本日は、7月4日に発売されましたアルバム「Reborn 生まれたてのさだまさし」の編曲面に特化した解説を書いてみようと思います。

 

何回かに分けて、気が向いた時に書いて行こうと思いますが、まず1回目は、アルバムの最終曲「都会暮らしの小さな恋に与える狂詩曲(ラプソディ)」を取り上げたいとおもいます。

 

この楽曲は、今回のアルバムの中で私が編曲を担当した7曲の中で編曲を完成させるまで最も時間を要した作品です。

 

さださんの作品を編曲する場合、まず、さださんが自分でギターを弾きながら歌った音源が送られて来て、それを私が聞いたところで、さださんと電話で打ち合わせをする中で、彼の希望を聞き、後は、それを頭に置きつつ、ひたすら編曲して行くというプロセスになります。

 

この曲について、さださんからの希望は、歌詞の中に出てくる二人の偉大な作曲家の代表的な狂詩曲からの旋律を編曲の中に取り入れて欲しいという事でした。

オマージュとしての引用ですね。

因みに二人とも著作権は、切れていますので、自由に使用できるわけです。

 

2コーラス目の歌詞に出て来るラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲 第18変奏」に関しては、エンディングで劇的に登場させて盛り上げて欲しいというオーダーがありました。

 

1コーラス目の「誰かピアノ爪弾くガーシュイン」に関しては、可能であれば、ガーシュインの代表曲「ラプソディ・イン・ブルー」の中の印象的なフレーズをどこか使用して欲しいという注文。

後は、すべての楽曲に関して同じですが、ハーモニーの内容の変更も含め、楽器の選択等全て私が任された形で考えつつアレンジして行きます。

 

という事で、色々とアイディアを練った結果を譜面付きで解説したいと思います音譜

 

 

 

編成は、E.Gt  A.Gt  Piano  E.Bass Drums  Percussion
Strings(86442)。
 
Introは、全員で演奏し、ワンコーラス目の歌からは、ピアノオンリーからストリングスが入り、間奏が終わるまでは、ピアノとストリングスのみで行こうと決めました。
長い曲なので1コーラス目と2コーラス目の編曲の内容をガラリと帰る必要性を感じた為です。
 
私は、基本的にピアノ譜等、全て音符を書き込みますが、特にこの楽曲は、ピアノのフレーズ一つ一つが重要と考え、1音1音練りに練りながら書いて行きました。
 
そして、さださんからの注文ですが、まずは、ワンコーラス目冒頭の「誰かピアノを爪弾くガーシュイン」の歌詞を引き継ぐように「ラプソデイ・イン・ブルー」からのフレーズを引用するのが理想的と考え、下記の譜面にあるピアノのフレーズを考えました音譜
 

この1小節目のボーカル譜は、ちょうど「ガーシュイン」と歌う箇所。ピアノ譜の1小節目の2拍目から引用のメロディが4拍分書かれています。この譜面の4小節目の3拍目からもピアノに引用のメロディを与えています。(「少しだけ欲張りになった」のすぐ後です。)
 
 
そして、その後続いて出て来る「遠く離れても」の後にピアノとヴィオラに、ガーシュインの半音階で印象的な引用のフレーズを与えています。「変わらないと決めた」の後も同様です音譜
 
 
2コーラス目の同じメロディーの箇所ですが、2コーラス目は、当然の事ながらガーシュインの香りを消さなければならないので、ワンコーラス目とは、コード進行や伴奏の内容もガラリと変えてあります。
 
 
そして、エンディングですが、ラフマニノフの「パガニーニにの主題による狂詩曲 第18変奏」の原曲は、3拍子なのでそれを4拍子に直さなければなりません。オーケストラの内容も大きく変える必要がありましたが、ラフマニノフの原曲のハーモニーの素晴らしさを踏襲しながら、この楽曲における編成の魅力を生かしつつ最大にドラマティックな音楽的世界を目指しましたビックリマーク
 
如何でしょう。
クラシック通の方は、一聴して私が仕掛けた様々な工夫に気が付いて下さっていたと思いますが、編曲という面からも再度この楽曲を味わっていただけたら嬉しく思います音譜