「私が胴元だ」と異例の表現で、円安を牽制(けんせい)する米国のベセント財務長官の発言を見ると「そんなに、危機が目前に迫っているのか」と疑いたくなる。米国の外圧もあり、日銀は17、18日の金融政策決定会合で政策金利を現在の1・0%程度から1・25%程度に引き上げると予想されている。しかし構造的に円高に転換するのか。
ニッポン放送で元モルガン銀行東京支店長の藤巻健史さんと意見交換したが、藤巻さんは「トレンドとして円安を転換する理由はない、今後も円安が進み、介入前に戻るだろう。当然1㌦=160円を超えてくる」と予想する。日本は金利が上昇したら政府も日銀も、追い込まれる構造だ。
それでも、ベセント氏は利上げを要求している。藤巻さんは「世界経済のことを考え、今は金利を大きくあげないといけない。やらないとXデー(金融財政危機)に突入してしまう」という。
5月の来日の際、片山さつき財務相にベセント氏が激しい口調で意見したという一部報道もあったが、「米国側は、ギャンブルだとしても日本に金利をあげることを提案して、日本はギャンブル失敗のリスクを考えて抵抗していたのだろう」と推測していた。
米国は、米国債が売られたら困るという自国のリスクを一番気にしているだけで、心底日本のことを心配しているとは思えない。いずれにしろ、日銀の債務超過につながる政策金利の引き上げや、国債の利払い費増加につながる長期金利の上昇が、日本円や日本国債の信認にプラスになる理由はない。為替も短期では、思惑や人為的な力で動いたとしても、長期で見れば「当たり前」の評価に戻ると感じている。
私は、円安が加速するターニングポイントは、国債の格付けダウンの時だと見ている。長期金利が上昇する中で、積極財政に踏み込むことは大ギャンブルだ。高市早苗政権の来年度予算の概算要求総額は過去最大の143兆円となった。
今月上旬には、財政悪化懸念から長期金利の指標となる新発10年債の利回りが3%を超えた。財務省の最新の試算では、2035年には国債の利払い費だけで35兆円を超える。その時どう国を経営するつもりなのか。経済成長させるためには大きな予算を組む「大きな政府」ではなく、「小さな政府」で規制緩和して民間に投資をさせるべきだ。
先日、ワタミの焼肉店を視察した。円安や、物価高の影響もあり、業界では焼肉店の倒産が目立つ中、黒字で好調だ。業界をみても、仕入れ力のある店が残っている。ワタミの焼肉チームも常にアイデアを出し合い、事業を行っている。現在の500円ワンコイン飲み放題にもお客さまは想定以上の反応をしており、それだけ物価高は深刻ということだろう。
好調な業績を維持できている最大の理由は「人」だ。執行役員に権限移譲し成果が出ている。国も大胆に若い人や、民間にチャンスや権限を与えることが重要ではないか。借金依存、ギャンブル依存の国家経営が心配でならない。

【産経ニュース】「渡邉美樹経営者目線」(隔週火曜日連載)より
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