
高村薫の代表作で、93年の直木賞受賞作です。
この作家の小説は、「新・リア王」「土の記」等、どこまでも重く濃厚で、決して読みやすい部類に入りません。
途中で読むのを諦めたものもあります。
しかし、この作品は、それにも関わらず飽きることなく読むことが出来きるものでした。
下巻に後半などは、一気読みしてしまったほどでした。
幼いときに両親に一家心中の道連れにされたが、生き残った発達障害児が連続殺人を犯し、警視庁に追われる。
犯人が持つ多重人格の崩壊した人格が、警察や社会のエリート達を翻弄させるというものです。
身内を失い、たった一人で生きていく発達障害者を思うとき、胸が痛みます。
よくもまぁ、こんな辛く切ないラストシーンを書いたものだと、作家の顔を思い浮かべてします。