除染で出た汚染土壌などを保管する中間貯蔵施設の建設をめぐり、現在政府と福島県、双葉郡大熊町、双葉町との交渉が行われている。これまで政府はその用地の所有権の買取りのみを前提として交渉していたが、先日候補地の所有権の買取りだけでなく、希望があれば地上権を設定して一定期間その土地を借り、期間満了後に土地を返して貰うという手法も認めるとした。「先祖代々の土地を手放したくない」という地元住民の感情を慮っての地上権設定容認だと言うが、これではたして問題解決だろうか? 

少し考えてみて欲しい。これは中間貯蔵施設という前例のない巨大迷惑施設の底地が所有権と地上権という虫食い状態の権利の上に建設されるということである。地上権の期間満了は30年とされているが、はたして本当に30年後に国は責任を持って汚染物質を県外の最終処分場に移管してくれるのだろうか? 中間貯蔵施設を取り壊して撤去して綺麗に元通りに戻してくれるのだろうか? そんな事を誰が信用するだろうか? けれど存続期間30年の地上権を設定するということはそういうことである。仮に30年後綺麗に更地にして返してくれたとしても、その跡地は国の所有地と私人の所有地が虫食い状態のままだ。そこに将来のビジョンは何も無い。そういう想像は及ばないのだろうか?

 めまぐるしく変化する原発事故被災地の状況だけに30年後のことは誰も分からない。だからといって思考停止にして良いということではないだろう。30年後に用地提供した土地所有者は生きているだろうか? 30年後に県外最終処分を約束した政治家はいるだろうか? 少なくとも担当者が今のままということはありえない。それを考えると存続期間30年の地上権設定など受け入れのための口実ではないか? 先のことなど私達には関係ないということか? 穿った見方をしてしまう。これは今後原発を再稼働させるのか、増設するのか、日本の将来の原発政策に対しても共通して言えることだろう。30年後確実なのは放射性物質を含んだ汚染物質が消えずに存在しているということ。そこに双葉郡の荒涼とした大地が広がっているということ。それだけだろう。

最終処分場の候補地が宮城、栃木、茨城、群馬、千葉と報道されてはいるが、いずれも反対があることは必至で決定されていない。将来の双葉郡のビジョンは勿論、中間貯蔵施設ができる土地所有者の生活再建策や用地補償額すら決まっていない現在。そして地元住民への丁寧な説明も無く住民が置き去りにされている現実。その場しのぎの交渉条件の提示ではなく、そこから追い出される住民の目線で中間貯蔵施設の建設を考えて欲しい。政治家にはもっと想像力を働かせて欲しいと願うばかりだ。


           ~群馬司法書士新聞提供コラムより~