夏休みのある日、自宅でひとり昼食を食べようと冷凍食品の「えびピラフ」温めた。

一袋に2人前入ったものだ。

袋の半分を温め、残りの半分はまた冷凍庫にしまった。

温めた「えびピラフ」を食べ終えた。

・・・が、なぜかもっと食べたくて仕方がないのだ。

とてもおいしかったわけでもなく、量が少なかったわけでもない。

それなのに、冷凍庫にしまった残りの半分がどうしても食べたくて、食べたくて仕方がないのだ。


「だめよ、そんなに食べちゃ太っちゃう・・・」


そんな思いとは裏腹に、私は残りの半分を冷凍庫から取り出し温め始めた。


「あぁ・・・だめ。食べたら太るわ。食べたらだめなのに・・・。」


ピラフを温めている間も、そのピラフを食べている間もずっと頭の中をこの考えが駆け巡る・・・。


そして、ピラフを食べ終えると、今までピンっと張っていた糸が切れたように次から次へと食べ物を食べたくなってしまった。

それも今まで私が頑なに拒んできた「太る食べ物」ばかりを・・・。

「もうピラフを2人前も食べちゃったんだから、後はいくら食べても同じよ。

 今日は好きなだけ食べて、明日は絶食しよう。」

私は、菓子パンやら、お菓子やら、炭水化物を次々に口に運んだ。

不思議と食べても、食べても苦しくならず、もっともっと・・・と食べ続けた。


明日からは絶食するんだから・・・今だけ・・・今だけだから・・・


 翌日からは絶食・・・するはずだった。

 するはずだったのに、食べ物を前にすると昨日の「どうしようもない食欲」が湧き上がってきた。


「食べちゃだめ・・・。絶食するって決めたんだから・・・。決めたのに・・・。」


 私の思いとは逆に、私は食べ始めた。

 自分でもどうしようも出来なかった。

 そして、食べ続けた。

 食べて、食べて、それでもまだ食べたくて・・・。


「あぁ・・・私は一体どうしちゃったの?こんなに食べたら太っちゃう!!」


食べ物をたらふく胃に詰め込んだ後、私はまた自分に言い聞かせた。


「明日からは、絶食よ・・・」


 翌日も、その翌日も、そのまた翌日も「絶食」という誓いは守られず、気持ち悪くなるまで食べ物を胃に詰め込んではまた、同じ誓いをたてるのだった。


「明日からは、絶食よ・・・」


 しかし、誓いは守られることなく、月日だけが過ぎていった。

 体重は50㎏から52㎏へ・・・そして54㎏・・・57㎏と確実に増えていった。

「どうしよう・・・こんなに太っちゃって・・・。

 あぁ!どうしたらいいの!?新学期までには痩せなくちゃ!

 みんなに会うまでには元の体重に戻さなくちゃいけないんだから!!」

体重計に乗るたびに、私は発狂しそうになった。


 何かが、おかしい・・・。この食欲、この体重増加・・・。

 食事制限も、体重管理も今まではそつなくこなせたのに・・・。

 何かが、私の中で何かが狂い始めている・・・。


 これが短大1年生、19歳の夏だった。

 新学期はもう、すぐそこまで来ていた・・・。