「 叩かなきゃわからないようなバカな女もいると思う 」

 そう言った。


 ウチの彼はそう言った。



 今年の春頃まではひどかった。


 彼が外に酒を飲みに行った夜が恐ろしかった。


 もともと、中規模のスナックのオーナーだった彼、小さな有限会社の社長でもある。


 私が先代のママから店を預かった。


 もうあんまり思い出したくないので細かく書かないけど・・・。


 店を終えての帰り・・・。


 店が終わるまでほとんど付き合いのある居酒屋やスナックで飲んでいた彼は、終わった私を迎えに来た時、酔っていることが多く、帰りの車の中、運転をする私の横で、グズグズグズグズほとんど因縁をつけるといったようなレベルの文句を言いながら、その自分の言葉にヒートアップして、しまいには運転している私を横から殴った。


 髪をむしられ、拳で顔も身体も殴られ、時には足でまで蹴られ・・・運転中なのに・・・。


 一度、目を殴られ、「 逆さパンダ 」 になったことがあった。


 その時は、部屋がある街の駅前に車を停めて、力を振り絞って逃げ出し、そのままタクシーを呼びその街の救急医療センターへ行った。


 ドクターも看護師さんもいたって冷静だった。


 看護師さんが何も言わず第一声・・・  「 彼に? 」 と・・・。


 私はうなずくことしかできなかったっけ・・・。


 うなずいた瞬間に涙が一気に流れ出たっけ・・・。



 それからも、店を閉めるまでは辛かった・・・辛かったよなぁ。


 車に乗るどころじゃない・・・。


 店を終えたところにやってきて、店の中で灰皿を投げたりボトルを投げたり・・・。


 当然殴られも蹴られもした。


 その時は、彼がトイレに入った瞬間に荷物持って外へ飛び出し、タクシーで家へ帰った。



 店を閉めた後も、自分が飲みに行って帰ってきた時、ひどく酔っている場合は家でも殴られ蹴られた・・・。 だから、彼が飲みに出て行った晩、遅くなりそうな場合はメール1通送ってからネットカフェに逃げてた。


 それが今年の春頃くらいまでだったと思う・・・。



 その春の夜は、とうとう警察を呼んだ・・・。


 パトカー2台、警官4人。


 さすがにそこまですると思ってなかったのかもしれない。


 それからちょっとセーブをするようになった。


 確かにそれから殴られても蹴られてもいない。 もちろん今も。


 ただ、言葉の暴力はひどいけど・・・。



 「 叩かなきゃわからないようなバカな女もいると思う 」


 それは違う・・・。


 解ろうともしないだろうけど・・・、


 あのね・・・、


 それは、人間として 「 卑怯なやり方 」 。  わからないだろうな、こう云ったって。


 認めないと思う・・・。


 でも、でも、でもやっぱり、それは人としてあってはならないあり方。



 力が強いのがわかっている者が、その力に任せて弱い相手を叩きのめそうとするなんてね・・・、


 卑怯なだけ。



 そのくらい、弱いんだよ。




 ・・・あの晩から、拳を下ろしてくれてありがとう・・・。


 でも・・・、


 未だに怖い・・・。


 帰りの遅い夜は・・・。


 寝られない。



 あの頃、そんな晩になると、大急ぎでお風呂に入って、髪も乾かして、厚着して、自転車こいで駅前のネカフェに行った。


 ネカフェまで行かなくても、お風呂に入った後、普段なら寝間着になるのに、そういう晩は外を歩ける服を着て帰りを待った・・・。

 何かあったら一気に外へ逃げ出そうって思ってたから。


 そんな晩はホントに寝られなかった・・・。


 あったかい部屋なはずなのに、震えがきた。

 この暑がりの私が、部屋で独りで緊張して震えてんの・・・。


 想像できないだろうな・・・。



 今もそう。


 前ほどではないにしろ・・・。


 まだ、お風呂の後 「 寝間着でいいかなぁ 」 って一瞬戸惑うし、ベッドに横たわっても眠れない・・・。


 寝間着は着てても、ねまきのポケットに携帯は必ず入れてある。


 いつでも110番できるように・・・。




 卑怯なの。 何度も云っとくね。


 そのあり方は卑怯なの。


 そのくらい弱い男なの。



 それでも今は暴力はナシ。


 いやだけどね。


 飲んで帰ってくる夜はね。


 グズグズはひどいから。


 とんでもないと思うもの。


 DVおさまったらモラハラ・・・。


 

 もう自分のことを考えないと。


 そう思って毎日がある。



 『 私らしい私 』 にカムバックできるよう、がんばるんだ。