
探偵フィリップ・マーロウを描いた、レイモンドチャンドラーの「大いなる眠り」の新翻訳本が、56年ぶりに刊行されていた。
翻訳者は、村上春樹である。
ミーハーな自称ハルキストとしては、すぐに読んでみた。
なるほど、旧訳とはずいぶん趣が違っていた。
そこで、既に刊行されているチャンドラーの探偵マーロウシリーズの内、村上春樹訳本を4冊、それから、清水俊二訳本を2冊、一気読みをした。
翻訳物は、翻訳者によって、幾分ニュアンスが違っている。
例えば、かの有名な、
「男はタフでないと生きていけない。優しくなければ生きている資格がない。」
という決めゼリフがあるが、清水訳本では、
「しっかりしていなければ生きていけない。優しく・・・・・」
という具合だ。
拍子抜けするような翻訳もある。
「一時間後、私は金物屋の前に車をパークした」
とあるが、普通、駐車したって言うだろう。
又、翻訳された文章が、変な日本語としての文章になっていないことも多々ある。
やはり、原語本(英語本)を読まねば伝わってこないところがあるに違いない。
しかし各翻訳者は、チャンドラーのすばらしい文体を損なわない配慮が十分感じられる。
ともあれ、探偵マーロウは面白い(変な)奴だ。
マーロウファン(村上春樹)たちは、マーロウの言葉を気の利いた台詞というが、違う見方をすると、単なる減らず口に過ぎない。
トッポイ兄ちゃんだ。
【註;トッポイの意味= 人を食った ・ 調子の良い(男) ・ 軽薄な ・ (何も)考えない ・ トホホな(人間) ・ 能天気 ・ 極楽トンボ ・ とんまな ・ おバカなets. 】
彼の人物像をロサンゼルスのダークサイドを歩く、シニカルで優しい孤高の騎士というが、一般社会を歩くのに失敗をした、落ちこぼれと言うことも出来る。
いずれにせよ、そんな軽薄さが、可愛ーい❤マーロウちゃんでした。