わが家の冷蔵庫に野菜のない日はあっても、卵のない日はない。
嫌いではないものの積極的に肉を食べたいほうではないので、ボリュームのある卵はうちの食卓には欠かせないアイテムのひとつ。もちろん大好きである。

たぶん、あの黄身の甘さが好きなのだと思う。
口いっぱいに頬張ると、おなかの底からほんわりとしあわせな気分がこみ上げる。

特に好きなのは…じっくりと煮込んだおでんのつゆに、お箸でぱかんと割った卵を浸してご飯のうえにのっけて食べること。子どもの頃、おでんの卵をつゆにつけるかどうかで兄とずいぶん議論したことも懐かしいけれど、私は断然つけて食べる派。そのままだとモゴモゴして食べにくい(と思っている)ゆで卵も、あまからいつゆをたっぷり染み込ませるとつるんとおいしくのどを通る。黄身の甘さも際立って余計に美味しいと思うのだ。
冬に食べる温かいそうめんにも半熟の卵は欠かせない。箸でそっと割り、麺に少しずつ絡めて食べるのが定番だ。めかぶや納豆にのっけて簡単な小鉢にしたり、納豆オムレツにしてもご飯が進む。そういえば、大好きなフレンチトーストも、たっぷりの牛乳に卵を2個にしてつくると、ちょっとプリンのような味になっておいしかった。もっともこれは自分を甘やかしたい日の特別メニュー。カロリーを考えたら、とても怖くなってしまうもの。

少し考えただけでも、様々なメニューが思い浮かび、なんだかたのしくなってしまう。
卵はうちでも気軽に、気取らないで食べられるのがいいけれど、私がひとつだけ好きだけれど決まって外で食べるのがだし巻き卵だ。あの四角くきちんとした形、うっすらと控えめな焦げ目に、口に頬張るとじゅっと染み出してくる優しい甘さのだしの味。だし巻き卵はたたずまいもどこか上品で、ちょっと特別な感じがしてしまう。自宅でも何度かチャレンジしてみたものの、あのきれいな形とだしをたっぷりと含んでふんわりした感じはなかなか出せなかった。
外で食べる時は、たいていお酒も飲める和食屋か居酒屋だから、私にとってはご飯のお供というより、お酒の肴。熱々のひと切れを噛み砕きながら、キリッと冷えた辛めの日本酒か、ほろ苦いウーロンハイで流し込むのが好きだ。何人かで出かけても、たいてい食べるのは私ひとりで、それでもついついわがままで頼んでしまう。

いつか、うちでもおいしいだし巻き卵をつくれるようになってみたい。
シャカシャカッと卵を溶いて、フライパンでジュジュッと焼きあげる。…だし巻き卵をそんなふうにつくれる女性って格好いいと思うのだ。