猫がヤキを入れる | 渡辺やよいの楽園

渡辺やよいの楽園

小説家であり漫画家の渡辺やよい。
小説とエッセイを書き、レディコミを描き、母であり、妻であり、社長でもある大忙しの著者の日常を描いた身辺雑記をお楽しみください。




 複数生き物を飼っていると、彼らには大抵縄張りと年功序列制度があることがわかる。
 
 我が家の犬の牛太郎は、最年少で、猫たちの方が先輩格に当たる。
 犬は狼の昔から集団生活をしていたので、特に年功序列に忠実である。主人である私は別格として、猫たちにすらそれを守る。
 で、写真は知らない人なら一見、猫と犬がじゃれ合っている微笑ましい写真に見えるが、実は猫が犬にヤキを入れているのである。 よく見れば猫があんぐり噛み付いていて、犬がしょぼんとした表情をしているのがわかる。肉食動物は自分の優位を示すため、よく相手の首筋に噛み付くのだ。ほんとは馬乗りになって噛むのだが、犬がでかいので、こんな構図になる。

 最年長の猫が、なにか腹に据えたことがあったらしく、自分より4倍もでかい犬を壁際に追いつめ、首筋に噛み付いているのだ。
 犬は泣きそうな顏で、猫にされるがまま耐えている。
 元来が気の弱い犬で、年功序列も歳がいくと、逆転現象もありなのだが、ぜんぜんそういう下克上しようという気持ちがないのだ。
 そういうとき、私は図に乗っている猫にいらっとして、「牛太郎、お前が一声ワンと吠えれば、猫なんてふっとぶのに、やっちゃえよ」と、けしかけるのだが、お人好し?の牛太郎は、やっぱり情けなさそうな顏で私を見るばかりなのだ。