昨年の年の瀬迫る12月28日、南相馬の特定避難勧奨地点が解除された。そして今年春にも楢葉町の住民帰還時期が発表される予定になっている。避難指示解除と住民帰還誘導の包囲網は着実に狭まっている。それは必ずしも町の回復や住民の意思が反映されてのものとは言えない印象がある。不十分な除染への不満、賠償の打ち切りや不平等への憤り、実質的な帰還の難しさ等、そういった町の機能回復の遅れや住民の不満を置き去りにしたまま、ただただ避難指示の解除と住民帰還誘導の包囲網が狭められていく印象だ。

「アンダーコントロール」私は別の意味で昨年よく耳にしたこの言葉を思い出す。安全の実質を伴わないまま、原発事故被災地の回復やその住民の不満だけは置き去りにされ、世間一般からはまるで元通りになったかのように封じ込まれ、まさに「アンダーコントロール」されていく。そんな風に感じてならない。

最近事務所で、今後双葉郡にある土地や建物をどうしたらよいか?という相談が増えてきている。要するに、土地や建物の賠償がある程度済んで所有権は残ったままだけど、このまま使わないのに所有していても今後税金が掛かってくるだけだし、売るに売れないし、、子供や孫はいらないって言うし、というような相談だ。あいにく現在それを国や東電が買い取ってくれることはないし、第三者へ譲渡することは表向き規制されている。とりあえずしばらくは様子を見てみては、としかアドバイスしようがない。

土地や建物を売りたい、貸したい、寄付したい、建物を解体したい、継続的に管理したい。これから双葉郡の土地建物所有者の多様なニーズが表面化してくるだろう。それに対応できる受け皿の必要性を感じている。町の復興の方向性、そして町民の意向に沿うような土地や建物の有効利用が望まれる。有象無象が町へ入ってきて復興や住民の意思に反して故郷が荒らされないように、できれば公的な第三者機関が介在するのがいいだろう。町民の意向と町の復興のビジョンとがなんとかマッチングできないだろうか。そんなことを考えながら過ごす正月です。