東日本大震災及び福島第一原発事故から3年10ヶ月が経ち、世間的にはどんどん風化が進む一方、未だ12万人を超える方々が福島県から県内外へ避難を続けています。

未だ帰還への道筋が見えてこないという状況でもあり、避難を続ける人の中には住宅を購入したり建築したりする人も多くなってきました。それに伴い避難先へ住民票を移すかどうか悩んでいる人も多くみられます。

平成23年8月にいわゆる原発避難者特例法が施行され、平成25年2月からは各避難元自治体から順次「届出避難場所証明書」が発行されるようになり、住民票を移さなくても避難先自治体で主要な行政サービスが受けられるようになりました。避難先自治体において介護サービスの利用や要介護認定に係る相談、保育所の利用や小学校、中学校の就学手続きができるようになりました。またその他、住民票を移さなくても避難先の住所で免許更新ができ、車を購入した場合の車庫証明も取得できるようになる等、住民票が無くても避難先でほぼ支障なく生活ができるようになりました。

しかしやはり避難先自治体で今後長期的に安定した生活を送りたいと考えている人にとって、そこに住民票が無いことで多少の不便があるのも事実です。例えば、金融機関での借り入れができない、賃貸借契約が結べない、といった声も聞かれます。

被災者の最大の心配事ではある東京電力()からの賠償については、基本的に住民票を移しただけで賠償が打ち切られるということはありません。高速道路の無料措置についても住民票を移すか否かによって変わることはありません。

しかし住民票を移すということは当然にその自治体に属するということですから、その自治体の基本的なルールに従うのは当然になります。税負担や地域の負担金の支出は当然に必要となってきます。国民健康保険の保険料についても、避難先の自治体の条例によって異りますが、窓口負担の減免措置が受けられなくなる可能性も出てきます。

そして住民票を移すかどうか考える上で1つの大きな材料となるのが、移動してから再度避難元の自治体に住民票を戻せるかどうかという点です。避難元自治体によって取り扱いが異なると思いますが、例えば富岡町の場合、震災及び避難の混乱の中平成23年中に住所を移してしまった住民は元の住所に再転入できますが、平成24年以降に住民票を移してしまった住民の場合、元の住所に戻すことはできない扱いとなっています。

基本的に住民票を移すか否かによって大きな差はないと考えますが、以上のように避難元自治体、避難先自治体によって若干の差が生じてくるのも事実です。ですから、避難元自治体、避難先自治体に事前にそれらを確認する必要があります。その上で、住民票を移動する時期をそれぞれのライフスタイルに合わせて判断していくことをお勧めします。

なお、もしそれによって不当に不利益を被るようなことがあれば、近くの法律専門家にご相談することをお勧めします。


    ~とちぎ暮らし応援会へ提供した原稿より~