先の衆院選で自民党が315議席を獲得し、歴史的な勝利を収めた。与野党が減税を掲げ、争点がないなら、自民党の方が安心という国民感情だろう。しかし、責任ある積極財政の「責任」は、よくわからないままだ。

高市早苗首相は、「行き過ぎた緊縮財政」というが、先進国でも断トツのGDP(国内総生産)比230%の借金をしている国が、緊縮財政なのか、本来は、そこから議論すべき野党がいてもいいはずだ。ここからさらに積極財政を進めると、政策にブレーキをかける野党の役割を果たす存在は「マーケット」になるだろう。

高市首相も片山さつき財務相も「消費税減税は、赤字国債には頼らない」と繰り返し発言するのは、マーケットを相当警戒している証拠だ。しかし、食料品の消費税ゼロで、物価高は解決するのだろうか。財政悪化懸念で円が売られ、円安が加速すれば、輸入物価は上昇し、減税の効果は帳消しどころか、負担増にさえなる。

それに年間5兆円の財源を使うのは、国家経営として正しい判断なのか。中道改革連合が主張する、政府系ファンドの活用は、株価が下がれば財源にならず、無責任すぎる。

物価高対策の基本は、日銀による利上げだが、アベノミクスの異次元の金融緩和の副作用で、金利を上げると政府は国債の利払い費が増え、より財源が苦しくなる。円安や長期金利の上昇という形で、マーケットが本格的に反応しはじめたら、日本の経営は一気に窮地に追い込まれる。

高市首相は「17分野に成長投資」をしていくことも公約で掲げた。私も参院経済産業委員会に所属していたが、国の投資は、失敗事例や効果があいまいなものが多い。ロサンゼルスでクール・ジャパンの戦略拠点もみたが、ハコモノだけを作って、効果はあいまいだった。

政治家や官僚といった経営感覚のない人が投資戦略を主導するのでなく、国は基礎研究と戦う場所の提供に徹し、民間に託す分野に戦術面まで入り込もうとしない方がいい。族議員が既得権を守り、自由競争を阻害することも、長年日本経済成長の足をひっぱり続けている。そうした問題点を抜本的に解決する経営改革を高市首相には期待したい。

食料品の消費税ゼロで、外食業界はあおりを受けるといわれている。しかし、そこは10%以上の付加価値を提供していくしかない。「和民」から業態変更した「ミライザカ」、「鳥メロ」が今年10周年となった。両ブランドともに年末年始も好調で、支持される店になった。

「和民」はカテゴリーの多さと専門店の強さを持ち、価格帯は他店より安く、いいものにこだわってきた。「ミライザカ」はカテゴリーを多さ、「鳥メロ」は焼鳥の専門店として、それぞれが「和民」の良さを受け継いだ。

10年前の転換投資は成功だった。国の経営も、この政策、この投資にいくらお金を使ったら、将来どれぐらいの効果があるのか、民間ではあたり前の発想で、大切な税金を使ってほしい。聞こえはいいが、減税も、成長投資も、効果がないものに財源を使い続ければ、早晩この国は破綻する。



【産経ニュース】「渡邉美樹経営者目線」(隔週火曜日連載)より