
映画『アメリカン・スナイパー』を観てきた。
「伝説の狙撃手」と呼ばれた元米海軍特殊部隊員で、クリス・カイル氏の自伝『ネイビー・シールズ 最強の狙撃手』を映画化したものだ。
カイル氏はイラク戦争に4回にわたって派遣され、アルカーイダ系武装勢力の戦闘員ら計160人を狙撃で射殺し、戦地に展開する米軍兵士を援護した。
2009年、彼は帰還(退役)後、心的外傷後ストレス障害(PTSD)になった。
その経験を生かし、帰還兵の神経症カウンセリング、及び支援を施す活動を展開していた。
そんな中、2013年2月、相談に訪れた帰還兵に至近距離から射殺された。(犯人は、仮釈放なしの終身刑が言い渡されている)
本作は大ヒット作となり、アメリカでは作品の内容を巡って保守派とリベラル派の間では大きな論争が巻き起こっている。
彼は映画の中で、
「私はアメリカを守ったのではない。アメリカ兵の命を守ったのだ」
と言う。
「引き金を引いて目の前の敵を殺すことが母国の平和につながる」と信じて敵を狙い続けてきた。
カイル氏は、数多くの仲間の命を救う一方で、
「殺される前に殺す」という戦争原理から子供や女性にも容赦なく銃口を向けていた。
アメリカは、彼の死後も彼をヒーローとして祭り上げた。
しかし、彼なヒーローなんかじゃない。
アメリカが行っている戦争の被害者なのだ。
エンディングに於いてカイル氏の実際の葬儀の様子が映し出されている。
人々は星条旗を掲げ、彼を送っている。
アメリカが持つ愛国心は、今の平和憲法を持つ日本人には受け入れられない。
クリント・イーストウッド監督は、彼をヒーローとして描いている一方、強い反戦メッセージを発している。
共和党支持者として知られている彼は、イラク戦争には一貫して反対の立場を取っているのである。