猫の脱走、塀の上の猫 | 渡辺やよいの楽園

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小説家であり漫画家の渡辺やよい。
小説とエッセイを書き、レディコミを描き、母であり、妻であり、社長でもある大忙しの著者の日常を描いた身辺雑記をお楽しみください。

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  朝、息子が窓を閉め忘れて、家の猫が3匹庭に出てしまった。 
 白猫だんごは、呼ぶとすぐ家の中に入ったが、脱走常習犯のもかはすぐどこかに行ってしまった。まあ、こいつは一晩出歩いて帰ってきたこともあるので、戻るまで待とうと思うのだが、一番臆病な虎が庭の隅っこの塀の上にちじこまって戻って来ない。近づくと逃げるそぶりをするので、家の中から呼びかけるもそこにうずくまったまま。
 塀を越えるともうお隣で、どうすれば戻って来るのか頭を悩ました。
 家の者以外になつかない人見知りの猫なので、どこかに行ってしまうとどうなるか分からず、ずっと庭の方に気持ちが行ってしまい、なにも手がつかない。

 今見たら、虎は塀から姿を消していた!
 どうしよう。

 仕事も手につかず
「虎、虎」と、猫の名前を呼びながら家の周りを探しまわる。
 すると、お隣の屋根のひさしの下にうずくまっている虎を発見した。
 呼びかけても、震えるだけでそこから降りて来ない。
 家族以外に指一本触れさせない猫なので、しかたなく脚立をかついでお隣に頼んでいれていただき、私が脚立によじ上って、虎救出に向かう。
 名前を呼びながら手を差し出すと、震えているが逃げるそぶりは無いので、少しずつなでながら首輪をホールドして抱きかかえ、やっと捕獲した。
 やれやれである。
 

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 一方のもかの方は、もう外界は慣れたもので、ゆうゆう塀の上でくつろいでいる。


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 名前を呼んでも知らん顔で


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 まあ、そのうち戻ってくるだろうと、とりあえず虎確保でよしとする。
 案の定、夕方寒風が吹き荒れてくると、もかが窓の下で座って待っていて、窓を少し開けると自分から入って来た。

 猫を放し飼いで飼っている人には、大騒ぎするほどのことではないだろう。
 実際近隣でも、放し飼いの飼い猫はまだまだ多い。
 昼間、のんびり塀の上でひなたぼっこをしている飼い猫の姿を見ると、ああこれが本来の猫の飼い方かもしれないなぁ、と思う。
 しかし、都会では猫は交通事故や病気感染の危険性が非常に高く、しかも外界で土のある所はたいていひと様の庭なので、糞害のおそれもある。そのため、近年の猫の飼い方も室内飼いが推奨されている。
 実際我が家の猫のうちのクッキーなどは、生まれながらの猫エイズキャリアなので(発病はしていない)外に出す事で、よその猫を感染させる恐れもあり、完全室内飼いである。
 室内飼い放し飼い、どちらが猫に幸せかという事に関しては、どっちでも猫はいいような気がする。
 彼らは与えられた環境でそれなりに満足して生きている。だいたい、「幸せ」とか「不幸」とかいう概念自体、彼らにあるかどうかも分からない。
 要はすべて、人間様の都合なのである。