子ども商店街 | 渡辺やよいの楽園

渡辺やよいの楽園

小説家であり漫画家の渡辺やよい。
小説とエッセイを書き、レディコミを描き、母であり、妻であり、社長でもある大忙しの著者の日常を描いた身辺雑記をお楽しみください。

お店1

 今日は自分の誕生日なのであるが、そういうことははまったく忘れていた。
 なにせ、息子の子ども商店街の当日なのだ。
 店構えから建築売り物の企画まですべてひとりでやった息子。
 メニューのカレーうどんのルーは、当日開店3時間前に会場であるプレーパークに行き、一人で仕込み始める。
お店2

 私はとにかく手出しできないので、見守るのみ。
 おおきな寸胴鍋に2杯のカレー汁を仕込み、値段表や看板を貼付け、いざ、開店。
 しかし、今回は日当りの悪い隅のスペースに当たったせいか、人の入りがかんばしくない。つぎつぎ周りの  お店にお客が入り始めるのを、手持ち無沙汰で息子は見ている。すでに涙目だ。
 しかし、昼時になり人出が増え、日当りが良くなるにつれ、次第に客の入りが良くなり、ついにてんてこ舞いで注文に応じるようになる。
必死でうどんをゆで、配膳する息子。
お店3


 母は、物陰から「巨人の星」の明子姉ちゃんのように見守る。
 2時過ぎ、ラストスパート。
 手作りはにわなど、最後には1円で売りつける。
 そして、ついに完売。
 カレーだらけ泥だらけの息子。
 売り上げを計算すると、5000円近い売り上げになり、息子の表情も満足げ。
お店4

 がんばった息子。
 しかし、早くも来年の計画を立て始めるのに、母はけっこうびびるのだ。だって、実は経費を計算すれば、 大赤字なのだよね。
 でも、仕事商売の大変さ喜びを身をもって知るこの子ども商店街、ぜひ続けて行ってくれ。



  私はもう若いと言えない年になってしまった。
  みずみずしい感覚は失ってしまったかもしれない。
  ほやほやの若い恋愛小説などは、現役の若い人にはかなわない。
  しかし、若い頃も歳を取った頃の気持ちも、今は両方分かる。
  しかも、子どもたちのおかげで、子どもの気持ちも再確認できる。
  そういう小説が書ける。
  老若男女のための小説。
  そういうものが書きたい。
  年を取るのも悪くない。
  そう思える瞬間だ。
  誕生日おめでとう、私。