隣に並んで横になっている絵梨と陸。

絵梨「あのときの……寂しそうなの、演技?」

陸 「まぁ……そうっすね」

絵梨「……やられた」

絵梨にキスする陸。

陸 「ああでもしないと、でしょ?」

絵梨を見つめ、微笑む陸。

 

 

【翌朝】

 

ベッドからなかなか起き上がらない絵梨。

陸はスーツを着て出社の支度が整っている。

陸 「(楽しそうに)遅刻か欠席か連絡入れたほうがいいんじゃないですか?」

絵梨「(悔しそうに)わかってる」

陸 「何回も起こしたんすけどね」

絵梨「……」

絵(どんな顔して起きたらいいのかわからなくて)

陸 「俺、伝えときましょうか?」

 

ベッドでもそもそとスマホをいじる絵梨。

絵梨「(ムッとして)今、遅刻の連絡入れたから」

陸 「何時ごろ来る予定ですか?」

絵梨「午前中のうちには」

陸 「今日、十一時に来客予定ありますよね」

絵梨「そうだった! 急がなきゃ」

陸 「まあ俺は自己管理が出来てるから普通に出社しますけど」

 

絵梨「(悔しい)……!」

 

陸 「嘘です!後輩だから先行ってます」

 

余裕で笑っている陸。

絵梨は不貞腐れてベッドに潜り込む。

ベッドのそばまで歩いてくる陸。

 

わずかに出ている絵梨の髪をくしゃくしゃと撫でる。

 

 

陸 「……お邪魔しました」

玄関に向かおうとする陸を呼び止める絵梨。

絵梨「あの、昨日のこと……!」

陸 「(微笑み)言わないですよ、誰にも」

絵梨「そうじゃなくて……あー、何かうまく言えないけど、陸って何考えてるかわかんないから」

陸 「だから、先輩が好きだって言ってるじゃないですか。もう二年も前から」

絵梨「(言い返せず)……」

陸 「俺からすれば、先輩の方が何考えてるかわかんないすけどね」

絵梨「私は……陸みたいに自己管理もできないし、完璧じゃない」

 

じっと絵梨を見つめる陸。

 

絵梨「何……?」

陸 「これ、本当は相当頑張ってますから」

絵梨「(ドキッとして)……」

陸 「あと」

絵梨「?」

陸 「会社では『陸』って言わないように気を付けてくださいね」

絵梨「(動揺し)言わないし」

 

意地悪な笑顔の陸。

 

 

陸 「じゃあ、行ってきます」

絵梨「……行ってらっしゃい」

陸 「また、会社で」

絵梨「(わざとそっけなく)うん……」

 

笑ってドアを閉める陸。

靴音が去ったのを確かめ、ベッドに顔をうずめる絵梨。

絵梨「(枕に顔をつけて)ああああああ!!」

 

混乱と陸への気持ちで思わず小さく叫んでしまう絵梨。

ゆっくりと顔を上げる絵梨は微笑んでいる。

 

 

 

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