購入を迷う方に〜発売1年後のセルフレビュー | 国家試験後の臨床 書籍化しました! (旧)研修医が学んでおくべき100のこと

国家試験後の臨床 書籍化しました! (旧)研修医が学んでおくべき100のこと

一人の内科医が研修医時代に書き溜めた記事を再構成しています。
全ての医療者にとって、医学を理解する手助けになれば幸いです。

拙著「国家試験後の臨床」が発売となって一年が経過しました。多くの反響を頂き、売れ行きも好調のようです。

 

発売年であった昨年は、多くの方に物珍しさから手に取ってもらえたように思います。卒後年数の経過された、中堅以上の先生方にご意見をいただくことが多く、それは個人的には予想外のことでした。

 

もちろんそれはとても嬉しいことです。そんな中で、卒後すぐの先生方に本書を手に取ってもらうにはどのようにすべきか、ということを考えておりました。一番思っていたのは、研修医が始まって最初の頃に買うのは「誰かに紹介された本」であることが大半だと思います。本書のような低知名度医師の書いた本を最初に取る方は少ないでしょう。私でも内科レジデントマニュアルを買うと思います。

 

しかしながら、本書は内科レジデントマニュアルとはまったく役割の異なった本です。同じような本を2冊買わなくてもいいだろう、といいう気持ちは分かります。しかし本書にしかない特徴があるということを強調させてください。

 

ということを踏まえながら、本書の良い点も悪い点も合わせて、レビューしていこうと思います。

 

 

①いただいた書評の紹介

セルフレビューの前に、いくつかのレビューを書いてもらえましたので、そちらをご紹介します。

どうやらこの世界では、本が出来上がったら出版社が多くの先生方に謹呈し、ご意見をいただく文化があるようです。

何も知らなかった私は、御高名な先生方から届く御意見を、胃を痛めながら読ませていただきました。

概ね好評なご意見を頂いたのですが、謹呈である以上はある程度の忖度もあるのかもしれません。もしかしたら「謹呈外」のレビューの方が、忌憚のない意見が記されているのかもしれません。

 

長尾太志先生

 

岩田健太郎先生

 

三谷雄己先生

 

みるすきー先生

 

MK先生

 

他の方にも書いて頂いたような気もしますが、漏れていたらすいません。。

購入を悩む先生方は、是非とも目を通してみてください。

 

 

②本書の長所

本書の目的はタイトルの通り「国家試験までの勉強と実臨床のギャップを埋める」ことにあります。私自身が最も苦労した、病院内での慣例なども含め、国家試験では出ないけど病院では常識とされている内容をとにかく含んでいます。国家試験に向けて勉強することは可能な限り削ぎ落としていますので、国試的な内容の復習には使えません。目的が違います。

 

個人的なアピールポイントは2点あります。

 

1つは、集中治療領域の濃密さです。ここはものすごく頭の良い先輩医師とずっとやりとりして作った内容です。生理学的な内容を、可能な限り分かりやすく書いています。内容の濃さでは勝てませんが、既存の集中治療領域のどの教科書よりわかりやすいと思います。もちろん、専門医師には全く物足りないと思います。しかし初学者向けとしては、絶対的におすすめです。後悔させません。

 

もう1つは、医療の保険制度など社会医学にページを割いたことです。これは誰も教えてくれないので、個人的にかなり苦労して勉強した部分です。私の知る限り、ちょうどいい教科書は存在しません。なのでここだけは絶対に触れておく必要がありました。この部分に関しては「研修医向け」という内容からは逸れると思います。しかし3年目、4年目と患者のマネジメントを行う立場になった時、基本的な制度の理解は必ず必要になってきます。医師目線で書かれた社会医学の教科書は、ほとんど唯一と言って良いと思います。

 

 

③本書の弱点

本書の弱点として、ほぼ全ての先生が書いているのが「一つ一つの内容が薄い」ことです。これはご指摘の通りで、ある程度習熟した先生方には物足りない点があると思います。

 

また挙げられるのが、内容の「粗さ」です。本書は「大枠を理解をする」ことに主眼を置いているので、細かい部分の正確さや、例外的なものに関してはある程度意図的に(もしくは意図していない部分もあるかもしれませんが)、詳細な説明を避けています。

 

個人的な経験からも、医学の理解は段階的に行なっていくものだと思っておりますので、あまり細かいことを考えるより、興味深く、面白く理解できるように力を注ぎました。そのため、本書では物足りず専門書に手を伸ばさなければならない部分は時にあるかもしれません。それは避けられない弱点です。

 

内容の粗さはあるかもしれませんが、記載に嘘があるかどうかは全く別物ですから、ファクトチェックには各科の専門医の先生に依頼し、相当心を砕きました。また「呼吸器内科的な内容の記載が細かすぎる」とも指摘されましたが、まぁそれはご容赦を…

 

 

④終わりに

このような「all in one」的なパッケージの教科書は、おそらく日本で本書のみだと思います。個人的にどうしても欲しかった内容の教科書であり、末長く読み継いで頂きたいものです。発売から時間が経つとどうしても求心力は落ちますが、学ばなければいけない内容は変わりません。是非ともお役立ていただければ幸いです。