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遅ればせながら、犬の散歩の途中での初日の出。
正月、伊豆の温泉に家族で行き、観光で某水族館に寄った時のことだ。
ラッコの水槽の横に、貝の殻に願い事を書いて下げておく絵馬みたいなコーナーがあり、子ども達と願い事を書いた。
息子は「大金持ち」私は「ベストセラー」、娘は隠すように書きながら
「絶対見ちゃダメ」と言う。貝を結ぶ時も
「みんな先に行って、見ないでよ」と、追いやる。
いったいなにを書いたのかと興味津々で、娘が戻って来て先に行ったすきに、こっそり貝のコーナーに戻って見た。
「おかあさんがながいきしますように」
そう書いてあった。
自分のことより、人の幸せを願える年頃になったのだ。
お母さんは自分の欲ばかり先行して書いてしまって、とてもとても恥ずかしかった。
おかあさんでよかった。
娘の話で、思い出すのは早世した私の父の言葉だ。
末期ガンだった父。
当時の私は1年先までスケジュールがびっしり埋まっていて、3日ごとに締め切りが来る状態で、入院した父を見舞う時間がほとんどなかった。
見舞いに行く日をスケジュールで確認する私に、
「お前は親が死ぬ日もスケジュール表に書き込んでいるんだろう!」と、母が罵声を浴びせた。
血を吐くような思いでやっと漫画家としてやっていけるようになった私は、母への憎悪と父への申し訳なさで頭が真っ白になった。
ある日、やっと仕事の合間に父の見舞いに行くと、一人ベッドで寝ていた父は、私が来たとたん
「お前は締め切りがあるだろう、もういいから帰れ」と言う。
「でも、ぜんぜんお見舞いに来れなくて、私……」と、言葉に詰まる私に父は
「子どもは小さい時はおとうさんおとうさんと、とても可愛くて、親もとても幸せで、その時に子どもはもう親に一生分親孝行をしているんだ、だからもう、親孝行なんてしなくていい」と、言う。
「もう帰れ」父は、布団をかぶりなおしてそう言う。
「おとうさん……」声をかける私に、父は布団から手だけ出して、もう行けと言うように振る。その手首が、痩せてしまっていた。
私はなにも言えなかった。
じっと丸まった布団を見つめていた。
今、子どもの愛らしさや可愛さに触れるたびに、この父の言葉を思い出して、
「私は今、親孝行をしてもらっているんだ」と、思う。
この先、子ども達がどういう育ち方をしようと、今、この時があるだけで、もう十分、と思う。
ネットやブログでの書評で有名な黒夜行さんが、2008年度小説ベスト20の中に、私の「ピーター・ノースの祝福」を第10位に入れて下さいました!
光栄です!
拙著「車いす犬びすこの一生」で、検索してこのブログに来る人が、毎週かならず何人かおられる。
意外に、細々とでも読み継がれているらしい。
というか、老犬介護とかペットロスとか、生き物を飼う事を全うするという問題は、今後ますます増えてくるだろう。
10月18日放送のNHK週刊ブックレビューにて
北上次郎さんが「ピーター・ノースの祝福」をおすすめの3冊に入れて下さったようです
ありがとうございます。
「ピーター・ノースの祝福」の書評を
11月号月刊「ヒューマンライツ」にて冠野文さんにいただきました。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/e5/8f/10111927832_s.jpg?caw=800)
「星星峡」と「フィガロ」にいただきました。
ありがとうございます。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/7a/00/10103357679_s.jpg?caw=800)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/d2/9d/10103357678_s.jpg?caw=800)
新刊小説「ピーター・ノースの祝福」、大型書店で発売中です。
よろしくお願いします。
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