ニッポン放送の私の番組にも物価高の経営相談のメールが多く寄せられるようになった。原材料費の高騰で商品やサービスの値段を上げると、客数と売り上げが減り、経営が苦しいというものだ。物価高倒産は今後増えると考える。

市場の中でも選ばれる店、選ばれない店で分かれていくだろう。物価高で外食の回数を控える動きも出るだろうが、付加価値をつけて選ばれる店になるしかない。

最近、長期金利の上昇が急ピッチだが、日本の財政不安への警告だと感じている。経済ジャーナリストの原真人さんと意見交換したが、世界が日本の積極財政を心配し始めていると指摘する。

先日、ベセント財務長官が来日した。高市早苗首相や、片山さつき財務相との会談内容は明かされていないが、原さんは表敬訪問のはずがなく、わざわざ中国訪問の前に立ち寄ったのは、最近の日本の長期金利の急上昇について、「日本国債は本当に大丈夫か」と「ほぼ忠告に近いことを言ってきていると思う」と推測していた。

経済協力開発機構(OECD)のコーマン事務総長も来日した際、食料品の消費税ゼロを「荒っぽい対応だ」と指摘。13日のOECDの対日経済審査報告には、消費税率の段階的引き上げを提言し、最大18%とする試算も例示し、少子高齢化に対応する財源の確保を促した。

さらに、政府の経済財政諮問会議に招かれた元国際通貨基金(IMF)チーフエコノミストで、米マサチューセッツ工科大のブランシャール名誉教授からは、積極財政、消費税減税案、日銀への圧力などについて全否定的な意見が飛び出したという。 

ブランシャール氏は「危機管理投資は重要だ。だが明確な財政的収益が見込めない。成長を押し上げるかもしれないし、そうでないかもしれない。それだけを根拠に国債を(投資資金の)財源とすることを正当化できない」と、高市首相に苦言を呈した。

いずれも日本の政治家のポピュリズムに「世界がいい加減にしろ」と言い出した格好だ。基礎的財政収支(プライマリーバランス)ゼロを目指せば、中長期的には国の借金への信認もなんとか保てるという考えもあった。しかし増税も歳出削減もしないとなると、日本国債への信認は保てなくなるだろう。

OECD加盟国の消費税(付加価値税)の平均は19%だ。日本は増税どころが、減税すると与野党がいっている。法人税を上げると企業が海外に逃避する。所得税を上げると労働意欲をなくすことから消費税しかないと思うが、日本の政治家はそれを口にすると、選挙に不利だから決して言わない。

こうした海外要人は、国債暴落や円の大暴落で、日本が金融危機やハイパーインフレを引き起こしたら、その影響が米国や世界に波及するのを心配しているから、異例の踏み込んだ発言をしていると原さんはいう、全く同感だ。

ワタミは今月18日、横浜国際会議場(パシフィコ横浜)で、全社員を集めて42回目の創業記念祭を行った。悪いインフレが今後も続くとみて、その中で選ばれるため、地域で一番の店、市場で一番の商品をとことん意識していき、円の大暴落の際は、経営者人生最大の勝負として、「何としても生き残る」と意気込みを語らせてもらった。

8年後、創業50周年の時のイメージを具体的に共有した。国家経営においても大事なことは、具体的な逆算計画だ。高市首相は「減税をする、補正予算を検討する、でも、赤字国債は抑制する」というが、そんな魔法のような計画に、世界から注文がつきはじめている。



【産経ニュース】「渡邉美樹経営者目線」(隔週火曜日連載)より