「蝉(セミ)は、春秋を知らず」
 
 
蝉が盛んに鳴いています。
 
夏に生まれて夏に死んでいく蝉は、春があることも知らないし、秋が来ることも知りません。
 
夏に生まれて夏に死ぬのですから、今が夏だということも分かりません。
 
哀れなものです。
 
 
案外人間も同じかもしれません。
 
何処から生まれてきて、死んで何処へ行くのか。
 
今の人生だけをあくせくと生きているようです。
 
 
 
蝉の寿命は、1週間だそうです。
 
しかし、地中にいる時期は、およそ2年、長いもので7年と言われています。
 
つまり、セミの一生の殆どは幼虫であると言う事です。
 
そこから地上に出て羽化し、成虫として生きますが、卵からふ化した年数から考えたら長寿ですね。
 
 
短い長いといってしまうのは、人間の視点に偏って観ているからなのですね。
 
 
 
 
 
「せみは
 
たった一週間の命のために
 
永い年月、土の中で暮らさなければならない
 
というけれど
 
土の中の年月こそ
 
せみの本当の命のよろこびなのかもしれない
 
地上のよろこび、なんて思うのは
 
人間のかってな想像だ」
 
(木村信子)天声人語より