私が留学先に選んだのは、
ボストンにあるBerklee College of Musicという大学です。

当時の日本では、バークレー音楽院と呼ばれていましたが、
バークリーと発音するのが正しいです。

どの大学にするか色々考えましたが、
私が当時尊敬していたクインシー・ジョーンズという
最高峰のアレンジャーの出身校ということで、
以前から憧れてていたこともあり、
まずは、ジャズ理論の真髄を学ぼうと思いこの学校を選びました。

アメリカに行くことを決意してから、数ヶ月間、
仕事の合間を見つけては、英会話学校に通ったりしたものの、
一向に上達せず、
現地に行けば、何とかなるだろうという甘い考えでいました。

外国人がアメリカの大学に入学するためには、
語学力の認定試験にパスしなければなりませんが、
バークリーの場合は、
大学の近くにある英語学校を卒業することによって、
その資格を得ることが出来ました。

3ヶ月ほど通って資格は取れたものの
なかなか会話を聞き取れるようにはなりません。
それでも、とにかく入学試験を受けることにしました。

日本でプロとして仕事をしてきた私にとって試験は、
とても簡単なものでした。

最高得点(満点)で入学し、ソルフェージュなどのクラスは、
試験の結果から免除になり単位もその時点でもらうことが出来ました。
成績優秀者のみに特別に設けられたクラスに入り、
一応バークリーの基礎となるハーモニーの考え方
(1年分の内容を3ヶ月で)を学び始めました。

好スタートを切ったかのように見える私でしたが、
言葉の壁が厚くのしかかってきました。
最初のうちは、自分がすでに知っていることを
復習するような感じなので、
なんとかついては行けたものの、
細かい説明がさっぱり聞き取れなかったのです。

そこで、教師にお願いして録音の許可を得、
それを自宅に持ち帰って、
一語一語繰り返して聞きながらノートに書き写すという方法で
なんとか理解する事が出来るようになりました。

とても時間のかかる作業でしたが、
それを3ヶ月間続けた頃、ようやく授業の内容だけは、
なんとかその場でも理解できるようになったのです。