6年近くも住み続けたアジトをようやく撤収することになった。その後の移転先は毎月2回も露天の野菜市を開いている酔狂なドミトリーだ。かく言う私自身、行きがかり上とは言えそのドミトリーの改築工事を手伝って以来からの関係だったせいか、結局そこの住人となることにしたのだった。ちなみに、歩いてしばらくの所には、知る人ぞ知る画家とジャーナリスト一家のギャラリー兼自宅もある。
それにしても、6年も垢の溜まった旧アジトはもう亜熱帯ジャングル地帯と化していた。いざ引越しの準備となっても、その時点で広大な亜熱帯ジャングルを目の前にした私は“うつ病”状態で悶死した。
ある朝、目が覚めて枕もとの時計を見ると“悶死推定時刻”から2時間くらいしか経っていないことで安心しつつも、腕時計の日付を見て驚愕。なんと丸一日が経過していた。しかも、てっきり朝だと思っていたら夕方だったのだ。そこでまた悶死した…。
そんなとき、激しい頭痛を感じながらも窓の外から聞こえる“豆腐屋の起床ラッパ”で飛び起きた私が、ようやく引越し準備に取り掛かり、ジャングルの中をホフク前進しながら荷造りをはじめた頃だった。「お~いラーメンはまだかぁ~?」という声にふり返った私が見たものは、お尻の横に立っている身長20センチくらいの“小さいおじさん”だった。私は「ラーメンじゃないよ。うどんだよ」と答えるや否や流し台でうどんを作っていた。部屋の真ん中に胡坐をかいてうどんを食べる頃には、もう“小さいおじさん”の姿はなかった。
そしてまた、荷造りに取り掛かっている。退出期限は14日。はたして引越し出来るのか問題に悩まされつつ。悶々としながら準備をしている。
ヤバイぞ引越し!