先日飲み会での話、普段おとなしくて目立たないその女性は、自室で過ごすときは、裸でいるというのである。
開放感がたまらないということを延々と論じあげた。
それを聞いていたみんなは、口をぽかんと開けて放心状態だった。
ずっと前に読んだ、村上春樹のエッセイを思い出した。
彼がアメリカ在住時に読んだ、新聞の人生相談コーナーの話である。
ある主婦が、
「自分はいつも全裸で家事をしているのだが、ある時裏口から入り込んだ男にレイプされてしまい、大きな精神的ショックを受けた。どうすればよいか?」
と投稿相談をした。
回答者は、
「それは確かに気の毒な事件だけれど、何もわざわざ裸で家事をすることはないのではないか。何かの加減でちらりと見かける人もいるだろうし、となれば暴行される危険も大きいし、無益な挑発は避けるべきではないか。」
と回答したのである。
数日後に、その回答に対する抗議の手紙が全米の主婦から数多く寄せられた。
大半は、
「自分だって彼女と同じように全裸で家事としている。開放的で気持ちがいいからだ。そんな当然の権利をおとしめたり、奪ったりする権利は誰にもない。」
というものだった。
それを村上春樹は、
「でもねぇ、いくら気持ちがいいからといって、いくら開放的だからといって、全裸でるんるんと家事をする主婦が世の中にかくも多く存在しているものなのだろうか。
いったいどういう国なんだ、ここは。」
と書いていた。(趣旨のみ)
そんな話を幾多のところでしたら、
「バカバカしい、みんな、多かれ少なかれしてるわよ。」
「私だってずっと裸で家事をやってるわよ。」
「全裸で部屋にいたら、マンションの修理の人がベランダの上から降りてきたんでびっくりしたわ。」
「部屋でくつろいでるときなんだから、裸の方がいいわよ。」
などと口々に言うではないか。
まぁ、アメリカと日本ではs、住宅事情が違い、庭付き一戸建てと、マンションとでは違いにしても、それにしても・・・・・。
世間知らずだった、世の女性たちに、男性の知らぬ、そんな生態があったとは。
宅配便のドライバー諸君、良ぉーく心得たまへ。
ベルを押して返事があってからなかなか出てこない家は、中で急いで服を着ている女性がいることを。