前回のブログで書いたようなことがどのようにして起こるのでしょう。

自分が無意識のうちに(例えば寝ている間など)に作曲していたものを後で突然思い出すのか、あるいは、私を陰で支えている不可視の存在が実はいらして、力を貸してくださっているのか、想像は色々と出来ますが、判らないというのが本当のところです。

仮に私が無意識のうちに作っていても、時間がぴったりと合うようなことは、とても難しいことだと思うのですが、みなさんはどのように思いますか?

このような不思議な偶然の一致の出来事は、他にもあります。それは、「利家とまつ」という作品に関わった時のことです。

第1話の音楽打ち合わせのために、NHKで関係スタッフと共にビデオを見ながらどこに音楽を入れるか、どのような音楽にするかと細かく話し合っていました。基本的にはシーンに合わせて毎回、作曲するわけですが、サウンドトラックCDの曲も使える場所には使用していこうという事になっていました。

打ち合わせの後半に差し掛かった時に、まつが子役から松嶋菜々子さんに変わり、舟に乗って利家に会いに行くシーンの音楽開始ポイントとエンドポイントを音響デザインの方が私に伝えました。(NHKは、音響デザインの方が効果音との関係を踏まえながら、音楽を入れる場所を決めていく伝統があります。作曲家は、それを尊重しながら自分のアイディアを出していきます。「音楽は必要ないのでは?」とか、「スタートポイントを早めた方が良いのでは?}とか、)

そのシーンは、ほとんどセリフもなく音楽をじっくりと聞かせられる長いシーンだったので、金沢で録音したばかりのサントラ用の「まつのテーマ」をとりあえず映像に当ててみることにしました。スタートポイントからその音楽を流し始めると映像とのマッチングもとても良い感じです。シーンの高揚感と音楽の高まり方も一致しながら進行していきます。

「良い感じですね。」とか「ぴったりですね。」などと囁き合いながら見ていくと、なんとエンドポイントとされていた箇所で音楽がぴたりと終わったのです。まるで、このシーンのために合わせて書いたようでした。もちろん、私が映像を見たのは、その打ち合わせの日が初めてです。サントラに入っている曲は、どのシーンに音楽をつけるかを事前に知らされることなく、映像を見ることもなく、自分のイメージの中だけで作り上げた曲ばかりです。

この、驚くほどの偶然の一致にプロデューサーの浅野さんは、感激のあまり涙を流されるほどでした。「このような不思議なこともあるんですね。」とみなで感動したことを懐かしく思い出します。

「大地の子」や「利家とまつ」のように、このようなことが起きる時は、視聴率もとても良い結果になることが多いです。やはり自然の力に支持されている結果なのでしょうか?こういったことに関連して、私などが及びもしないブラームスなどの大作曲家達に創作にまつわる神秘についてインタビューした貴重な本が出版されているのでご紹介しておきます。以前、さだまさしさんにも紹介して喜ばれました。興味がある方は、是非お読みください。

我、汝に為すべきことを教えん―作曲家が霊感を得るとき/春秋社
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