ヘイフラワーとキルトシュー

ヘイフラワーとキルトシューは7歳と5歳の仲良し姉妹。何をするにもどこへ行くにも一緒。甘えん坊でわがままな妹は、しっかり者でやさしいお姉ちゃんがいないと何にもできない。じゃがいもの研究のことしか頭にないパパと家事がまったくダメなママも、お姉ちゃんに頼りっぱなしだ。

じゃがいもの皮を剥いたりお鍋の汚れをこそげ落とすのも、キルトシューに本を読んであげるのもお姉ちゃんの役目。なんとも健気に家事を切り盛りするヘイフラワーだが、ひとつ気がかりなのはもうじき小学校へ入学すること。
自分が家にいなくなってしまったら、妹の面倒は誰が見るのだろう…!じゃがいもの皮むきは?洗濯物は??
…このままでは、ヘイフラワーは無事小学校に入学できるの?


ちょっぴり風変わりな家族と隣人の、ほのぼのとした心あたたまるストーリー。
描かれるのは一見なんてことのない出来事の数々なのに、フィンランドの澄んだ空気がつくり出す輝くような日差しにも負けない、彼らのピュアな優しさと姉妹の愛らしさが眩しくて、思わず目を細めたくなる愛すべき映画だ。

私用で映画館の近くまで行ったのを幸いと、お天気のよい昼下がりに駆け込んで見た1本。
ゆるゆるとした時間の流れに身をまかせながら、なにか懐かしい感触を思い出していた。何だろうとのんびり考えていたら、それは輸入菓子のゼリービーンズなのだった。つるんとした優しい光沢と、心おどるようなポップな色づかい。…大人になってから買うそれは、決まって特別な感じがしたものだ。すぐには食べないで、透明なガラス瓶のなかでさらさらと揺らしながら、そのはじけるような色あいを楽しんでみる。ひとつひとつを手にとって眺めれば、どれもきらきらと宝物のようで可愛らしかったのを覚えている。
この映画もそんなイメージで楽しんだ。話題にもなっているポップでカラフルなインテリアや雑貨の数々、まるで妖精のように愛らしい少女たちのクルクルと変わる表情が画面いっぱいに弾けていて、そのひとつひとつの愛おしい感触を確かめずにはいられないような。周囲の大人たちを巻き込んでの、少女のささやかな抵抗と成長もまた今だけの宝物のようで、ひときわ画面をイキイキとさせていた。

…と言いつつも、私など妹キルトシューのあまりの小さな暴君ぶりに、もしも私の子どもや姪だったら、がつんとお説教してあげなくっちゃ…なんてことまで思わず考えたり、すっかり感情移入している始末。自分のなかのオンナノコの部分を気持ちよく刺激されつつも、いつしか夢中になって見ている自分に気づいた。

いつかオンナノコだった多くの女性たちの心をくすぐること請け合いの映画。

(上映館*シネリーブル池袋

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「ヘイフラワーとキルトシュー」

【作品データ】
2002年/フィンランド/72分
staff*
監督・脚本・編集:カイサ・ラスティモ
制作・脚本:マルコ・ラウハラ
原作:シニッカ・ノポラ/ティーナ・ノポラ
撮影:ツオモ・ウ゛ィルタネン
セットデザイン:カティ・イルマランタ
衣裳:ティナ・カウカネン
音楽:ヘクター
cast*
カトリーナ・タウ゛ィ/ティルダ・キアンレト/アンティ・ウ゛ィルマウ゛ィルタ/ミンナ・スローネン 他

【原作】
シニッカ・ノポラ, ティーナ・ノポラ, 末延 弘子, 佐古 百美
麦わら帽子のヘイナとフェルト靴のトッス―なぞのいたずら犯人

【ビジュアルブック】

 
ヘイフラワーとキルトシュー

【作品公式サイト】
http://www.hayflower.com/

【作品公式ブログ】
http://blog.hayflower.com/

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