黒は、結果的に世界400本の高価な限定モデルにしか設定がなかったのである。

 

それがブラック・ブラック リミテッド。特典としてCal.01が見えるシースルーバック仕様となっている。レギュラーモデルのAUTOMATICと記された部分には、LIMITED EDITIONの文字。

 

散財に要する価格、118万8000円。

 

正直、高いと思う。

 

しかし購入してはじめて知ったことは、ポリッシュされたケースのステンレス素材のグレードの高さ、パイロットブレスの質感と装着感が非常に優れているということである。

 

例えばロレックス・デイトナとの比較では、オイスターケースの気密性は100m防水なのに対し、クロノマットは500m! 僕のブラック・ブラック・リミテッドはシースルーバックであるにもかかわらず200m!

 

十二分過ぎる高性能である。僕はとてもではないが、こんなものをはめて海に潜ったり風呂に入る趣味はないけれど。

 

またデイトナのオイスターブレスは、一世代前の5桁モデル(16520等)では非常にチープであり、クラスプも変更になった6桁モデル後期(116520等)から素晴らしいものになった。それに対しブライトリングのパイロットブレスは、現行のオイスターブレスにはひけを取るものの、5桁モデル時代のものと比べればなかなか質感に優れており、構造も凝っているのだ。

 

その他、ダイヤルの質感などは、例えば質感の高いデイトナやウブロ、ブランパンには劣る。高級時計としては極、中庸な出来映えだと思う。

 

メカの面では、Cal.01の自動巻きローターの動きは実にスムーズであり、コラムホイールを有するメカのルックスもまあまあ美しい。ハンドワインディングの感触が当初非常に悪かったが、半年くらいで少し馴染んできた気もする。ただし竜頭は引き出すのではなく、ねじ込み式でその際にもジョリジョリした不快な感触が残るなど粗さもある。

 

クロノマット44を手に取ってみると、デイトナはやはり素晴らしくリファインされた時計なのだということを再確認することができる。そしてクロノマットは、やや無骨でリファインが足りないながら、質実剛健な工作精度の高さを感じる部分が魅力ではある。

 

そしてこのブラック・ブラックリミテッド。ブライトリングらしくない地味なダイヤル配色で差し色もない。またキャリバー01以前では、ブライトリングと言えばいわゆる「縦目」(上左下と並んだスモールカウンター)が通常の「横目」(右下左)になっていることもあり、ぱっと見メーカー不詳の印象で大変気に入っている。

 

[裏話]

実は・・・自己の優柔不断を暴露することは恥ずかしいのだが。。。この時計を買う数日前。クロノマット44のレギュラーモデル、ダイヤルは黒でスモールカウンターがシルバーの旧手巻きデイトナ(Ref.6263)的なモノを購入していた。しかしこれがどうにも<あのブライトリング>的な象徴的な色合いに見えてしまう。そこでブラック・ブラック・リミテッドへ翻意し、交換を申し出、購入店のご厚意で追い金を支払って入手したのである。

 

 

 

 

 

究極の(自己満足)オリジナル・カスタマイズ

 

さて後日、銀座6丁目のブライトリング・ブティック東京に出向き、純正のフォールディング・バックルを購入した。

 

そしてそれを手にそのまま向かったのが、7丁目で革製品を扱うフランスのアトリエJ。ここは、本格的なオリジナルの時計用ベルトを作ってくれることで知られる。

 

ありとあらゆる素材(革・ラバー・糸)、シェイプ、金具等の中から、コンシェルジュと問診しながら希望のベルトを作り上げていく。

 

しかし、僕の希望は明確だった。

 

・純正ライクなシェイプと肉盛り、ステッチの入れ方

・表革は、HOTSPARに近い「赤」で、ステッチは「黒」

・裏も革、BELUGAに近い「ダークグレー」で、ステッチは「赤」

・長さは僕の腕に合わせる

・素材はスムーズレザー

 

そう。すなわち、MYベントレーの内装をオマージュしたベルトだ。製作期間は約1ヶ月半。職人による完全ハンドメイド。

 

料金は17,550円(素材にもよる)。これは安い!

純正のフォールディング・バックルが27,000円。

しめて44,550円。

 

この遊びが高いのか安いのか。個人的には安いと感じる。

クロノマット本体は、ちと高いかな?

 

目下のところ、ベントレーに乗る日しか身に付けない時計だ。

 

 

 

[追記]

ちなみにベントレーの最新のSUVベンテイガ。こいつに装着されるダッシュボードのブライトリングは、オプションで機械式も選べる。それはなんとトゥールビヨン(姿勢差誤差除去機構)搭載で、オプション価格2900万円!

 

車体価格と同等。でもウォンツがあるのだろう……。